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「わりと馴染む未来人…」 「「「えぇぇぇぇぇ…」」」

「わりと馴染む未来人…」

「「「えぇぇぇぇぇ…」」」


「いいか…未来人の生活を想像してみるんだ…」

ミスタXの突飛な一言が、静まり返った地下室に響き渡った。


ミスタAはポカンとした表情で、手元にあるスマホの画面から顔を上げた。

「未来人の生活……? そりゃあ、あれですか。自動運転の車が空を飛び、食事はすべてサプリメントカプセルになって、家事はロボットが全部やってくれるような、超高度技術に囲まれたSFチックな暮らしのことですか?」


「それじゃあただのテンプレな未来予想図だろ!」

ミスタBが太い腕を組み、鼻で笑った。

「俺たち肉体労働者からすりゃ、そんな世界じゃ体がなまっちまってしょうがねえ。汗水流して働く喜びがねえ未来なんて、味気ないぜ」


ミスタCは眼鏡の奥の目を細め、ブツブツと呟いた。

「技術の極限……。労働からの完全な解放……。だが、それは現行の資本主義体制の延長線上にある『いつか来るかもしれない』仮定の話だ。現在のエネルギー供給効率と自動化のコストバランスを考えれば、そんな未来はまだ何十年も先――」


「違う!!」

ミスタXが机を叩いた。

「その生活を既に現実にしている人たちが存在する!!」

「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」


ミスタAが椅子から転げ落ちそうになりながら叫んだ。

「す、既に現実にしている!? 今のこの地球上に、未来の生活を先取りして送っている人間がいるっていうんですか!?」


「まさか、どこかの秘密結社や、地下深くに作られた極秘のユートピアに住む特権階級の富豪たちってわけじゃねえだろうな……!?」

ミスタBが拳を握りしめる。


「あり得ない……現行の経済システムの中で、そんなコミュニティが社会に知られずに存続できるはずが……。彼らの資金源は? 労働の代替手段は一体何なんだ!?」

ミスタCの額から冷や汗が流れる。


ミスタXは不敵に笑い、彼らを指差した。

「ニートじゃない!!FIREしている人たちだ!!」


【技術的解説注釈:FIRE(Financial Independence, Retire Early)】

経済的独立と早期リタイアを達成するライフスタイル。主に「4%ルール(年間支出の25倍の資産を築き、それを年利4%で運用すれば資産を減らさずに暮らせるという理論)」に基づき、労働所得ではなく資産運用益(資本収益)によって生活費を賄う。これは、将来的にAIやロボットの普及によって人類が「労働から解放される未来」における、富の分配と生活様式のプロトタイプ(先行実験)とみなすことができる。


「F……FIRE(経済的自立・早期リタイア)だと……!?」

ミスタCがガタガタと震え出した。

「そ、投資や資産運用で若くして仕事を辞め、自分の好きなことだけをして生きている人たち……! 確かに彼らは、システム上は『労働義務から解放された未来人』と同じ条件で生きている……!」


「な、なんだ、金持ちのリタイア生活かよ。優雅に海外旅行でもして、毎日昼からビールでも飲んで暮らしてんだろ?」

ミスタBが拍子抜けしたように息を吐く。


「いや、違う。彼らの実態はそんな退屈なものじゃないはずだ」

ミスタAが顔を青くした。

「労働をしないということは、24時間すべてが『自由時間』になるんだ。人間、やることがなくなったら精神が崩壊しちまう。彼らは一体、その無限の時間を何に使って過ごしているんだ……!?」


ミスタXは待ってましたと言わんばかりに身を乗り出した。

「FIREしている人たちは子育てをしないのか!!」

「えっ……? いや、するでしょう。子供の送り迎えをしたり、一緒に遊んだり、時間はたっぷりあるわけだし……」

ミスタAが困惑する。


「FIREしている人たちはゲームをしないのか!!」

「そりゃ、ゲーマーなら一日中ゲーム三昧だろうな。羨ましい限りだぜ!」

ミスタBが笑う。


「……待て。何かおかしい」

ミスタCが白目を剥き始め、口元から細いよだれが垂れた。

「労働から解放された人間が、子育てをし、ゲームをし、趣味に没頭する……。それは単なる『余暇の消費』ではない。義務という重しを失った世界で、彼らが全力を注ぐ対象……それは、より根源的な『何か』へと変質しているはずだ……!」


「そうだ!!」

ミスタXの目が爛々と輝く。

「子育て、ゲーム、DIY、各種スポーツ、芸術、娯楽演芸、全てが闘争なんだ!!」

「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」


「闘争……!? すべてが戦いだって言うのかよ!?」

ミスタBが机に身を乗り出す。


「娯楽や子育てが、闘争……? なぜだ、なぜそんな極端な話になるんだ!?」

ミスタAが頭を抱えて叫ぶ。


「ぐふっ……!!」

ミスタCが鼻血を噴き出しながらノートに数式を書き殴る。


「わ、分かったぞ……! 労働というシステムが消滅した社会において、人間のアイデンティティや自己実現は、他者との絶対的な『差異』や『優位性』を示すことでしか保てない! ゲームのランクマッチ、DIYのクオリティ、子育てにおける教育成果、スポーツの勝敗……! 命を懸けた、全人格的な闘争へとエスカレートするんだ!!」


【技術的解説注釈:ゲーム理論と自己実現の闘争】

生存のための労働(絶対的必要性)がAIによって100%代替された社会(ポスト・スカーシティ)において、人間の活動はマズローの欲求5段階説における最上位の「自己実現欲求」および「承認欲求」に特化する。この環境下では、あらゆるエンターテインメントや創作活動、育児、コミュニティ運営は、ゼロサム・ゲームとしての性質を帯びる。資本や権力ではなく、「個人の能力や成果そのもの」を競い合う純粋な精神的・技術的闘争へと純化していくのである。


「そして反動主義者との実戦闘!!」

ミスタXの言葉に、部屋の空気が一瞬で凍りついた。


「じ、実戦闘……!? 反動主義者って、一体誰のことだよ!?」

ミスタBの顔から余裕が消える。


「未来の……FIRE社会に仇なす勢力がいるっていうのか……!?」

ミスタAの歯がガチガチと音を立てる。


「は、反動主義者(リアクショナリー)……! 人類の労働解放を阻み、過去の『労働と搾取のシステム』へ社会を逆行させようとする、狂信的な保守派やテロリストの類か……!」

ミスタCが狂ったように笑いながら、己の髪をむしり取った。


「その戦場は!!徒手空拳!!あって白兵武器!!それらしか怖くて使えない!!」


「はあああ!? なんで銃や爆弾を使わねえんだよ!!」

ミスタBが叫ぶ。

「未来の戦争だろ!? レーザーだのドローンだの、いくらでもハイテク兵器があるはずじゃねえか!!」


「いや、違うんだ……!」

ミスタCが泡を吹きながら床をのたうち回る。

「高度に管理された未来の『石(半導体・AIベースの社会管理システム)』の前では、あらゆる電子兵器、火薬の流通、大量破壊兵器の製造は一瞬で検知され、無力化される……! システムの監視を潜り抜けて『現状を破壊』しようと思ったら……既存のテクノロジーを一切介さない、最も原始的な手段を選ぶしかないんだ……!!」


【技術的解説注釈:超監視社会における非対称白兵戦】

量子暗号通信と偏在するセンサーネットワーク、およびAIによる環境予測が完全に社会をカバーした場合、近代的な銃器や爆薬の製造・運搬・使用は、トリガーが引かれる前にシステムによって予測・制圧される。したがって、このシステムに対する物理的な反逆(テロリズム)を完遂するためには、金属探知機や生体センサーに引っかからない「生身の肉体(徒手空拳)」、または「単純な近接冷兵器(木製・セラミック製の白兵武器)」による超近接戦闘へと先祖返りせざるを得ない。


ミスタXがさらに声を大にして畳みかける。

「反動主義者たちは徒手空拳で潜入してくるんだ!!」

「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」


「そんな……暗殺者やテロリストが、生身の体一つで日常に紛れ込んでくるっていうのか!?」

ミスタAが絶望の声をあげる。


「道具を使わねえ暗殺者……! 一番厄介で、防ぎようがねえじゃねえか!」

ミスタBの額に冷や汗が流れる。


「迎え撃つ英雄もおなじく白兵戦闘で闘うんだ!!」

「迎え撃つ英雄……つまり、労働をしない『遊び人(FIREの未来人)』たちが、その肉体と技術を極限まで鍛え上げ、生身でテロリストを叩き潰すっていうのか……!?」

ミスタCが白目を剥いたまま痙攣する。


「つまり武道全盛!!英雄の時代再来なんだよ!!」

ミスタXは高らかに両腕を掲げ、この奇妙で、しかし恐るべき説得力を持つ未来の真実を総括した。

「これが石が紡ぎ出す最良の未来だ!!」


静寂が部屋を支配した。

自動化され、すべての苦役から解放された人類が辿り着く先は、怠惰な没落ではなかった。

あり余る時間の中で己の肉体と精神を限界まで研ぎ澄まし、システムの隙間から這い出る脅威と生身で戦う――それこそが、超高度AI(石)が演算の果てに導き出した、人類の生命力を維持するための「最良の循環」だったのだ。


「……なんてこった。未来のニートやFIRE民は、毎日ゲームしながら裏では世界を守るために拳法を極めてやがるのか……」

ミスタBが呆然と呟く。


「でも……でも、そんな社会に本当に移行できるんですか……? 今のAIはまだ、人間の仕事を奪うだけのお荷物だと思われてるのに……!」

ミスタAが微かな希望にすがるように問いかけた。


ミスタXは冷酷に、そして確信に満ちた目で微笑み、次回の予告を口にした。

「AIには遊び人たちが最も必要なんだ!!」

「「「なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」」」

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