第122話 守れなかったもの
「組み合わせる」
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その言葉は、
風の中に消えた。
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レオンは何も言わない。
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マルタも、
ルーカも。
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ただ、
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その意味を考えている。
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その時だった。
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叫び声が上がる。
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「誰か!」
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短い。
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だが、
切迫している。
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全員が振り返る。
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広場の奥。
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一人の女が、
倒れている。
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子どもを抱いたまま。
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「熱が……!」
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男が叫ぶ。
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近づく。
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子どもはぐったりしている。
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息が浅い。
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「水を!」
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誰かが言う。
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「薬は!?」
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返事はない。
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ガルンには、
備蓄がない。
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必要な分しか持たない。
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それが、
この構造だった。
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「どこにある」
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レオンが聞く。
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「中央に」
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一拍。
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「連合の補給所」
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沈黙。
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遠い。
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間に合わない。
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「運ぶ」
レオンが言う。
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「今から行けば」
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「無理だ」
マルタが言う。
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「戻るだけで時間がかかる」
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子どもの呼吸が浅くなる。
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女が叫ぶ。
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「お願い……!」
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その声は、
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ラーデンと同じだった。
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助けてくれ。
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だが、
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ここには、
中央も、
分散も、
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ない。
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ただ、
今だけがある。
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「どうする」
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レオンが言う。
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問いは、
単純だ。
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だが、
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答えはない。
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男が言う。
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「持ってくる」
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ガルンの住人だ。
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「どこから」
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「その場で決める」
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同じ言葉。
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だが、
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間に合わない。
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分かっている。
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全員が。
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私は子どもを見る。
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小さい。
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軽い。
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まだ、
未来があるはずだった。
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だが、
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構造は関係ない。
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今、
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助けられない。
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それだけだ。
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レオンが歯を食いしばる。
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「くそ……!」
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マルタが動く。
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「できることを」
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水を用意する。
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冷やす。
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だが、
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足りない。
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根本が足りない。
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時間が足りない。
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子どもの呼吸が、
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止まる。
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静寂。
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誰も、
何も言わない。
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女が崩れる。
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「……なんで」
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その言葉は、
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誰にも向いていない。
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ただ、
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落ちる。
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私は立っている。
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何もできなかった。
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構造も、
理論も、
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関係なかった。
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ただ、
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間に合わなかった。
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それだけだ。
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男が言う。
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「こういうこともあります」
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静かな声。
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否定も、
肯定もない。
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「次で防ぐ」
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簡単に言う。
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だが、
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それは、
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もう遅い。
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レオンが言う。
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「これが現実か」
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私は答えない。
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答えは、
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目の前にある。
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中央でも、
分散でも、
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ガルンでも、
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救えないものがある。
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風が吹く。
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三か月の期限。
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残り、
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わずか。
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そして、
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私は、
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ようやく理解する。
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何を選ぶのか。
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ではない。
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何を、
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捨てるのか。
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それを、
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選ぶしかないのだと。
ここまでご覧いただきありがとうございます。
まもなく完結となります。
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