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選律の星環譜  作者: 刹那
33/67

一足幅

朝。実技室。床に白テープが二本、黒円の外周から一足分だけ離れて走っている。

掲示にはALT-02:1.0と評価カード1.0。

その下に、小さく**『部屋版退避=壁沿いテープ(一足幅)』と書かれた紙。

今日は線そのもの**を体で覚える回だ。


志水がメジャーと足型ゲージ(紙の中敷きみたいなやつ)を配る。ルナは白板に三行を書いた。


『最後で数える』


『前後半拍』


『走者のみ白点/非走者=退避線』


(胃評議会は“朝は炭水化物を希望”と主張。今日は動くから、許可)


—扉が開き、黒鐘イツキが入る。監督者へ会釈だけ。見学席に楓。

ミレイユ教官が白板の端でペンを回す。三ノ宮は判子を置いて腕を組む。



◆口頭要約(30秒)



三ノ宮が顎でコツ。「短く」


「目的:退避線=一足幅を誤差±一目盛りで体に入れる」


「手順:前後半拍→合図(1→A/2→B/3→C)→最後→二拍。

走者のみ白点、非走者=退避線内で床白線。足型ゲージで初期校正→感覚運用」


「評価:逸脱<5%/R-10継続/『一足幅ズレ』が**±1目盛り以内80%以上**。EP-1=各自1回」


「例外:E-12b(外部音)/名目干渉−2/支援は休憩帯のみ+1」


ミレイユが付け足す。「視線干渉を防ぐため、非走者は白点を見ないを再強調」



◆ドリル1:初期校正(ゲージで測る)



前後半拍。ピッ。A=俺が黒円の外へ一歩。志水が足型ゲージを床に置く。

踵を合わせ、一足幅テープの内側に指一本分の余白。合図。二拍静止。白点は見ない。


交代。ピッピでB=イツキ。0%の顔で、同じ位置にすっと立つ。誤差なし。ピッピッピでC=楓。

+半目盛りズレ(広め)。


「広い」俺が三語で言う。


楓は二拍の間に足幅−半目盛りで修正。肩は沈む。


ログ(初期校正)


一足幅ズレ:A=±0/B=±0/C=+0.5目盛り→修正


退避線:遵守(非走者=床白線)


EP-1:未使用(温存)


ルナが一言。「数字→体の順で入れる。最初だけゲージ、次からは感覚」



◆ドリル2:感覚運用(目を使わない)



目安のテープを布で隠す。足元だけ。合図は机ノックに切り替え。前後半拍→コツ。


A=俺。白線だけを端視で捉え、一歩=一足幅を感覚で置く。二拍静止。


B=イツキ。±0。


C=楓。−一目盛り(ちょい狭い)。


胸の中にポコン……。


A:言葉で指摘する / B:EP-1でルールを置く


「B。EP-1」


短く置く。「退避=一足」——合図後、一回。


楓は二拍の間に足幅+一目盛りで修正。


ログ(感覚運用)


ズレ:A=±0/B=±0/C=−1→修正


EP-1:A=「退避=一足」


ミレイユが頷く。「言葉を短く→体が追う、の順。良い」



◆ミニ事件1:視線のクセ(“見ちゃった”)



交代の二拍、見学の真白が白点をちらっと見てしまう。イツキの肩が一瞬だけ揺れた。


胸の中にポコン……。


A:流す / B:干渉−1で記録→言い換え


「B。記録→言い換え」


ルナが即座に言う。「白点禁止→床白線」


真白はうなずいて、次の二拍は床白線を見る。揺れは消えた。


ログ(クセ)


干渉:−1(記録)→次ターン修正


誤読:0



◆ドリル3:遠近の穴(広く見える床)



午後。輪っかライトの角度を変える。床目のパースで、遠側が広く見える仕掛けだ。


コツコツ(2)。B=イツキが入る。±0で置く。さすが。


コツ(1)。A=俺は**+一目盛り広く置いてしまう。肩が浮きかけ**。


胸の中にポコン……。


A:速度を落とす / B:呼吸前倒し / C:基準点を白線→退避テープ端に切替


「B→C」——二吸で沈めつつ、基準点を退避テープ端に切り替え。パースの騙しを無効化。


コツコツコツ(3)。C=楓は最初からテープ端基準で**±0**。


ログ(遠近)


ズレ:A=+1→修正/B=±0/C=±0


SY-肩:浮きかけ→呼吸✔


メモ:『遠近穴→基準=テープ端(臨時)』



◆ドリル4:割込み処理(音に負けない)



セットを回していると、廊下の巡回チャイムがチンと鳴る。前静の0.4秒後。


胸の中にポコン……。


A:通常継続 / B:E-12bで二拍静止


「B。二拍」

——最後の音の終わりから二拍静止。まとまり内なので吸収。延長不要。退避線は一足幅を維持。


ログ(割込み)


E-12b:成立(延長不要)


誤読:0



◆休憩帯(胃の測量)



麦茶とおにぎり。楓が三語。「一足、覚えた」


俺が三語。「遠近、無効化」


イツキは……親指を上げないで、会釈だけ。十分。


(胃評議会も“±一目盛り以内で満腹”と可決)



◆仕上げ:三人一本(整流+一足)



最後の一本だけ、1→2→3で回す。前後半拍→最後→二拍。


A=俺:EP-1を二拍末尾で「時間の穴→静止」。ズレ±0。


B=イツキ:±0継続。合図後は無言。


C=楓:交代の二拍で「交代=白点」。ズレ−0.5→修正。


集計(本日)


R-6(ALT-02通算)


一足幅ズレ:±1目盛り以内=88%(目標超え)


逸脱:A=最大0.7%/B=0%/C=最大0.6%


EP-1:A・C達成(被りなし)


干渉:−1(見ちゃった)→修正


メモ:『遠近穴→テープ端』を掲示の下に追記


三ノ宮がスタンプを押す。「一足幅:基準化。部屋版退避と実技で線の意味を揃える」


ミレイユが二行で締める。


『数字→体→言葉』


『線=距離=余白』


イツキは白板を一度だけ見て、監督者へ会釈。

退避線に視線を落としたときだけ、たぶん同じ幅を見ていた。



◆廊下(二択)



掲示板に**『一足幅:基準化』**の小紙が増える。


胸の中にポコン……。


A:この学園で静かに暮らす / B:全力で勝ちにいく


「保留」——一足は線で、線は余白。今日の余白は、ちょうど一足分。


—輪っかライトが床に丸。足音は二人分、少し遅れて一人分。テンポはたん、たん、たん。

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