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断罪された公爵令嬢は、完璧であることをやめました  作者: 月影 すずり


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第38話 残る者、去る者

 連合拠点は、

 以前よりも静かだった。


 人が減ったわけではない。

 仕事が減ったわけでもない。


 ただ――

 張りつめていた何かが、抜けた。


 朝の会議。


 参加者は、

 半分ほどになっている。


 だが、

 誰もそれを問題にしなかった。


「今日は、

 この議題から始めましょう」


 議長の声は、

 落ち着いている。


 意見は、

 すぐに出た。


 反対意見も、

 同じくらい。


 だが――

 誰も急がない。


 結論を、

 今日出す必要がないと

 皆が分かっている。


「……少し、

 楽になりましたね」


 会議後、

 マリアンヌが言った。


「ええ」


 私は、

 否定しなかった。


「決めなくても、

 責められなくなった」


 それが、

 最大の変化だった。


 昼。


 中庭で、

 簡単な食事を取る。


 以前なら、

 情報交換と打ち合わせで

 埋まっていた時間。


 今は、

 ただ食べている。


「離脱した領から、

 連絡は?」


 マリアンヌの問いに、

 私は首を横に振る。


「必要な時だけ、

 来ます」


 それで、

 いい。


 無理につなぎ止める関係は、

 もう、必要ない。


 午後。


 一人の若い領主が、

 私を訪ねてきた。


 連合に残ることを

 選んだ領の代表。


「……正直に言います」


 彼は、

 少し緊張している。


「我々は、

 決断が遅い」


 それは、

 自覚だった。


「効率だけを見れば、

 離脱した領の方が

 正しいのかもしれません」


 私は、

 黙って聞く。


「それでも」


 彼は、

 言葉を続けた。


「迷いながら決める

 この形を、

 手放したくなかった」


 その声は、

 小さいが、

 確かだった。


「……後悔は?」


 私が尋ねると、

 彼は、

 首を振った。


「不安はあります」


「でも、

 納得しています」


 納得。


 それは、

 正解とは違う。


 だが――

 人が生きるには、

 十分な理由だ。


 夕方。


 拠点の外れで、

 地図を広げる。


 連合の範囲は、

 以前より狭い。


 だが、

 色分けは、

 はっきりしている。


 同じ色で塗りつぶされた地図より、

 ずっと、見やすい。


(……これでいい)


 私は、

 そう思った。


 夜。


 作業室で、

 一日の記録をまとめる。


 特別な成果はない。

 目立つ事件もない。


 だが――

 圧は、消えた。


 正しさが、

 一つに集まろうとする力が、

 弱まった。


 それだけで、

 この場所は、

 随分と健全になった。


 私は、

 ペンを置いた。


 残る者がいる。

 去る者もいる。


 どちらも、

 自分で選んだ。


 それが、

 連合の再定義だ。


 完璧な統一はない。


 だが――

 考える余白は、

 確かに戻ってきた。


 私は、

 窓の外を見た。


 灯りは、

 控えめだが、

 安定している。


 それで、

 十分だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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