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断罪された公爵令嬢は、完璧であることをやめました  作者: 月影 すずり


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第117話 選ばない者たち

 風が強かった。


---


 ラーデンを離れ、


 ガルンへ向かう道は、


 静かすぎた。


---


 人の気配がない。


---


「おかしいな」


 レオンが言う。


---


「補給線を切ったなら」


---


「もっと動きがあるはずだ」


---


 その通りだ。


---


 戦うなら、


 動く。


---


 だが、


 ここにはそれがない。


---


 ただ、


 止まっている。


---


 町に入る。


---


 門は開いている。


---


 警備はいない。


---


 それでも、


 荒らされた形跡はない。


---


「罠か」


 マルタが低く言う。


---


「違う」


---


 私は言う。


---


「放置されている」


---


 中に入る。


---


 人はいる。


---


 普通に生活している。


---


 水を汲み、


 食料を分け、


 子どもが走る。


---


 だが、


---


 違和感がある。


---


「……静かだ」


---


 ルーカが言う。


---


 確かに。


---


 争いがない。


 命令もない。


 議論もない。


---


 ただ、


---


 流れている。


---


「誰が決めてる」


 レオンが聞く。


---


 その時だった。


---


「決めていない」


---


 声がする。


---


 一人の男が立っている。


---


 年齢は分からない。


 服は普通。


 武装もない。


---


「ようこそ」


---


 敵意はない。


---


「ガルンへ」


---


 私は言う。


---


「補給線を切った」


---


「ええ」


---


「理由は」


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 男は少し笑う。


---


「必要がないからです」


---


 沈黙。


---


「必要ない?」


---


「連合に依存する必要がない」


---


 一拍。


---


「だから切った」


---


 単純すぎる。


---


 だが、


 嘘ではない。


---


「どうやって維持している」


---


 男は周囲を見る。


---


「分散しています」


---


「役割を」


---


 私は目を細める。


---


「機能分散か」


---


「違う」


---


 即答。


---


「もっと単純です」


---


 一拍。


---


「その場で決める」


---


 沈黙。


---


「その場?」


---


「必要なことを」


---


「必要な人が」


---


「必要なだけ決める」


---


 レオンが言う。


---


「責任は」


---


 男は答える。


---


「残らない」


---


 空気が止まる。


---


「残らない?」


---


「はい」


---


「その場で終わる」


---


 一拍。


---


「誰のものでもない」


---


 理解できない。


---


 いや、


---


 理解はできる。


---


 だが、


---


 成立するはずがない。


---


「それで回るのか」


---


「回っています」


---


 事実だ。


---


 目の前にある。


---


 争いもない。


 命令もない。


---


 だが、


---


 動いている。


---


 マルタが言う。


---


「責任がないなら」


---


「失敗はどうする」


---


 男は答える。


---


「次で修正する」


---


 軽い。


---


 軽すぎる。


---


 だが、


---


 破綻していない。


---


「だから」


---


 男は続ける。


---


「選ばない」


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「制度を」


---


 沈黙。


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 中央でもない。


 分散でもない。


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 第三でもない。


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 これは、


---


 第四だ。


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「名前はあるのか」


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 私は聞く。


---


 男は少し考える。


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「ありません」


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 一拍。


---


「必要ない」


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 風が吹く。


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 連合の外。


---


 制度の外。


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 そこに、


---


 もう一つの形があった。


---


 レオンが言う。


---


「不安定すぎる」


---


 男は頷く。


---


「ええ」


---


 一拍。


---


「でも」


---


「固定されません」


---


 沈黙。


---


 固定されない。


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 それは、


---


 壊れないということでもある。


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 私は静かに言う。


---


「それでも」


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「守れないものがある」


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 男は少しだけ笑う。


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「あります」


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「でも」


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 一拍。


---


「切りません」


---


 その言葉で、


 すべてがつながる。


---


 中央は切る。


 分散は遅れる。


---


 ここは、


---


 切らない。


---


 代わりに、


---


 保証しない。


---


 沈黙。


---


 私は言う。


---


「連合は動く」


---


「あなたたちを排除する」


---


 男は頷く。


---


「でしょうね」


---


「どうする」


---


 一拍。


---


「その場で決めます」


---


 同じ答え。


---


 風が強くなる。


---


 制度の戦いは、


---


 もう


---


 三つではなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


ついに「選ばない」という第四の構造が姿を現しました。

ここからは、制度そのものを揺るがす戦いになります。


もし面白いと感じていただけたら、ぜひブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次話では、連合がこの存在にどう動くのかが描かれます。

ここから一気に緊張が高まります。

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