表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪された公爵令嬢は、完璧であることをやめました  作者: 月影 すずり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/64

第21話 条件付きの救済

 連合会議は、夜明け前に始まった。


 石造りの簡素な会議室。

 豪奢な調度品も、格式ばった装飾もない。


 あるのは、地図と、数字と、

 そして――覚悟だけ。


「王都から、正式な要請は?」


 私の問いに、

 カイル=ヴァルディスが首を横に振った。


「ない」


 短い答え。


「だが、聖女が限界だという情報は、

 間違いなく王都にも届いている」


 空気が、重くなる。


 誰も、

 聖女を見捨てたいわけではない。


 だが同時に、

 王都のやり方に戻る気もない。


「……助ける方法はある」


 私は、はっきりと言った。


 視線が集まる。


「ただし、無条件ではありません」


 誰も驚かなかった。


 それが、

 ここに集まっている者たちの共通認識だったからだ。


「第一条件」


 私は、指を一本立てる。


「聖女を、

 国家資源として扱う制度を廃止すること」


 誰かが、息を呑む。


「彼女は、人です。

 装置ではありません」


 沈黙。


 反論は、出なかった。


「第二条件」


 指を、もう一本。


「王都主導の主流魔力路を、

 即時縮小・再編すること」


「それは……」


 誰かが言いかけて、

 言葉を飲み込んだ。


「分かっています」


 私は、先に言う。


「王都は、不安定になります」


 だが――


「すでに、

 安定している“ふり”をしているだけです」


 数字を、机に並べる。


 観測値。

 限界値。

 歪みの累積。


「第三条件」


 最後の指を立てる。


「聖女本人の意思を、

 最優先とすること」


 その瞬間、

 空気が、はっきりと変わった。


「それは……」


「最も、受け入れがたい条件でしょう」


 私は、静かに言った。


「だからこそ、

 必要です」


 王都は、

 これまで一度も、

 彼女に選ばせなかった。


 その沈黙の上に、

 今の歪みがある。


「……もし、王都が拒否したら?」


 誰かが、問いかける。


 私は、即答した。


「救済は行いません」


 冷たい言葉。

 だが、

 誰もそれを非難しなかった。


 それは、

 復讐ではない。


 線引きだ。


「私たちは、

 誰かを壊す仕組みに、

 手を貸さない」


 カイルが、低く言った。


「それが、

 連合の方針だ」


 全員が、頷いた。


 その時。


「……王都から、

 非公式の伝令です」


 伝令役が、

 息を切らして入ってくる。


「聖女の状態が、

 さらに悪化していると」


 胸の奥が、静かに軋んだ。


(……時間がない)


 だが。


 だからといって、

 条件を曲げることはない。


「返答は?」


 私が尋ねる。


 伝令は、首を振った。


「……ありません」


 私は、目を閉じた。


 そして、

 はっきりと言った。


「では、

 こちらからは動きません」


 それは、

 冷酷な判断に見えるだろう。


 だが。


 ここで折れれば、

 また同じことが繰り返される。


 誰かが壊れ、

 誰かが守った“ふり”をして、

 何も変わらない。


 会議が終わり、

 皆が席を立つ。


 最後に、

 カイルが私に言った。


「……覚悟はいいか」


 私は、窓の外を見た。


 夜明けの光が、

 地平線を染め始めている。


「はい」


 静かに、答える。


「救うために、

 見捨てる覚悟なら」


 その言葉に、

 誰も何も言わなかった。


 それでいい。


 悪役令嬢と呼ばれた私は、

 今もなお、

 嫌われる選択をする役目を引き受けている。


 だが、違う。


 今度は――

 誰かに押しつけられた役ではない。


 私自身が、選んだ役だ。


 王都は、

 これから決断する。


 人を救うために、

 仕組みを壊すか。


 それとも、

 仕組みを守るために、

 人を壊すか。


 その答え次第で、

 世界は、

 本当に変わる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ