夜間補習
夜。中庭。輪っかライトはない。月は欠けて、光は薄い。地面は濃い灰の石。風は弱い。
芝の端に携帯ランタンが三つ、志水が並べて置く。ランタンの影が石畳に輪を作る。
白点の代わりに、細いチョークで小さな点が打たれた。
掲示は臨時板に移動している。
【夜間補習】
屋外での交互運用を確認。四問を先に言ってから開始。E-12bは有効。名目支援→干渉に注意。
「環境、説明」ミレイユ教官が短く整える。
「対象=使用者、場所=中庭の石畳・ランタンの影の縁、主体=監督者、時間=本セッション。
EP-1は一人一回」
「影、きれい」楓が覗き込む。
「影で代用は暫定」ルナが指で輪の縁をなぞる。
「白点が戻れば白点=基準に戻す」
(屋外、少しだけ心拍が上がる。暗さは味方にも敵にもなる)
—扉の音。黒鐘イツキが遅れて現れて、監督者へ会釈だけ。こちらは見ない。距離感は変わらない。
◆セットL(夜の初動)
合図。ピッ。
胸の中にポコン……。
A:反応→当て(軽) / B:当て→反応
「A。反応から」
——赤コーン、右。白、前。黄、左後ろ。腰だけ切ってタッチ。戻る。呼吸は四吸・二止・四吐。
肩は浮かない。
三分で当て(軽い)へ。ターゲットパッドは薄い×印。初期狙いは左上、三回目で中心。合図。
二拍静止。視線は影の縁。交代。
短く置く。
「交代=影の縁」——EP-1、済。
イツキは姿勢→反応→当て。終端近く、低く一言。
「合図→止まる」。
ログ(L)
正確度:逸脱0%(両者)
再現性:R-1(夜間通算)
EP-1:達成(両者)
SY-肩:発生なし
協調:該当なし
(夜でも、テンポは作れる)
◆風(場所の穴)
二本目の準備。風が一段だけ強くなって、ランタンの紐が揺れる。影の輪が波打つ。
「場所の穴」ルナが即座に分類。
「時間の穴→静止に似ているけど、今は輪の形が崩れる」
胸の中にポコン……。
A:影の中点を見る / B:足で固定線を作る(つま先で触れる)
「A。中点」
「理由」ミレイユ。
「縁が揺れるなら真ん中に寄せる。視線基準を輪の平均にする」
「OK。本セットのみで運用」
—合図。ピッ。反応→当て。交代。二拍静止は「中点」を見る。肩は浮かない。
イツキは縁が揺れても迷わず、中点に視線を落として止まる。テンポは保たれた。
ログ(風)
正確度:逸脱0.5%(カイ)/0%(イツキ)
補足:『場所の穴→中点』を夜限定で採用(臨時)
◆虫(光の乱れ)
三本目。ランタンに蛾が一匹、ふらり。光が一瞬、ちらつく。
胸の中にポコン……。
A:続ける / B:E-12bを適用(二拍静止)
「B。適用」——最後の明るさが安定してから二拍静止。視線は中点のまま。再開。テンポは崩れない。
「音じゃないけど?」楓が小声。
「時間の穴として扱える。主体=監督者が適用宣言すれば良い」ミレイユが短く補足する。
(“穴は静止で埋める”。夜でも同じ)
◆配置替え(影と白の逆)
四本目。ランタンの配置を左右反転。影の向きが逆になる。白いチョーク点は据え置き。
胸の中にポコン……。
A:影優先 / B:チョーク点優先
「B。チョーク優先」
「理由」
「白点=基準。影は暫定。基準が残っている場面は基準に戻す」
「OK」ルナが頷く。
—合図。ピッ。反応→当て。交代。二拍静止はチョーク点へ目線を戻す。肩が軽い。
夜の空気に、少しだけ余裕が出る。
ログ(配置替え)
正確度:逸脱0.4%(カイ)/0%(イツキ)
補足:『基準>暫定』の確認、済
◆協調と干渉(光の扱い)
休憩帯。楓が水とタオルを持ってくる。+1。
その横で、初等の真白が懐中電灯を取り出す。
「照らして支援は?」
胸の中にポコン……。
A:監督者のみ可 / B:使用者も可(条件付き)
「A。監督者のみ」
「理由」
「主体が二重になると干渉に寄る。光源はルールそのものに近い」
ミレイユがカードに追記する。
『光源=監督者専用。休憩帯での位置確認は可(+1)。運用中の照射は干渉−1』
真白が素直に懐中電灯を下げる。
「帯の中でやる」
◆セットM(仕上げ)
最後の一本。合図。ピッ。
「交代=白点」俺は短く置く。EP-1、回収。
イツキは終端で「時間の穴→静止」。
風は弱い。蛾はどこかへ行った。影は丸いまま。石畳の冷たさが、足裏の速度を一定にする。
ログ(M)
正確度:逸脱0.3%(カイ)/0%(イツキ)
再現性:夜間通算R-4
EP-1:達成(両者)
SY-肩:発生なし
協調:+1(休憩帯)/干渉0
ミレイユが締める。
「夜間補習:運用可。場所の穴→中点は臨時で掲示。常設は白点」
三ノ宮が横から一言。
「名付け→圧縮は増やしすぎない」
「了解」
◆帰路(二択)
片付けが終わると、中庭は静かになった。ランタンの灯りが順に落ちて、影が薄くなる。
チョーク点は小さく白い。
楓が伸びをして笑う。
「夜は胃評議会が静か」
「議長・舌先は就寝」
イツキは会釈だけして去る。速度は速いけれど、急いではいない。いつもどおり。
胸の中にポコン……。
A:この学園で静かに暮らす / B:全力で勝ちにいく
「保留」——夜は少し待つに合っている。白点は小さいけれど、見える。影も、使える。帰ろう。
たん、たん、たん。




