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リスデールへまいりましょう



 リガルド探しの申し出に、ティリアは身を乗り出して目を輝かせた。


「よろしいのですか?もしそうしていただけるのなら、私……とっても嬉しいですわ。どうしてもあの方に会いたいのです。会って気持ちをはっきりさせて、すっきりとした気持ちで浄化の力を取り戻したいのです。どうぞ一緒にリスデールへ行ってくださいませ、皆様」


 ティリアは両手を胸の前で握り合わせて、今にも零れ落ちそうな涙を目にいっぱいためて喜びの表情を浮かべている。


「私の師匠でもありますからね。一応連帯責任ということで、私もお力添えいたします。というか、いい年して迷子とか、本当にあの人は……」


 大きなため息とともに力なく首を振るラルフィルを、同情の入り混じった顔で見るマチアルドたち。


「行く行く!もちろん行くよ。おもしろそうだし、俺デアルタ出たことないし、クラゲで空を旅するなんて、最高だよ」


 弾んだ声で、嬉しそうに顔を輝かせるシュタルト。


「世界の一大事ですもの。私たちにできることがあるのなら、喜んでお手伝いさせていただきますわ。恋愛ごとの相談は私たちではお役に立てないかもしれませんけれど……。でもこのクラゲ、……リリーちゃんといいましたわね。どのくらいの速度で飛ぶの?あまり速いのは私ちょっと……」


 幸いドームの中にいる限りは、空高くに自分がいることを感じずには済むのではあるが。もしこれが猛スピードで飛ぶようなら、ちょっと考えなければならない。高い上に速いなど、恐怖だ。


 ちなみにリリーちゃんは今はゆっくりと空中を浮遊しているだけで、同じ場所にずっととどまっている。でももしこれがここから遠く離れた隣国リスデールへと飛ぶと考えると……。


「あ、それは大丈夫です。リリーちゃんはご希望の速度で進むことができますので。もちろんゆっくりと進めば、それだけ移動に時間は要しますが。とはいっても、ほんの数時間ほどで着くはずですよ」


 マルセルの説明に、胸を撫でおろすマチアルド。シュタルトならきっと最速ノットで進め!とか言いそうであるが、そんなことは絶対にさせない。


「まさか、クラゲで自国に帰ることになるとはな……。でも、デアルタからリスデールまではどんなに馬を速く駆けても二日はかかるはずですが……。もしやリリーちゃんの上では、地上と時間の流れが異なるのですか?だとしたら助かるのですが……」


 ラルフィルは難しい顔をして考え込んでいる。

 確かに言われてみれば、いくら障害物のない空を行くにしても、リスデールはお隣の国である。そんなに早く着くとは考えにくい。

 

 それに、地上でどれほど騒ぎになっているのかと思うと、気が気ではない。すでに神殿からラルフィルが忽然と姿を消したことは、リスデールにも伝わっていることだろう。体感としては、ここに迷い込んでからもう長い時間が経過しているような気がする。

 何しろ隣国の要人、しかも三番目とはいえラルフィルは王位継承権を有しているのだ。同行していた大臣やターシャの責任問題になっていなければよいのだが……。


 マチアルドもまた同じ顔をして、マルセルに目をやる。

 視線を向けられたマルセルは、「あ、そういえばご説明がまだでしたね」と手のひらをポンと叩くと説明を始めた。


「そうですねぇ。地上でいうところの一日が、リリーちゃんの上ではおおよそ二日ほどでしょうか。ですので地上では今頃皆さんがリリーちゃんに運ばれてから二、三時間たった頃だと思いますが」


 その説明を聞いて、ほっとひとまず胸を撫でおろすマチアルドとラルフィル。


 やはりここと地上とでは時間の流れが多少異なるらしく、わずかではあるが地上の方が時間の流れがゆっくりであるらしい。もしまだ数時間しかたっていないのであれば、神殿では大混乱であろうが王宮にはまだ知らせが届いていないかもしれない。

 願ってもない朗報である。もちろん無事にティリアの力を取り戻して地上に戻るまでにはあとしばらくかかるだろうし、その頃にはリスデールへも知らせが届いているかもしれないが。


「なら、急ぎましょう。大地を守ってくれている精霊のピンチはこの世界、デアルタにとってもピンチだわ!」


 マチアルドはやる気をみなぎらせて、拳を握り締める。


「こうなったら迷子、いえ。リガルド様を見つけてさっさと神殿へ帰るわよ。いざ、リスデールへ出発!ただし、くれぐれも安全運転で」


 その頼もしい言葉に、ティリアも明るい表情で声を上げる。


「はい!皆さんどうぞよろしくお願いいたしますわ」

「私からもお願いいたします。快適な滞在をしていただけるよう、心を尽くして私もお仕えさせていただきます」


 マルセルも皆に向かい、うやうやしくお辞儀をする。


 シュタルトだけが「ちょっとくらいびゅーっと高速移動してもいいんじゃないかなぁ?おもしろそうだし……」などとぶつぶつ言っているが、完全無視である。


 皆の意見は一致した。 

 デアルタの次期女王マチアルドとリスデールの王位継承第三王子ラルフィル。マチアルドの従者シュタルト。そして大地の精霊ティリアとマルセルの一行は、空飛ぶ巨大なクラゲ、リリーちゃんに乗って、いざ隣国リスデールへと旅立つのであった。





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