俺の嫁4
前略システムちゃん。
俺のHPはゼロです。
長野さんの目の前でお尻の穴の皺の数や大事なとこの長さまで晒されたのでもう生きていけません。
俺のメンタルは砕け散って粉々です。
はぁ~。
もう生きていけない。
深海の底の石ころになりたい。
『大変でしたね。タカヤマ・アルト大暴露大会』
『俺、石になりたい……』
『わたしも皆さんの前に出れたなら、おぱんつ事件を披露できたのになー』
『なんだよ? その禍々しい名前の事件は? 俺はそんなもの知らないぞ?』
『お忘れになりましたか? エルフの族長の娘さんのサリカさんの──』
『のわー! どわー! なに大昔の黒歴史をしれっと掘り返してるんだよ! 記憶の奥底に葬っていた黒歴史を思いっきり掘り起こしちゃったじゃないか!』
『てへぺろ』
『てへぺろじゃねーよ!』
『ところで勇者様。こんな所でのんびりしてていいんですか? 今朝は王都に戻らないといけないんですよ?』
『王都ってなんだ?』
『今日は王都の食堂でマグロの刺身を売る日じゃないですか? 早く戻って仕込みをしないとお昼に間に合いませんよ』
『そうだった! 綺麗サッパリすっかり忘れてたわ!』
日が昇ってかなり経っていたので俺が慌てて出掛けようとすると、俺の横で寝てたミドリアに捕まった。
ちなみにエリザベスと石川も俺のベッドをキングサイズに改造したベッドで一緒に寝ていた。
「我が君、私と子作りもせずにどこにお出掛けするというのですか?」
「すまん、ちょっと用事が有って今から出かけてくるよ」
「それは私との子作りよりも大切な事なんですか?」
「ごめん! 約束してあるんで行かない訳にはいかないんだ。男としては約束したことは守らないといけないし、子作りよりも大切な事なんだ」
「ううう……我が君、今日は赤ちゃんがわたしのお腹に宿るまで子作りをし続けると約束したのに悲しいです」
「してないしてない。そんな約束してない」
ミドリア。
しれっと嘘言うなよ。
俺達の話を聞いて目を覚ましたエリザベス。
エリザベスはしたり顔でミドリアに言い放つ。
「おまえとの子作りなぞタカヤマにとってはゴブリンのフンほどの価値しかないのだぞ。ぐるるる」
「あなたとの子作りなんか、そのフン未満の価値しかないじゃないですか! 我が君と子作りの約束さえ取り付けられなかった爬虫類のくせして私の事を笑うのですか?」
「わらわを爬虫類とコケにするならタダじゃおかないぞ!」
「やるのですか? 爬虫類如きがわたくしに喧嘩を売るというのなら買いますわよ?」
「おい。お前ら俺の嫁になりたいんなら喧嘩すんな。喧嘩するなら婚約は解消だしこの家から出て行ってもらうからな」
それを聞いて急にしょぼくれる二人。
「け、喧嘩なんてしないぞ」
「わたくしも喧嘩なんてするつもりなんてございません」
「ならいい。それじゃちょっと出かけてくるから絶対に喧嘩しないで留守番してるんだぞ」
「は、はい」
「あと、女の子達とも仲良くするんだよ。俺の仲間と仲良くできない様な嫁は要らないし!」
「はい、もちろんです。我が君の御命令とあれば必ず守ってみせます」
「頼んだからな!」
俺は魔王様と女の子たちを小屋に残して、王都へと大急ぎで戻った。
王都ではロココさんが俺を待ちわびていた。
「やっと戻って来てくれたか。いつまでも戻ってこないから、戻ってこないんじゃないかと思って冷や冷やしたぞ」
「すいません。色々とトラブルが有りまして……」
「言い訳はもういいから、早く仕込みを始めるぞ。もうお客さんが並び始めてるんだからな!」
見ると店の前にはこの前の刺身の噂を聞いたのか開店を待ちわびた五〇人ぐらいの客が並んでいた。
皆、口々にマグロの刺身の事を噂していた。
「なんでも宝石みたいにキラキラ光って透き通る真っ赤な食べ物なんだそうだぞ」「口の中に入れるととろけるらしい」「肉のようで魚のようで何とも不思議な味のする食べ物らしいぞ」「爽やかでコクのあるスパイスが絶品らしい」
噂に尾ひれが付いてとんでもなくハードルが上がってる気がするんですが?
大丈夫なのか?
俺はキッチンに立つと大慌てでマグロを捌き始める。
今日はアイテムボックスに入っているマグロを全て刺身に捌く。
俺は包丁を使ってマグロを刺身に加工する。
シェリーさんは刺身を受け取ると綺麗にお皿に並べる。
この前のお試しと違って普通に一人前の並盛りだ。
ロココさんはそのお皿を受け取ると薬味を器用に盛り付けて、俺とロココさんのアイテムボックスへとしまう。
三人で流れ作業を黙々と続け、開店直前に仕込みが終わった。
「どうにか開店までに間に合ったな」
「ふー」
「それじゃ、客を入れるからな。シェリーとタカヤマは注文と配膳を頼む。キッチンは私に任せな!」
「わかりましたー」
シェリーさんが客を呼び込むと席が一気に埋まった。
今日のメニューはマグロとパンのセット。
相変わらず酷い食い合わせだ。
でも、お客さんは口々に美味いと大満足だ。
「うんまい!」「噂以上に美味いな!」「世の中にはこんな食い物が有るんだ!」「こんなうまい物が食えるなんて……長生きしてて本当によかった!」
それから順調に客を捌いてマグロがそろそろ尽きかけになる頃。
行列を見ると吉田さんと田中くんが並んでた。
吉田さんが気さくに声を掛けて来た。
「お久しぶり! ここでアルトが働いてたんだ」
「お手伝いだけどね。噂を聞いてわざわざ食べに来てくれたんだ」
「噂?」
「今、この店でマグロの刺身を出してて、それがすごく評判なんだよ」
「うそ! ここでマグロの刺身を食べれるの? 田中君、マグロの刺身食べれるんだって!」
「行列出来てたから評判の店と思って並んだんだけど、良かったね」
「日本の料理食べるのは久しぶりだなー」
「だねー。洋食ばっかりで少し飽きてたんだ」
「まあ、付け合わせはパンなんだけどね」
二人は手をつないで相変わらず仲がいい感じだ。
ラブラブオーラをこれでもかと言うぐらい放射してて見てるこっちが恥ずかしい。
休みの日にデートでもしてるのかな?
聞いてみると今日は休みの日じゃなかったらしい。
「今日は何か事件が有ったらしくて騎士さん達が急用で突然訓練が中止になってね。監視の騎士さんが居なくなったから初めて神殿の外に出れたんだ」
「期待されてる勇者様は大変だなー」
「そうだね。あはは」
マグロを食べた二人は美味しいと顔をほころばせていた。
俺が厨房で皿洗いをしていると、やたら態度のデカい客がやって来て行列を無視して席に座りシェリーさんを困らせていた。
シェリーさんはおろおろしながら困っている。
「こんなにお店が混むのは初めてなのに、ルールを無視して並ばないで席に着くお客さんまで来て……どうすればいいんでしょうか?」
「悪いタカヤマ。私は今手を離せないのでその客に注意してきてくれ」
「はい!」
「ごねる様だったら力ずくで店から追い出していいぞ」
ロココさんに言われて俺が客席に様子を見に行くと、そこには見知った顔が座っていた。
魔王様御一行だ。
魔王様御一行が店の隅の席を占拠していた。
「お、お前ら! なんでこんなとこに居るんだ? 留守番頼んでおいたろ?」
「そりゃ、タカヤマが何してるのか様子を見に来たんだぞ」
「わたくしは我が君の事は疑っていませんでしたが、この爬虫類が浮気だ浮気だと騒ぐので仕方なしに付いてきたのです」
その横には長野さんと石川と香川ちゃんとリリィさんまでちょこんと席に座ってた。
長野さんが申し訳なさそうに言い訳をする。
「私は高山君の迷惑になると思って来たくなかったんですけど、自分だけ高山さんの後を追うと怒られるからとドラゴンさんに無理やり背に載せられて連れられて来たんです」
「それって、ドラゴンの姿でって事だよな?」
「……はい」
「ちょっ! ドラゴンの姿で王都に来ちゃダメだろ! 今頃、騎士団の騎士さん達はドラゴンが現れたと大騒ぎだぞ!って……あっ!」
騎士さんが急用になって今日の訓練が中止になったと吉田さん言ってたけど、その原因が解ったわ。




