小雨運用
午前。中庭。雲は低くて薄い灰。小雨。輪っかライトは雲でぼやけ、影は柔らかい。
石畳はところどころ濡れて、黒円の縁も暗く見える。
志水が準備を進める。透明シートで白点を覆い、周囲を防水テープで四角く囲む。
足元には薄い滑り止めマット。端にタオルと吸水スポンジ。
掲示は臨時の板に移っている。
【運用】
ALT-01(本許可)/評価カード1.0。小雨時は白点=基準、影=臨時。E-12b(外部音)は有効。
支援は休憩帯のみ+1。
ミレイユ教官が短く整える。
「四問を置く。対象=使用者、場所=中庭の黒円(濡れ範囲を含む)、
主体=監督者、時間=本セッション。EP-1は一人一回」
楓が小声。
「胃評議会、雨に弱い」
「議長・舌先は保温を要求」
—扉が静かに開く。黒鐘イツキが入ってきて、監督者に会釈。こちらは見ない。距離感、いつもどおり。
◆セットN(小雨の初動)
合図。ピッ。
胸の中にポコン……。
A:反応→当て / B:当て→反応
「A。反応から」
——赤、右。白、前。黄、左後ろ。濡れた石は半歩短く踏む。呼吸は四吸・二止・四吐。
三分で当て(軽い)へ。×の左上から入り、三回目で中心。合図。二拍静止。
視線は白点(透明シート越し)。交代。
短く置く。
「交代=白点」——EP-1、回収。
イツキは姿勢→反応→当て。終端前に低く一言。
「時間の穴→静止」。
ログ(N)
正確度:逸脱0.3%(カイ)/0%(イツキ)
再現性:R-1(小雨通算)
EP-1:達成(両者)
SY-肩:発生なし
◆小トラブル1(雨音の重なり)
二本目の交代直前、屋根の樋からコトンと水が落ちる。合図のピッに半拍遅れで重なった。
胸の中にポコン……。
A:通常継続 / B:E-12b適用(二拍)
「B。E-12b」
——最後の音の終わりから二拍静止。打ち切りの一拍は不要。再開。
志水がメモに丸。
「E-12b:成立」
ミレイユが短く頷く。
「音源が水でも、時間の穴として処理できる」
(“穴は静止で埋める”。雨でも同じ)
◆小トラブル2(反射と滲み)
三本目。白点の透明シートに水滴が増え、小さな反射が二つできる。視線が二重に引っ張られる。
胸の中にポコン……。
A:影へ切替 / B:白点枠の角を見る(四角の手前左上)
「B。角」
「理由」ルナ。
「基準>臨時。白点の外枠は滲みに強い。角=一点でブレない」
「OK。本セット限定で角を視線基準に」
合図。二拍静止。角を見る。肩は沈む。交代。イツキも角に視線を落として止まる。テンポは保たれた。
ログ(反射処理)
正確度:逸脱0.6%(カイ)/0%(イツキ)
追記:『滲み→角を見る(臨時)』
◆滑り気味(SY-肩の出番)
四本目。戻り足で踵がすべる。肩が浮きかけ——
胸の中にポコン……。
A:速度を落とす / B:呼吸前倒し / C:足幅を一目盛り広げる
「B→C」
——二吸を差し込み、足幅を一目盛り広げる。肩は沈む。滑りは収まる。
ログ(SY-肩)
SY-肩:浮きかけ→呼吸前倒し+足幅、修正✔
「修正を単語で残す」ミレイユが記録カード1.0のSY-肩欄に追記する。
◆休憩帯(支援と干渉)
短い休憩。楓がタオルを渡し、スポンジで白点シートの水滴を休憩帯のうちに吸う。+1。
その隣で、初等の真白が折りたたみ傘を広げかけて——止める。「光源=監督者専用、だっけ」
「そう。帯の中で位置確認なら+1」ルナ。
真白は傘を閉じ、スポットライトごっこを自粛。胃評議会は温かいスープで沈静。
◆配置替え(影の誘惑)
最後のセット。雲が少し切れて、影の輪がはっきりする。白点は透明シート越しに水膜が薄く残る。
胸の中にポコン……。
A:影へ切替(検証) / B:白点を継続(基準)
「B。白点継続」
「理由」
「基準を守る練習を今日の目的にした。臨時は予備」
合図。ピッ。反応→当て。交代。二拍静止。白点の角へ視線。終盤、俺は短く「合図→止まる」。
イツキは「交代=白点」。
ログ(小雨まとめ)
正確度:逸脱0.4%(カイ)/0%(イツキ)
再現性:小雨通算R-4
EP-1:達成(両者)
SY-肩:一度発生→修正✔
例外:E-12b成立×1、滲み→角(臨時)
ミレイユが一言。「目的=基準の維持、達成。臨時の影と角は掲示のメモに残す。常設は白点」
三ノ宮が短く付け足す。「名付け→圧縮は増やしすぎない」
—イツキは会釈して去る。速いけれど、急いではいない。
雨の音が細い連続音になって、足音と混ざらない。
◆廊下(二択)
屋内に戻ると、輪っかライトの丸が床に薄く揺れる。掲示板には小雨メモが一枚追加されていた。
胸の中にポコン……。
A:この学園で静かに暮らす / B:全力で勝ちにいく
「保留」
——今日は、基準>臨時を覚えた。少し待つ。照合する。採用は、明日の天気を見てからでいい。




