寮務面談
夕方。寮務室。輪っかライトは弱、窓の外は白っぽい。
カウンターの上に再選択カードと面談票が重なっている。紙は薄灰、端だけすこしざらつく。
奥で霧島さんが書類を整え、手前の椅子を示した。
「どうぞ」
「来ました」
楓が隣に座る。ルナは立ったまま、端末を胸の前に。
◆導入(何を決めるか)
霧島さんは短く整える。
「今日は一次面談。維持/変更/保留の理由を見る。帯(静音・交差)を言語化して、四問を通す」
胸の中にポコン……。
A:維持で押す / B:条件付きで変更を検討 / C:保留の理由を固める
「C。保留の理由を固めたい」
「では三行で」
「目的=安定の維持。手順=ALT-01の定着。評価=逸脱とR-の継続」
「四問は?」
「対象=自分、場所=居室、主体=寮監、時間=今月末まで」
霧島さんは頷く。
「通っている。楓さんは?」
楓は少しだけ息を吸ってから。
「変更寄り。協調Cを伸ばしたい」
◆帯の設計(部屋という現場)
霧島さんが面談票に線を引く。
「帯を三つ。静音帯/交差帯/運用外。短く置いて」
俺は紙に三行を書いた。
『静音帯:22:00–7:00(言葉最小/EP-1は1回のみ/小声)』
『交差帯:19:00–21:00(会話OK/支援+1は帯内の休憩のみ)』
『運用外:室内の視覚合図は禁止(干渉−1)』
楓は横に、協調Cの練習を週二回/30分と書き足した。合言葉は一つ、『合図→止まる』。
短く一回だけ。
「名付け→圧縮は増やしすぎない」ルナが小さく釘を刺す。
「言葉は短く、場所を選ぶ」
霧島さんが確認する。
「帯の違反は?」
胸の中にポコン……。
A:口頭注意 / B:カードに一行記録 / C:翌日に調整会
「B。カードに一行」
「理由」
「感情で増やさないため。言い切らず、短く残す」
「良い」
◆候補との顔合わせ(短い視線)
ドアが静かに開く。長谷と真白が入ってきて、軽く会釈。机の反対側に座る。
「候補の二人に、帯を簡単に共有して」霧島さん。
俺は紙をずらして見せる。楓が補足を短く言う。
「支援は休憩帯。運用中の声・指サインは干渉」
真白が素直にうなずく。
「帯の中でやる」
長谷が手を挙げる。
「EP-1は部屋でも要る?」
胸の中にポコン……。
A:交差帯に一回だけ / B:室内は不要
「A。交差帯に一回」
「合図→止まるで良い」ルナが即答。「短く/被らないを守る」
「了解」長谷。
◆ミニ演習(部屋版EP-1)
霧島さんが机上の砂時計をくるりと回した。
「部屋版EP-1を10秒で置いてみて」
俺:「静音帯=言葉最小」
楓:「合図→止まる」
長谷:「支援は休憩帯」
真白:「視覚合図は禁止」
「十分」霧島さんは砂を止める。
「被りは共有扱い。次回は個別で置くこと」
◆面談メモ(決まったこと)
俺:一次は保留。帯を掲示し、カード一行で違反を記録。
楓:変更申請を継続。協調Cは週二回/30分。
長谷&真白:帯の受け入れ。部屋版EP-1は交差帯に一回。
共通:視覚合図は禁止。支援は休憩帯。名目干渉は−2。
霧島さんが最後に一行足す。
「中間確認:二週間後。ALT-01の運用と帯の相互影響を見る」
(β→1.0→ALT-01。いまは帯が加わった。混ぜない。線で切る)
◆廊下(短い余白)
面談が終わって、廊下に出る。掲示板の端に**『帯・掲示許可済』**の小さな紙が貼られる。
楓が伸びをして笑う。
「静音帯、守れるかな」
「胃評議会は、静音帯が苦手」
「それは分かる」
—遠くで足音。黒鐘イツキが掲示を一瞥して、会釈だけして去る。速度は速い。急いではいない。
いつもどおり。
◆二択(今日の結び)
寮の廊下を曲がるところで、胸の中にポコン……。
A:維持で行く / B:条件付きで変更を試す
「保留」——少し待つ→照合→採用。今日は帯を紙にした。それだけでも、心拍は一つ分、軽くなる。
窓の白が薄く落ちて、床の角に四角い影を作る。歩幅は二人分、少し遅れて一人分。
テンポはたん、たん、たん。明日も、同じ速度で。




