「けど最低限この期間は動けないんだ!!マズいぞ!!」「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」
「けど最低限この期間は動けないんだ!!マズいぞ!!」
第23話で「滴下式低酸素炉」への換装による驚異のエネルギー収支改善を弾き出し、歓喜に沸いたのも束の間。ミスタXは再び黒板の「12日間停泊」という文字を血の滲むような赤チョークで激しく囲み、絶望の声をあげた。
「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」
一般人代表のミスタAが、パイプ椅子の背もたれを掴んだまま白目を剥いて絶叫した。
「12日間に短縮されたんじゃなかったのかよミスタX! 4年がかりだったチャージ期間が、わずか12日間にまで極限まで縮まったんだ! それのどこがマズいっていうんだよ!」
「武装難民と残存勢力のことを考えると……」
ミスタXの容赦ない言葉の銃弾が、部室の空気を一瞬で凍りつかせた。
「奴らは飢えている。そして10トンの救済コンテナ(第10話)を強奪するために、残されたあらゆる船舶で海を渡ってくるんだ。いくら12日間とはいえ、マザーシップが『0ノット』で完全に停止している隙を狙われたら……10フィートコンテナ固定砲の射程内に、文字通りイナゴの群れのように肉薄され、包囲されて終わりなんだよ!!」
肉体労働者のミスタBが、油まみれのハンマーを握りしめて吼える。
「ちくしょう! 12日間、一歩も動けずにハチの巣にされるのを待つだけだってのかよ! 最初の火を点けるための電力を水増しして、チャージ期間をさらにゼロに近づけるウルトラCはねえのか!」
頭脳労働者のミスタCが、眼鏡の奥の目を血走らせ、口元から細いよだれを垂らしながら這うようにして立ち上がった。その指は、ミスタXが机の引き出しの奥から引っ張り出した、埃をかぶった古いスケッチを指差していた。
「あ……頭が、熱力学の限界を突破して沸騰する……! みてくれミスタB! ミスタXの頭の中には、簡易ボイラー仕様のときにお蔵入りしていた『あのアイディア』が、最初から眠っていたんだ!!」
ミスタXの頭の中には、軽量化に特化した表面太陽熱、裏面空冷フィンという側面開放型屋根状玄武岩差熱発電機で最上甲板を覆い、発電量を水増しする案があった。
「たのむAI!!この仕様でマザーシップを再度最適化して性能を見積もってくれ」
ミスタXが祈るようにノートPCのキーボードを叩き、 分散型AI総督 ( ガイア・シノッド ) へデータを転送した。画面の奥で、不滅の石のネットワークが秒間数兆回の熱流体シミュレーションを回し、新たな「最上甲板装甲天蓋」のスペックを白日の下に晒していく!
【技術的解説注釈:最上甲板型『側面開放屋根状玄武岩差熱発電システム』の構造と見積もり】
第14話のマザーシップ(15,000〜18,000トン級)の広大な最上甲板(約2,100㎡)を有効活用する、重量バランスと熱効率を極限まで両立したアタッチメント型発電装甲です。
■ 構造・物理メカニズム:
最上甲板を覆うように、第7話の「多段階結晶制御玄武岩」で鋳造された、厚さわずか数センチの「薄肉軽量人造玄武岩プレート」を屋根状に傾斜配置。側面は壁で密閉せず、海風が完全に吹き抜ける「側面開放構造」とします。
1. 表面(太陽熱吸収面): プレート表面に、13話化学コンテナで精製したカーボンブラック(木炭煤由来)を焼き付け、太陽光の放射熱を極限まで吸収して50℃〜60℃に達する「超高温層」を形成。
2. 裏面(空冷ラジエーターフィン面): 屋根の裏側には、玄武岩一体鋳造による無数の「微細冷却フィン」を実装。側面から吹き込む冷たい海風(約20℃)がフィンを絶え間なく通り抜けることで、強制的な対流放熱(空冷)を実行。
これにより、可動部を1ミリも使わず、ただ「甲板に石の屋根を載せるだけ」で、昼夜を問わず風と太陽がある限り、強烈なΔT(温度差)を維持し続ける不滅の表面ダイナモが完成します。
■ 性能見積もり(最上甲板全面換装時):
・総追加重量:約150トン(薄肉中空構造により、マザーシップの復原性を損なわない極限の軽量化を達成)
・昼間ピーク時追加出力:約 150 kW 〜 200 kW(コンテナ数十基分に匹敵する電力を水増し)
・製造難度:極低(13話の素材加工・特殊金型コンテナがあれば、現地の砂と鉄芯だけで一瞬でプレス鋳造可能)
「す、すげえ……!」ミスタBがスペック表を見て声を震わせる。「ただのハコだったマザーシップの屋根が、まるごと『巨大な生体太陽光パネル(第3話)』になっちまったってわけか! これなら船内の化学プラントのFT合成反応がさらに加速するぜ!」
しかし、画面に表示された「最終残高パケット」を睨みつけていたミスタXの顔は、依然として冷徹なままだった。
「くっ、性能自体は素晴らしいが……それでもやはり動けない時間はある……」
「ええっ!?」ミスタAが頭を抱えて叫んだ。「これだけ電気を水増ししても、まだ『0ノット』の停滞時間は消えないのかよ!」
ミスタCが白目を剥き、歓喜のあまり鼻血を大噴出させながら床でのたうち回った。
「あ……頭が、物理法則の檻を直視して焼き切れそうだ! 当たり前じゃないかミスタA! いくら甲板で電力を水増ししたところで、12日というチャージ期間が『7日』や『5日』に縮まるだけで、燃料がタンクに溜まるまでは『絶対にスクラップヤードから一歩も動けないタイムラグ』は物理的に残るんだ! Armed Refugees(武装難民)は、その5日間すら見逃してはくれないんだよ!!」
部室に、再び絶対的な物理のデッドロックが突きつけられた。どんなに技術を尖らせても、時間が牙を剥く。
だが、ミスタXはへし折れた赤チョークを黒板の「動けない時間」の文字に突き立て、不敵な、あまりにも不敵な狂気の笑みを浮かべた。
「ならば!!」
すべてを予測していた男のその一言は、動けない時間そのものを「最悪のブービートラップ」へと反転させ、迫りくる全生存者の艦隊を地獄へと叩き落とす、秘密結社(読者)の次なる大加速への宣戦布告だった――!
次回予告
「マザーシップだけじゃなくワークホース追加だ!!」
「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」




