人間
『最初から……こんな弱かったらもう…ダメだよね…』
蹲りながら泣いていた。
『ええー!最初はそんなもんだよー?俺も最初からこんなふうに戦えたわけじゃないしー』
『やっぱり私には無理な気がする…』
葵は手をギュッと力強く握った。
『でも…でもこの司令を終わらせないとこの能力は治らないん…だよ?』
犬太は人間のときのように軽い口調で葵を説得した。
『いいよ…能力を治さなくても人間でいられる…』
『いいの?治さないと…いつ記憶を失うかわからないよ?…』
犬の能力は、治さないといつか人間の血が勝り、犬のときの自分が消えて記憶を失う。酷い場合は死に至る。
『記憶失うのはやだ…。でもなんかもう怖くなっちゃった…』
透のあの顔を思い出すとまた戦うのは少し時間がかかる気がした。
『最初から透はちょっと難易度高かったかな?』
『え…?』
『順番は基本なんでもいいんだ。ここの方が近かったから透の戦いに挑んだ。じゃあ女性のボスのところ行く?』
『女性でも…強いよね?』
『透よりは弱いけど普通に強いと思う。女性にしては。でも緊張しなくていい。相手は根が優しいから助けてくれるだろ』
『そっか…じゃあ、戦おうかな。』
『うん…ってもう夜じゃん!お腹空いた?一緒にご飯探しに行く?…って葵お腹痛いんだよね…ごめんごめん!俺が探しに行くよ。今だけ犬の姿になって。人間に見つかる可能性がある。』
『わかった。』
葵と犬太は犬の姿になった。
『痛っ…』
『犬の姿になったら痛みが増すんだ。すまない』
『うん…頑張る…』
『じゃあ、行ってくる』
犬太は走って木の実を探していった。
数分後…
『!!!』
『お!犬がいるぞ!』
洞窟の入り口から男2人が顔を出した。1人の男性が手を伸ばして葵を抱っこした。
『(ど、どうしよう…)』
『すげー震えてる…迷子か?』
『持って帰ろうぜー』
『ワ、ワンワン…!ワン…!』
怖さのあまり力強く吠えることが出来なかった。
『おお〜。可愛いなぁ。』
『(もう…ダメだ…!)』
『ワンワン!!ヴヴァ…』
葵が諦めかけたその時、犬太が目つきを変えて男2人に吠えた。
『お、おお…こいつはでかい犬だな…。ほれほれ〜うちにくるか〜…?』
『ワンワン!!ヴヴヴ…!』
犬太は葵を抱っこしていた1人の男の足を噛んだ。
『痛っ!こいつ…!何すんだ…』
『犬のくせにいい度胸じゃねーか』
もう1人の男が犬太蹴り飛ばした。
『キャン…!』
『弱っちいなw さっきの威勢はどこだよ』
『ヴヴ……ワンワン!!』
犬太は立ち上がり1人の男性の足首を噛んだ。
『くっそ…離せ!』
男は足を振って犬太を離させようとした。
その時犬太は蹴り飛ばされ近くの岩に叩き落とされた。
『やっぱり弱いなww このワンちゃんは連れていくぜ』
『ワンワン!!ワンワン!!!』
次は葵が吠えて男性の腕を噛んだ。
『いってぇ!』
男性は葵を落とした。
『くっそ…生意気な犬だな…もう行くぞ』
男2人は山を降りていった。




