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クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱の商人に偽装中です。  作者: かわち乃梵天丸
第一部 クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱ランクの商人に偽装しました。
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俺の嫁5

 結構な数の刺身を用意したはずだが、いつも通り午後二時には売り切れてしまい閉店となった。


 既に客は帰り、客席に残ったのはここ最近の経過を俺たちに話そうと待っていた吉田さんと田中君。


 そして俺の浮気調査で客席の一角を牛耳り、どす黒いオーラを出しながら俺を監視していた魔王様御一行だった。


 奇しくも魔王と勇者が小さな食堂で席を同じくするという異様な光景がそこにあった。


 魔王様御一行様は賄い食であるオークの焼肉サンドの山を貪るように胃に流し込みながら見知らぬ顔の持ち主の説明を求めて来た。


「もぐもぐ、そこの女はこの店の店主のシェリーで、そこの、もぐもぐ、チンチクリンのドワーフは商売の親方のロココなんだな? そして、もぐもぐ、そっちのは、もぐもぐ、勇者でクラスメイトで友達の、もぐもく、ヨシダとタナカと言うんだな?」


 口からサンドイッチの欠片をまき散らしながら喋るエリザベス。


 机の上に肉片やパンの欠片が転がっててやたら汚らしい。


 あんまりにも汚い食べ方で、みんなドン引きしてる。


「おい、エリザベス! そこらじゅうにサンドイッチの肉の欠片が飛び散ってるじゃないか! 食うか喋るかどっちかにしろよ!」


「じゃあ食うぞ。うまいな、おかわり!」


「わたくしも、おかわりです!」


「はひっ!」


 どす黒い闘気を放ちながら賄い食を頬張る人外組におかわりを要求されると、シェリーさんが慌てて賄いのサンドイッチを追加で作り始める。


 すると田中君から質問が出た。


「この方達はどのような人なんですか?」


「どのような人か……」


 さすがに二人が魔王という事を伝えるのはまずいかな?


 マズいよな?


 田中君も吉田さんも魔王を倒すために呼ばれた勇者だしな。


 目の前に居るのが魔王と知ったらいきなり飛びかかるかもしれない。


 さてと、どうしたらいいものか……。


 勇者である二人が真実を知った後、魔王と勇者がどう動くか予想がつかないし。


 きっと田中君と吉田さんが切り掛かったら、返り討ちに遭って一撃で殺されてしまう。


 それぐらいの実力の差が今の魔王と勇者の間にはある。


 俺が本当の事を言っていいのかと問うようにリリィさんに目配せする。


 すると彼女は困った顔をしながら答えた。


「嘘を言っても話がややこしくなるだけだから、僕は本当の事を言った方がいいと思うよ」


 そうだよな。


 俺は思い切って本当の事を話すことにした。


 今のエリザベスとミドリアなら勇者側から攻撃が無い限り、いきなり襲い掛かる事もあるまい。


「これから話すことは信じられない事だとは思うが気を落ち着けて聞いて欲しい。そして荒唐無稽な事に思えるがそれはすべて真実だ。そして何があっても騒ぎは起こさない事。いいね?」


「うん。で、この二人はなんなの? まさか、魔王とかじゃないわよね?」


「それが、その、二人とも魔王なんだ」


「えっ!?」


 いきなり『ズゴッ!』と音を立てて椅子がズレた音がした。


 そして仰け反る二人。


 まるで昭和のコメディー番組でも見てる感じに、それはそれは大げさな感じで。


「嘘だろ?」


「本当だ。今、吉田さんと田中君が倒す為に訓練してる敵の魔王さんなんだ」


「マジ??」


「そのマジ。あっ、手を出したら確実に死ぬから絶対手を出すなよ。こう見えてもすげー強いから」


「はうっ! 我が君に強いと言われると、歓喜でうなじの辺りがゾクゾクしますわー」


「ぐるるる。わらわは強いぞ! 人間!」


「その魔王さん達がなんで王都に?」


「観光視察って奴だ。魔界から人族の都の視察に来た」


 さすがに浮気調査とは言えない俺が嘘で取り繕うと、リリィさんが白い目で俺を蔑む。


 リリィさんに汚らわしい物を見るような目で見られると、背筋の辺りがゾクゾクするわ。


 すいません、俺は自分の為ならば平気で嘘を言える薄汚い豚です。


 人間の屑です。


 どうぞ、馬乗りになって罵って下さい。


 俺がマゾっ気を出して変な妄想をしていると、吉田さんが魔王達に向かってキリッとした表情をする。


「魔王さん達にお願いがあります! 人間の国を襲うのを止めて貰えませんか? 私たち人間は魔王軍の侵攻で多大な被害を被っています。タダでとは言いません。金銭的な補償を致しますから、どうかこれ以上人間を攻撃するのを止めて貰えないでしょうか?」


「それは無理だな!」


「やはり戦いはどちらかが勝つか負けるかの決着つくまで止めて貰えないんですか? 戦いは避けられないと言うのですか?」


「我々の国に入って来て悪さをした人間は生かしておけぬ! ぶっ殺す!」


「ちょっ! 何をイキナリ言いだすんだよ、エリザベス! 話がややこしくなるから、お前はちょっと黙っとけ」


「なんでわらわが人間如き下等生物に媚ないとならんのだ?」


「俺がその下等生物の人間なんだが、家から出てく?」


「わ、解った! 黙るから! 黙るから! 黙ればいいんだろ?」


「そうだ。おとなしく話を聞いててくれ」


「わかった」


「あ、吉田さん。今エリザベスが人間を殺すと言ったんだけど、殺すのは魔石目的で魔族に手を出してきた悪い奴だけで、けっして魔族から人間に手を出すことは無いそうだ」


「そうだぞ。人間なんて殺しても食べるとこなくて美味くないからな」


「こいつは魔王だが、無意味に人間を襲ったりはしない。それだけは安心してほしい」


「でも王女さんは、魔物にこの国の人が襲われていると言ってたんだけど?」


「それはな……俺は王女の嘘だと思っている」


「嘘? 王女さんが嘘なんて言うわけないよ!」


「いや、あの王女の発言は嘘で塗り固められてる」


「そんな事ないよ!」


「いや、王女のいう事は嘘だらけなんだ。死んだら元の世界に戻るって言ってたけど、死に戻りなんてものは存在しなくて、死んだら死んだままで生き返る訳がないんだ。そんな都合のいい事が有る訳ないし、前にやらされた血の盟約って言うのが有っただろ?」


「うん」


「あれは召喚者からの逃亡を防ぐ為の死の呪いなんだ」


「うそ!」


「そんな呪いなんて……掛かってるわけないよ」


 吉田さんを見つめるミドリア。


 しばらく吉田さんを見続けると目を細めた。


「あらまあ、結構色々な呪いを掛けられてるみたいね。死の呪いに、拘束の呪い、そして傀儡(かいらい)の呪いも掛けてあるわ」


「嘘でしょ? 呪いなんて嘘でしょ? ねえ、高山君! 嘘だと言ってよ!」


「事実だ」


 俺が鑑定してみたところミドリアの指摘した呪いは間違いなく掛かっていた。


「でも脆い呪いね。こんな呪い、わたくしに掛かれば簡単に解除できますわ」


 ミドリアがパチンと親指を鳴らすと、笑顔になる。


「はい、呪いは全部解除したわよ。色々と呪われてたから解呪するのが結構大変だったんだからね。解呪料金貨一〇〇〇枚でいいわ」


「おい、ミドリア……」


 頼まれずに解呪してしておいて、金貨一〇〇〇枚はぼったくり過ぎだろ。


「なんですか? 我が君」


「押し売りまがいに解呪したのに金取るの? 家出てく?」


「じょ、冗談です、冗談ですわ。ほ、他の子の呪いも解呪するから、パチン! ほら、みなさんも解除できましたわ。おまけに呪いの防御呪文も掛けておきましたから。今回と同じレベルの呪いなら確実に防ぐことが出来ますわ」


 ミドリアの言う通り、彼女達から三種の呪いが解呪されていた。


 呪いは心と体の奥深くまで浸透していると解呪作業は結構面倒なんだが、これだけの人数の解呪を一瞬でやってのけるとは相当な実力者である。


 さすが呪いや呪術に精通したバンパイアとサキュバスの血を受け継ぐ者だけは有るな。


 それにしても王女。


 血の盟約だけでなくその後も呪いを掛けてたとはな。


 かなり注意した方がいいかもしれない。


「勇者に呪いを掛ける様な王女だ。気を付けた方がいい」


「うん……。でも王女さんの事……私……信じてたのにな」


 その時見せた吉田さんの表情はかなり沈んだものだった。

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