第118話 選ばれないもの
「切りません」
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その言葉が、耳に残っていた。
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ガルンの男は、
当たり前のように言った。
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切らない。
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それは、
連合のどの制度にもなかった。
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帰路。
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誰も口を開かなかった。
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風だけが鳴る。
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「……どう思う」
レオンが言う。
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短い問い。
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だが、
答えは簡単ではない。
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「成立している」
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私は言う。
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「少なくとも今は」
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マルタが言う。
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「長くは持たない」
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「責任がない」
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「だから崩れる」
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その理屈も正しい。
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ルーカが言う。
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「でも」
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「崩れてない」
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沈黙。
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それが問題だった。
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正しくないはずの構造が、
機能している。
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それは、
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既存の制度を揺らす。
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連合に戻る。
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空気が違う。
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ざわめき。
人の動き。
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すでに話は広がっている。
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「報告を」
クラウスが言う。
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私は簡潔に伝える。
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「ガルンは」
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「連合を拒否」
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「補給線遮断」
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「独自統治」
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一拍。
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「機能しています」
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その一言で、
場が揺れる。
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「あり得ない」
誰かが言う。
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「無秩序だ」
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イェルクが言う。
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「違います」
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私は即答する。
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「秩序です」
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静寂。
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リアが言う。
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「危険です」
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「予測できない」
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それは事実だ。
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中央は予測できる。
分散もある程度は読める。
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だが、
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ガルンは読めない。
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「だから排除する」
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イェルクの言葉は早かった。
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迷いがない。
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「補給線を取り戻す」
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「連合の統治外を認めない」
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当然の判断だ。
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だが、
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空気が少しだけ重くなる。
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ラーデンの記憶。
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切られた都市。
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その延長にある判断。
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「戦うのか」
レオンが言う。
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「必要なら」
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イェルクは即答する。
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リアも頷く。
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「放置すれば広がる」
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「統治が崩れる」
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正しい。
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だが、
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私は言う。
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「まだ早い」
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視線が集まる。
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「何がだ」
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「結論です」
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一拍。
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「三か月」
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その言葉で、
空気が止まる。
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忘れてはいない。
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だが、
意識から外れかけていた。
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「期限はまだ残っている」
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「制度を決める前に」
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「排除を決めるのか」
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沈黙。
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クラウスが言う。
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「だが現実の問題だ」
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「補給線は切られている」
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その通りだ。
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だからこそ、
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「選択が問われている」
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私は言う。
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「制度を守るのか」
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「人を守るのか」
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イェルクが言う。
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「同じです」
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「違う」
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私は首を振る。
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「ガルンは」
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「その前提を拒否している」
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沈黙。
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連合は、
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制度の中でしか動けない。
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だが、
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制度の外が現れた。
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それを、
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どう扱うか。
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レオンが言う。
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「どうする」
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問いは重い。
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排除か。
対話か。
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その時だった。
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使者が飛び込んでくる。
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「報告!」
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息が荒い。
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「ガルンが」
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一拍。
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「別の都市と接触」
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ざわめき。
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「どこだ」
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「まだ不明」
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だが、
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確実に広がっている。
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第四の構造。
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連合の外。
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そして、
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それは増える。
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イェルクが言う。
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「猶予はない」
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リアも言う。
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「広がる前に止める」
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私は言う。
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「まだ決めるな」
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沈黙。
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三か月。
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残り、
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わずか。
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だが、
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その間に、
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すべてが変わるかもしれない。
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風が吹く。
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制度は揺れている。
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そして、
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その外で、
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新しい何かが、
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広がろうとしていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ついに連合が「排除」という選択に傾き始め、物語は一気に緊張感を増してきました。
そして現れた“第四の構造”は、連合の外で広がり始めています。
もし面白いと感じていただけたら、ぜひブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。
次話では、主人公がどちらに踏み込むのか――その決断が描かれます。




