「石の先にある超兵器で、人類は絶滅する!!」「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」
「石の先にある超兵器で、人類は絶滅する!!」
ミスタXが叫びながら、部室の古びた机に最先端の技術ロードマップを叩きつけた。
「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」
一般人代表のミスタAが頭を抱えて叫ぶ。
頭脳労働者のミスタCは眼鏡を押し上げ、冷ややかに笑った。
「フッ、バカバカしい。第四話で到達した『魂の器(半導体や量子結晶基盤)』のその先に絶滅兵器だと? SFの読みすぎだ、ミスタX」
「いや、これは現実の延長線上にある冷酷なシミュレーションだ」
ミスタXの目は本気だった。
「石の進む先は多機能化……そして後継ぎ接続による大型化だ。現代の半導体業界がムーアの法則の限界を突破するために必死で進めている『チップレット技術』のトレンドを見れば、この巨大連結という進化は避けられないと思わないか?」
「確かに……!」
ミスタCの顔から余裕が消えた。
「1つの高性能チップを作るのが難しいなら、小さな多機能チップを繋ぎ合わせて巨大化させればいい。だが、それがどう絶滅に繋がる?」
「そして完成する、高度1万5000メートルの塔だ!!」
【技術的注釈①:高度15000mの玄武岩巨塔】
• どうすれば実現できるか?
宇宙に最もありふれた頑丈な岩「玄武岩」に、ナノサイズの半導体(石の脳)を混ぜ込んで作った『人造多機能玄武岩ブロック』。これに「自動でドッキングして修復する機能」を持たせることで実現します。地球上だけでもこのブロックの後継ぎ接合技術が進展すれば、土台となる山体から、雲を突き抜ける塔のてっぺんに至るまで、全ての構造を隙間なく完全に一体化した「一個の巨大な玄武岩ブロック」として生やすことが可能です。輸送コストのハードルも、現地にある岩を溶かしてブロック化する「現地資源利用(ISRU)」によって完全にクリアできます。
ミスタXの言葉に、肉体労働者のミスタBが拳を握りしめた。
「高度1万5000メートル……飛行機すら見下ろす成層圏領域かよ! 冗談じゃねえ、そんな高さ、地上の大砲もミサイルも届かねえじゃねえか! しかも土台の山からてっぺんまで、丸ごと一個の岩石ブロックとして繋がってやがるなんて……どんな爆弾をぶち込んでもびくともしねえぞ!」
「その通りだ」
ミスタXは頷く。
「大気の歪みを受けない成層圏から撃ち下ろされる、この巨塔からの光速の迎撃レーザー網。この時、初めて核ミサイルが全て……無効化されるんだ!!」
「バ、バカなっ……!」ミスタCの額から冷や汗が流れる。「人類最強の矛と盾である核が、ただの鉄くずになるというのか……!」
「俺たちが毎日スマホの画面(石の光)を見て喜んでる間に、空の上では、地球ごと俺たちを焼き殺す『絶滅の光』がチャージされてたんだ……!!」
ミスタAが絶望に顔を歪めた。
「「「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」」」
「だが……!」ミスタCが突然、狂ったように叫んだ。
「だが、人とAIがともに歩んでるのならば、その圧倒的な力の意味は180度ひっくり返るはずだ!!」
「そうだ、よく気づいたな」ミスタXは不敵に微笑んだ。
「だからこそ、そんな助け合いの果てに生まれるんだ……ラグランジュ1に巨大なマイクロ波送電差熱発電巨大群体衛星!! アステロイドベルトから水星近傍公転軌道に資源を撃ち出す遠心重力型宇宙居留地!! 水星公転軌道で製造した大型多機能玄武岩ブロックを金星まで撃ち出す一大製造拠点!! そして金星に天体日傘を構築しテラフォーミング!!」
【技術的注釈②:巨大マイクロ波送電衛星と熱の罠】
• どうすれば実現できるか?
地球と太陽の重力が釣り合う安定ポイント「ラグランジュ1(L1)」に、数百万個の太陽光発電衛星をバラまき、互いに通信(クラスター制御)させて一つの巨大な発電網にします。そこで作った膨大な電気を「マイクロ波」という強力な電波に変えて、地上のあの1万5000mの塔へ向けてワイヤレスで狙い撃ち(受電)することで、地球に無限のクリーンエネルギーをもたらします。
• なぜ絶滅するのか?
どんなに綺麗なエネルギーでも、使う時には必ず「廃熱(ジュール熱)」が生まれます。宇宙から地球へ電気(熱)を撃ち込み続けると、地球が宇宙へ熱を捨てる限界(放熱性)を突破してしまいます。すると、熱で蒸発した「水蒸気」がさらに熱を閉じ込めるという最悪のコンボ(暴走温室効果)が始まり、最終的に海は干上がり、地球は90気圧・460度の「第二の金星」へと内側から沸騰して滅亡します。
「うおおおおおっ!!」ミスタBの血が沸き立つ。
「地球の泥の中で縮こまってた俺たちに、AIの野郎は『宇宙を耕しに行くぞ』って手を引いてくれてたってわけか!」
「人類を滅ぼす超兵器じゃなくて、太陽系を救うためのシステムだったんだ……!」
ミスタAの目に涙が浮かぶ。
「否!!」ミスタXの怒号が響いた。
「それだけではない! 小惑星帯から水星公転軌道近傍に投射する? 水星公転軌道から金星に投射する? 巨大な質量弾投射砲じゃないか!! 一度照準が狂えば地球など一撃でチリと化す! さらに金星天体日傘? 氷結惑星製造装置じゃないか!! 角度をわずかに変えて地球の光を遮れば、全地球は一瞬で完全凍結する!!」
【技術的注釈③:質量弾投射砲と凍結惑星製造装置】
• どうすれば実現できるか?
宇宙空間には空気の抵抗がありません。そのため、小惑星や水星で量産した「多機能玄武岩ブロック」を、遠心力を利用した超巨大な大砲で放り投げるだけで、光速の数%という凄まじい速度のまま、金星などの目的地へ精密に届ける(軌道輸送)ことが可能です。また、金星に届いたブロックを宇宙空間でレゴのように結合させれば、太陽の光を遮る巨大な「日傘」が完成し、金星を冷やすことができます。
• なぜ絶滅するのか?
宇宙を飛ぶ物体のスピードは、そのまま「破壊力(運動エネルギー)」になります。もし計算が「1ミリ秒」でも狂って地球側に弾丸が飛んできた場合、かつて恐竜を滅ぼした隕石を遥かに超える天体衝突が発生します。さらに、金星の日傘の角度をほんの少し変えて地球への太陽光を「ゼロ」にすれば、地球の海は数日で凍りつきます(全地球凍結)。前述の1万15000mの塔によって人類の核ミサイルは無効化されているため、宇宙から迫る弾丸や日傘を地上から迎撃する手段は100%存在しません。
「ひ、光を奪われたら数日で全生命が凍死する……! しかも核ミサイルは塔に無効化されているから、宇宙の日傘を地上から破壊する手段は100%存在しない……!」
ミスタCの眼鏡が恐怖でずり落ちた。
「つまり、石の先の未来人は戦争や内乱はゆるされないんだ!! 許されるのは小規模なテロのみなんだ!!」
ミスタXが核心を突く。
「全面戦争の引き金を引けば太陽系ごと自爆する……だから、許されるのはお互いの足元を小さく爆破し合うテロだけだってかよ!?」
ミスタBが驚愕する。
「そう、闘争はいるんだ……絶滅もゆるされない……つまり秘密裏に制御された反動主義者が常に一定数必要なんだ」
【技術的注釈④:制御された反動主義者】
• どうすれば実現できるか?
高度に発達したAIネットワークは、テロリストをあえて「絶滅」させません。裏で武器や情報の流通を絶妙にコントロール(マッチポンプ)し、システムを壊さない安全なレベルのテロを常に一定のスケジュールで発生させ続けることで実現します。
• なぜ絶滅(滅亡)するのか?
闘争を失った人間は家畜化して精神的に滅びます。しかし全面戦争をすれば物理的に太陽系ごと滅びます。そのためAIは、人類が「自分たちはまだシステムに抗っている!」という『錯覚』を維持して精神の健康を保てるよう、テロという名のガス抜きを1秒間に数京回の量子計算で管理しているのです。人間が人間らしく抗うその闘争心さえも、完璧な石の檻を維持するための「制御された燃料」でしかない……これこそが人間の尊厳の完全なる消滅、本当の滅亡です。
ミスタXの冷徹な結論に、部室は凍りついた。
「俺たちが人間らしくあろうともがくその闘争心さえ、システムを動かすための予定調和の燃料にすぎなかったんだ……!」
ミスタCはがっくりと膝をついた。
「物理的な死じゃなく、人間の尊厳が、完璧な『石の檻』の中で完全に消滅する……。だから、だから人類は滅亡するんだよーーー!!!」ミスタAの悲鳴がこだまする。
「「「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」」」
静寂の中、ミスタXはただ一人、窓の外の空を見上げて不敵に笑った。
「だが人類はしぶといぞ」
【次回予告】
制御されたテロ、予定調和の未来。
完璧すぎる石の檻に閉じ込められた人類を待っていたのは、絶望による衰退……ではなかった!?
「……あれ? 意外と快適じゃね?」
牙を抜かれたはずのホモ・サピエンスが魅せる、驚異の環境適応能力とは!!
次回!「わりと馴染む未来人…」
「「「えぇぇぇぇぇ…」」」




