お食事クエスト、再び
「パーティの用意ができました。皆さんテーブルへどうぞ」
いよいよ、船上パーティならぬクラゲパーティの始まりである。
細く長いリリーちゃんの触手を海に下ろして魚釣りをし、山菜やキノコなどを採りに山にも出かけた。とはいっても、少し目を離すとリガルドが思わぬ方向に勝手に迷い込んでしまうため、途中から山菜採りよりもリガルド探しをする羽目になったのだが。
そして案の定というべきか、マルセルの採ってきたキノコはそのどれもがとてもカラフルで綺麗であった。当然ながら毒キノコである。がっくりと肩を落とすマルセルであったが、観賞用としては悪くないと宥める一同である。
ともあれ、全部で魚が十五匹に木の実が数種類、食べられるキノコも籠いっぱいに収穫できた。その他付け合わせや香りづけに使えそうな香草や葉物がいくつかと、なかなかの量である。
「お待たせーっ!さぁ、たくさん召し上がれ」
「わぁ!すごいごちそうね。魚料理だけで三品も!シュタルトったら材料も限られてるのに、よくこんなに色々作れたわね」
「お前、もう立派な料理人じゃないか。驚いたな」
テーブルに並べられた食欲をそそる料理たち。
立ち上る香りの中には、デアルタの家庭料理によく使われるちょっぴりピリッとする香辛料の香りも混ざっている。
「実はちょっと拝借したんだ。あそこから」
シュタルトが指さしたのは、一軒の山小屋である。それは狩猟時期に使われる小屋で、あたたかな飲み物などを用意できるよう小さなキッチンが備えられている。
なるほど、と苦笑するマチアルド。無断借用ではあるが、あの狩猟小屋は確か貴族たちが使用しているはずだから、今度謝罪代わりにこっそり補充しておけばいいだろう。
「まぁ、私たち皆大地の未来を救ったんだもの。それくらい許してもらいましょ。じゃあ、冷めないうちにいただきましょうか!」
「そうだな。ではさっそく!」
テーブルいっぱいの料理に次々と上がる歓声と、驚きの声。
どれも素材の味を存分に生かしつつ、拝借した調味料をうまく組み合わせてあり、皆驚きの声を上げた。この国随一と言われる王宮の料理長の料理に慣れているはずのマチアルドでさえ、心の底からおいしいと感じた。幼馴染みで子どもの頃からなんでも知っていると思っていたはずが、まさかこんなに料理の才能があったとは!と驚きを隠せないマチアルドである。
「いやぁ、お前本当にすごいよ。どれもこんなにおいしいなんて、本当に料理の道へ進ん……ん?これは?」
だがやはり、シュタルトはシュタルトである。おいしそうな、いや実際においしい料理の中に交じって、シュタルトらしさがいかんなく発揮されていた一品があった。
「……どこかで見たような?ちょっと待って、これってまさかあの」
「おい。俺、ちょっとこれだけは……」
料理を前に、固まるマチアルドとラルフィル。
その隣では、おいしそうにむしゃむしゃとそれを食すリガルドがいる。
見た目は山菜である。ただし特大サイズの。太さは大人の腕ほどで、縦に通った繊維を食べやすいようにそぎ切りにしてソテーしてある。
見た目はおいしそうではある。だが、どうしても二人には#あれ__・__#に見えるのだが。
「ん?つるだよ。うまいから一度食べてみなって!大丈夫、それは襲ってきたやつじゃなくて、浄化されたあとに地面に倒れ込んでたやつだから」
――その何が大丈夫なのよ。浄化されれば普通の植物に戻るってわけでもないんだから、浄化前だろうと後だろうと化け物に違いないでしょうが!
「やっぱり持って帰ってきてたんだな……。シュタルトならやりかねないとは思ってたけど、まさかこの場で出してくるとは。他の料理はどれもおいしいんだが、これだけはやはり……」
明らかに、襲ってきたものと同類のつるである。シュタルトもリガルドも、そのつたをおいしそうに次々と平らげていく。
それを横目で見ながら、他の料理を黙々と口に運び続けるマチアルドとラルフィルであった。
「俺さ、決めたんだ!世界のあちこちを旅して、未知の食材とか絶滅しそうな生き物とか探しに行こうと思うんだ。それを使ってさ、誰も見たこともない食べたことのないような、でもおいしいって言ってもらえるような料理を作るんだ!」
生き生きと目を輝かせて、夢を語るシュタルト。
マチアルドは、幼馴染みのこれまで見たことのないようなやる気に満ちた様子にちょっぴり寂しさを感じつつも、自分もシュタルトももうそれぞれの生きる場所へと旅立つ時なのかもしれないと思う。
「それがお前の楽しい人生か。いいな、そういう生き方も。まぁ、つるだけは俺は勘弁だけどな。応援するよ。いつかまた、リスデールにも遊びに来いよ。あらためてあちこち案内するよ。リスデールもデアルタに負けないくらいいい国だからな!」
ラルフィルの力強い応援に、シュタルトは破願する。
――私も頑張らなくちゃね。シュタルトに負けていられないし。デアルタをどこよりもいい国にして、今よりももっともっと産業も発展させて、国民みんなが幸せに安心して暮らせるようにしていかなくっちゃ!




