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断罪された公爵令嬢は、完璧であることをやめました  作者: 月影 すずり


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118/126

第118話 選ばれないもの

 「切りません」


---


 その言葉が、耳に残っていた。


---


 ガルンの男は、


 当たり前のように言った。


---


 切らない。


---


 それは、


 連合のどの制度にもなかった。


---


 帰路。


---


 誰も口を開かなかった。


---


 風だけが鳴る。


---


「……どう思う」


 レオンが言う。


---


 短い問い。


---


 だが、


 答えは簡単ではない。


---


「成立している」


---


 私は言う。


---


「少なくとも今は」


---


 マルタが言う。


---


「長くは持たない」


---


「責任がない」


---


「だから崩れる」


---


 その理屈も正しい。


---


 ルーカが言う。


---


「でも」


---


「崩れてない」


---


 沈黙。


---


 それが問題だった。


---


 正しくないはずの構造が、


 機能している。


---


 それは、


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 既存の制度を揺らす。


---


 連合に戻る。


---


 空気が違う。


---


 ざわめき。


 人の動き。


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 すでに話は広がっている。


---


「報告を」


 クラウスが言う。


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 私は簡潔に伝える。


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「ガルンは」


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「連合を拒否」


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「補給線遮断」


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「独自統治」


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 一拍。


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「機能しています」


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 その一言で、


 場が揺れる。


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「あり得ない」


 誰かが言う。


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「無秩序だ」


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 イェルクが言う。


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「違います」


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 私は即答する。


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「秩序です」


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 静寂。


---


 リアが言う。


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「危険です」


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「予測できない」


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 それは事実だ。


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 中央は予測できる。


 分散もある程度は読める。


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 だが、


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 ガルンは読めない。


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「だから排除する」


---


 イェルクの言葉は早かった。


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 迷いがない。


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「補給線を取り戻す」


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「連合の統治外を認めない」


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 当然の判断だ。


---


 だが、


---


 空気が少しだけ重くなる。


---


 ラーデンの記憶。


---


 切られた都市。


---


 その延長にある判断。


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「戦うのか」


 レオンが言う。


---


「必要なら」


---


 イェルクは即答する。


---


 リアも頷く。


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「放置すれば広がる」


---


「統治が崩れる」


---


 正しい。


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 だが、


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 私は言う。


---


「まだ早い」


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 視線が集まる。


---


「何がだ」


---


「結論です」


---


 一拍。


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「三か月」


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 その言葉で、


 空気が止まる。


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 忘れてはいない。


---


 だが、


 意識から外れかけていた。


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「期限はまだ残っている」


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「制度を決める前に」


---


「排除を決めるのか」


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 沈黙。


---


 クラウスが言う。


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「だが現実の問題だ」


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「補給線は切られている」


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 その通りだ。


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 だからこそ、


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「選択が問われている」


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 私は言う。


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「制度を守るのか」


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「人を守るのか」


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 イェルクが言う。


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「同じです」


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「違う」


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 私は首を振る。


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「ガルンは」


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「その前提を拒否している」


---


 沈黙。


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 連合は、


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 制度の中でしか動けない。


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 だが、


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 制度の外が現れた。


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 それを、


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 どう扱うか。


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 レオンが言う。


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「どうする」


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 問いは重い。


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 排除か。


 対話か。


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 その時だった。


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 使者が飛び込んでくる。


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「報告!」


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 息が荒い。


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「ガルンが」


---


 一拍。


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「別の都市と接触」


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 ざわめき。


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「どこだ」


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「まだ不明」


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 だが、


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 確実に広がっている。


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 第四の構造。


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 連合の外。


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 そして、


---


 それは増える。


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 イェルクが言う。


---


「猶予はない」


---


 リアも言う。


---


「広がる前に止める」


---


 私は言う。


---


「まだ決めるな」


---


 沈黙。


---


 三か月。


---


 残り、


---


 わずか。


---


 だが、


---


 その間に、


---


 すべてが変わるかもしれない。


---


 風が吹く。


---


 制度は揺れている。


---


 そして、


---


 その外で、


---


 新しい何かが、


---


 広がろうとしていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


ついに連合が「排除」という選択に傾き始め、物語は一気に緊張感を増してきました。

そして現れた“第四の構造”は、連合の外で広がり始めています。


もし面白いと感じていただけたら、ぜひブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次話では、主人公がどちらに踏み込むのか――その決断が描かれます。

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