第121話 制度の外で生きる
風は、変わらなかった。
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ガルンに戻っても、
何も変わらない。
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人は歩き、
水を汲み、
火を囲む。
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命令はない。
指示もない。
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それでも、
動いている。
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「やっぱりおかしいな」
レオンが言う。
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「普通じゃない」
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「ええ」
私は答える。
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「普通ではありません」
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だが、
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破綻もしていない。
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それが、
一番の違和感だった。
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前と同じ男が現れる。
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「戻ってきましたね」
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「ええ」
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一拍。
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「聞きに来ました」
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男は頷く。
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「何を」
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私は言う。
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「なぜ回るのか」
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沈黙。
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男は少し考える。
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「回していないからです」
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レオンが顔をしかめる。
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「どういう意味だ」
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「維持しようとしない」
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一拍。
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「崩れたら」
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「その場で直す」
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単純だ。
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単純すぎる。
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「それでは間に合わない」
マルタが言う。
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「大きな崩壊はどうする」
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男は答える。
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「起きたときに考える」
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ルーカが笑う。
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「無責任だな」
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男は首を振る。
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「違う」
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一拍。
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「未来に責任を持たない」
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沈黙。
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それは、
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これまでのすべてと逆だった。
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中央は未来を守る。
分散も未来を考える。
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だが、
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ここは違う。
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「今だけを見る」
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男が言う。
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「今を崩さない」
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一拍。
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「それだけです」
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私は周囲を見る。
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確かに、
今は崩れていない。
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だが、
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未来は保証されない。
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「怖くないのか」
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男は少しだけ笑う。
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「怖いですよ」
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一拍。
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「でも」
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「固定の方が怖い」
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沈黙。
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レオンが言う。
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「固定?」
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「はい」
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「決めてしまうこと」
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一拍。
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「それが一番壊れる」
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ラーデンがよぎる。
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決めた結果、
切られた都市。
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私は言う。
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「それでも」
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「守れるものがある」
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男は頷く。
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「あります」
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一拍。
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「でも」
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「守れないものもある」
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静寂。
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同じだ。
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どの構造も、
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完全ではない。
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ただ、
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違うだけだ。
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私は小さく息を吐く。
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「あなたたちは」
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一拍。
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「何を守る」
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男は答える。
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「今です」
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即答だった。
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「今、目の前にいるもの」
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それ以上はない。
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それ以下もない。
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私は目を閉じる。
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中央。
分散。
そして、
ここ。
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すべてが、
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正しくて、
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足りない。
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風が吹く。
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三か月の期限。
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残りわずか。
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だが、
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答えは、
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まだ出ていない。
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レオンが言う。
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「で」
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「どうする」
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私は空を見上げる。
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そして、
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静かに言う。
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「組み合わせる」
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その言葉に、
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誰もすぐには答えなかった。
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