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選律の星環譜  作者: 刹那
21/67

夕刻小競り合い

夕方。実技室。輪っかライトは弱、白点はくっきり、影の輪も細い。掲示には評価カード1.0とE-12b。

今日の最後の交互枠、俺と黒鐘イツキで一本ずつ回して終わる予定。


「言葉は短く、手順は同じ」ルナが確認する。


「EP-1=一人一回」


「支援は休憩帯。干渉は−1」


志水が短音器を置き、ミレイユ教官が記録カード1.0を配る。見学席に楓。

廊下には、初等の同級生二人が顔を出している。手には自作のノート。名前は長谷と真白。



◆セットK(静かな一本)



合図。ピッ。


胸の中にポコン……。


A:反応→当て / B:当て→反応


「A。反応から」

——赤、右。白、前。黄、左後ろ。腰だけ切ってタッチ。戻る。呼吸は四吸・二止・四吐。

肩は浮かない。


三分で当て(軽い)へ。×の左上から入り、三回目で中心。合図。二拍静止。視線は白点。交代。


俺は短く置く。

「交代=白点」——EP-1、済。


イツキは姿勢→反応→当て。終端前に一言。

「合図→止まる」。


ログ(K)


正確度:逸脱0%(両者)


再現性:R-7(1.0通算)


EP-1:達成(両者)


SY-肩:発生なし


協調:該当なし


(静か。いい手触り)



◆きっかけ(“支援”の声)



次の枠は初等用の自由練。長谷と真白が黒円の外に立つ。

真白がメトロノームを手に、長谷がフォーム棒。


「始める?」


「始める」


合図のピッが鳴る直前、真白が小声で言った。

「今」


長谷の足が反射で動く。短音器のピッが重なって——動きがちぐはぐになる。


「いまの、支援のつもり」真白が言う。


「干渉だと思う」長谷が眉を寄せる。


空気が固くなった。小さな沈黙。


胸の中にポコン……。


A:口を出さない / B:四問から質問する / C:三ノ宮を呼ぶ


「B。四問から」


俺は二人に近づき、声を落とす。

「対象は誰? 場所は黒円上? 主体は? 時間はいつ?」


真白が少し考えた。

「対象=長谷。場所=黒円上。主体=わたし。時間=合図の前」


「合図の前」ルナが短く補う。

「主体が二重になってる。監督者とあなた。その時点で干渉寄り」


真白がむっとする。

「支援のつもりだった」


ミレイユが一歩進む。声は柔らかい。

「名目が支援でも、作用が干渉なら−2。ただし、初回は注意で運用できる」


長谷は視線を落として言う。

「次は、自分で合図を待つ」


真白が頷き、少しだけ肩を落とす。

「ごめん。休憩帯で言う」



◆小競り合い(線の上で)



二本目。今度は真白が黙ると宣言し、長谷が黒円に入る。合図。ピッ。動きは整う。

だが交代時、真白が指で空中に丸を描いてしまう。無言の合図。長谷が一瞬それを目で追う。


胸の中にポコン……。


A:見逃す / B:EP-1で言語化して線を置く


「B。言語化」


交代の二拍のあいだに、短く置く。

「合図=音。視線=白点」


ミレイユがうなずく。

「EP-1で線を共有。良い」


真白が自分の指を見て、丸をほどく。

「……これも干渉?」


ルナが整理して言う。

「視覚合図は上書きになりやすい。支援は休憩帯で。干渉の例として記録するけど、今回は注意」


長谷が小さく笑う。

「声より指の方がクセになる」


「クセは名付けると直る」ルナがペンを走らせる。

「丸描き干渉」


「名前、直球」楓が肩を震わせる。



◆共同処理(小さな修正)



三本目。二人の交代時、廊下の反射音がかすかにチン。E-12bの範囲だ。


胸の中にポコン……。


A:続ける / B:二拍静止を足す


長谷が「B」。真白も「B」。


二人は最後の音の終わりから二拍静止し、白点を見る。呼吸が合う。再開は滑らか。

さっきまでの固さが解ける。


ミレイユが小声でまとめる。

「時間の穴→静止。作用が支援に変わった」


真白が小さくガッツポーズ。

「支援は休憩帯/静止は運用中。分かった」



◆カードの端(追記)



志水が評価カード1.0の協調欄に小さく追記する。


支援+1(休憩帯):水渡し/タオル/合図の確認のみ


干渉−1:運用中の声掛け・視覚合図


名目干渉−2:支援を名目に上書き


三ノ宮が遅れて現れ、追記を確認。

「今日は注意扱い。明日からは減点運用」


真白が素直に頭を下げる。

「次は帯の中でやる」


長谷が笑って言う。

「休憩に全力」


「方向は正しい」



◆最後の一本(静かに締め)



最後にもう一度、俺とイツキで一本。合図。ピッ。反応→当て。

交代の二拍で、俺は短く「交代=白点」。イツキは終端で「時間の穴→静止」。数字は安定。

声は少ない。


ログ(夕刻まとめ)


正確度:カイ0.3%/イツキ0%


再現性:R-8(1.0通算)


EP-1:達成(両者)


協調:注意1件(運用中の視覚合図)→説明で転換


ミレイユが短く言う。

「線が引けた。今日はここまで」


—扉の外、夕方の風。廊下に薄い影。真白がメモに『休憩帯/運用中』と二本線を引いている。

長谷は棒をしまいながら「次は声を飲み込む」と笑った。


胸の中にポコン……。


A:この学園で静かに暮らす / B:全力で勝ちにいく


「保留」

——線が見えれば、歩ける。今日の速度は、それでちょうどいい。

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