第96話 制度の影
連合からの使者は、これまでと違っていた。
人数は二人。
だが、空気が違う。
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広場に現れた男は、
クラウスよりも年上だった。
背筋はまっすぐで、
目は静かに周囲を測っている。
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「初めまして」
男は言った。
「イェルク・ハルヴァーン」
一拍。
「連合評議会の実務総監です」
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ざわめきが起きる。
評議会。
つまり連合の中心。
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クラウスが一歩下がる。
それだけで、立場が分かる。
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「模範都市を見に来ました」
イェルクは言う。
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言葉は柔らかい。
だが、視線は鋭い。
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倉庫。
畑。
広場。
町をゆっくり歩きながら、
彼は何度も質問する。
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「即断権限は代表のみ」
「内政は分散」
「責任は町単位」
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短く頷く。
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「合理的です」
彼は言った。
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その言葉に、
どこか冷たい響きがある。
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夕方。
広場に全員が集まる。
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イェルクは静かに言う。
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「成功しています」
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それは事実だ。
誰も否定しない。
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「成功した構造は」
一拍。
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「制度化されるべきです」
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空気が固まる。
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「三か月の集中は、
試験としては十分です」
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彼は続ける。
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「連合は提案します」
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静かな声。
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「代表制度の恒常化」
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広場がざわめく。
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マルタが言う。
「まだ期限の途中だ」
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「承知しています」
イェルクは頷く。
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「だからこそ、今です」
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「成功している今、
制度を固定する」
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その言葉は、
合理的だった。
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「模範都市は、
制度の基準になります」
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レオンが言う。
「つまり」
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「連合の標準構造」
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イェルクは答える。
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沈黙。
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分散を守るために借りた集中。
それが今、
連合の制度として
固定されようとしている。
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「拒否は?」
誰かが聞く。
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「可能です」
イェルクは即答する。
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一拍。
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「ただし」
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「模範都市の地位は
再検討されます」
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言葉は丁寧だ。
だが、意味は明確だった。
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豊かさ。
交易。
防衛。
すべてが
再交渉になる。
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私は彼を見る。
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この男は敵ではない。
ただ、
合理性の側に立っている。
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イェルクは言う。
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「成功は偶然ではありません」
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「成功は」
一拍。
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「制度にすべきです」
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夕暮れが広場を赤く染める。
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三か月の期限はまだある。
だが、
連合はもう
次の形を決めようとしていた。
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