交差帯強化
夕方。寮の仮運用室。輪っかライトは中弱。壁の帯ポスターが三枚、横並びで貼ってある。
【静音帯】22:00–7:00/言葉最小/EP-1は不可(交差で済)
【交差帯】19:00–21:00/会話OK/EP-1=一人一回/支援+1は休憩のみ
【運用外】室内の視覚合図は禁止(干渉−1)
今日は交差帯の設計を強化する日。メンバーは俺、ルナ、楓、長谷。
霧島さんは監督、真白は休憩帯のみ参加。
◆目的とルール(口で回す)
ルナが指で三行を作る。
「目的は“被り回避と短文固定”。手順は“二拍静止→一文→二拍静止”。
評価は“言葉の被り率<10%/三語以下の応答率>80%”。」
ミレイユ教官(今日は同席)が補足する。
「EP-1は一人一回、合図付近。支援は休憩帯。名目干渉は**−2**」
壁の机に部屋白点(白丸シール)が四つ。各机の端に一つずつ。ここを見ると二拍がそろう。
胸の中にポコン……。
A:すぐ実戦 / B:まずテンプレを作る
「B。テンプレから」
◆会話テンプレβ(貼り出し)
白板に五項目。
最初の二拍:話す前に白点を見る。
一文三語:基本は三語まで(例:『今夜は静音』『合図→止まる』『水は任せて』)。
被り回避:相手の終端+半拍は沈黙。
言い換え辞書(短):『了解→OK』『支援→手伝う』『干渉→割込み』。
保険のEP:被ったら次ターン個別で置き直す(共有扱い)。
楓が指差す。「胃評議会は?」
「休憩帯で開催」ルナが即答。「議長・舌先の発言は三語まで」
(胃にもルールが要るのか……要る)
◆演習A:三語固定(机の片付け)
題目は“机の上を相互最適化”。一度に話していいのは一人。合図は軽いノック。
合図。コツ。
楓:「右、空ける」
長谷:「本、左寄せ」
俺:「線、共有」——白テープで机の境界線を一本。
長谷が半拍待ってから頷く。「OK、守る」
EP-1のタイミング——胸の中にポコン……。
A:今置く / B:もう一本待つ
「B。待つ」
—整ったところで、俺が短く置く。「合図→止まる」
楓が終端前に続ける。「交代=白点」
ログ(A)
被り率:0%
三語率:100%
EP-1:俺→合図後/楓→終端前(共有なし)
ミレイユが一言。「半拍の沈黙が効いている」
◆演習B:被り対処(洗濯当番)
題目は“今週の洗濯”。カードに『月/水/金』の三択。合図はコツ。
合図。コツ。
俺:「水、担当」
長谷:「水、担当」——被った。
ルナが片手を上げる。「1.0では共有扱い。次ターンで個別に」
二拍静止。
俺:「月、変更」
長谷:「金、受ける」
ログ(B)
被り率:1回→共有→個別回収
三語率:95%(長谷の「金、お願いします」が四語で−5%)
EP-1:未使用(温存)
楓がメモ。「お願いします→受ける(辞書へ追加)」
◆演習C:割込みの扱い(来客ノック)
練習の最中、廊下からトントン。真白が顔だけ出す。「休憩帯に入る?」
合図ではない外部事象。
胸の中にポコン……。
A:そのまま続行 / B:二拍静止→返答三語
「B。二拍→三語」
俺:「今、交差帯」
楓:「十分後、休憩」
真白:「了解、また後」
ログ(C)
外部事象:二拍静止を挟んで処理(E-12bではないが**“穴→静止”**の応用)
被り率:0%
ルナが白板に追記。「割込み=二拍→三語」
◆休憩帯(胃の三語)
麦茶、ナッツ。真白も着席。支援+1が一つ。
楓:「胃、平和」
真白:「麦茶、正解」
俺:「甘味、欲しい」
長谷が笑う。「干渉じゃないのが平和」
—休憩が終わる。白点を見る。二拍静止。交差帯へ戻る。
◆演習D:EP-1の置き所(ズレ予防)
題目は“就寝前の動線”。
合図。コツ。
長谷が先にEP-1。「交代=白点」
俺は終盤で一回だけ。「時間の穴→静止」
楓は今回は温存。
ログ(D)
EP-1配置:開始付近&終端前で被りなし
被り率:0%
三語率:100%
ミレイユが短評。「先/後の配置で衝突回避。いい」
◆小さな事件:名目干渉の影
真白が帰り際、親指立てをひょいと上げかける(視覚合図)。すぐ下げて、口で三語。
「休憩で話そ」
霧島さんが頷く。「−1を回避。言い換え、合格」
(名目は刃にも盾にもなる。今日は盾側)
◆まとめ(交差帯の手触り)
白板を前に、ルナが三行で締める。
『半拍の沈黙→三語』
『割込み=二拍→三語』
『EP-1は先/後で分散』
集計(本日の交差帯)
被り率:6%(Bの一回のみ)
三語率:92%(辞書で改善の余地)
支援+1:休憩帯×2(差し入れ/後片付け)
干渉−1:発生なし(回避成功)
ミレイユが仕上げる。
「1.0の線に会話テンプレβを重ねて運用可能。辞書は増やしすぎず、四問で場を固定」
窓の白が薄くなって、輪っかライトの影が伸びる。足音は二人分、少し遅れて一人分。
テンポはたん、たん、たん。
胸の中にポコン……。
A:維持で進む / B:条件付きで変更へ寄せる
「保留」——半拍の沈黙が、会話にも効く。明日も三語で、歩こう。




