過去
『うわっ!雨降ってきちゃったじゃん…』
『洞窟見つけてよかったな…』
『ぎゅルルル…』
葵のお腹が鳴って犬太が視線を向けた。
『腹減ったのか?』
『…うん…』
『飯食って来なかったのか?』
『ご飯の時に来たんだもん!』
『しょうがないから俺が取ってきてやるよ』
『え、でも雨だし…』
『近場を少し探すだけだ。待ってろ』
犬太は走って行ってしまった。
『女の子1人残すなんて…犬疲れたぁ…』
葵は犬から人間の姿に戻し体育座りで壁に寄りかかった。
『あ、犬太お帰り』
犬太はきの実を咥えて持ってきてくれた。
『人間になってどうしたんだよ』
『犬疲れちゃった』
『バカ野郎w 移動だけは犬でいろよ』
『うん』
犬太も犬から人間に変わった。
『ふぅ。やっぱり人間の方がいいね』
『犬太って漢字すごいよね。』
葵は地面に『犬太』と漢字で書いた。
『だろ?けんたってたくさんいるけど、こんな漢字の名前少ないよな。俺の母さんが犬好きでさこの字にしたんだって。ガキだよなw』
『ううん。素敵だよ!私その字好きだなぁ』
『マジで?中3までずっとこの名前のことでいじめられてて正直この名前大嫌いだったんだけど…。初めてこの字好きって言ってもらった』
『ホント!?まって犬太いじめられてたの?』
『おう。「ダサい名前だな」って笑われて俺の筆箱とか靴とか砂に埋めて「犬なんだから穴掘って見つけろよ」って言われて放課後土だらけになりながら土掘った。俺がガチでムカついてて感情のあまり野生の力が出ちゃってそいつの腕を思いっきり噛んで骨折った時もあって…』
『ほ、骨!?!?』
『うん…。「いじめられたからやり返した」って言ったって誰も信じてくれないし。親も俺のこと攻めて行き場なくなって…この高校きて葵に会ったんだ。「なんかこの人とは友達になれそう」って直感で思った』
『犬同士w』
『だなw なんか話聞いてもらってばっかりで悪いなぁ…葵は?葵はなにかないの?』
犬太は土に葵と漢字で書いた。
『私?私は…平々凡々と人生送ってきたからないかな…。でも親友のお父さんがうちのお父さんのこと殺したって話しあるけど…』
『え、親友のお父さんが!?』
『うん…仲いい子でさ、その子のお父さんもお母さんもすごくいい人で人を殺すような人じゃないんだけど…よくわからないけどさ…』
葵は泣いていた。
『あ、葵…ごめん…なんか変な話して…』
先に口を開いたのは犬太だった。
『大丈夫だよ!…もう…大丈夫…』
『お父さんのこと大好きだったんだね』
『え…っ?』
図星だった。誰よりも可愛がってくれた父。暇があればいろんなところに連れていってくれた。たくさんのことを教えてくれて、どんな時もすぐに駆けつけてくれた。
『…よーし寝るか!朝起きたらすぐに出発だからねー!おやすみ〜』
『…え、あ、うん…おやすみ』
犬太は今の話をしてなかったかのように話題を変えてくれた。




