さみしい
夜中、葵が泣き出した。
『う…うぅ……』
犬太は隣で寝ている葵の背中を摩った。
『(…今日も仕事か…)』
『ごめんね…ごめんね…』
葵が犬太の心を読み取ったかのように謝りだした。
『謝らなくていいよ。辛いのはわかってるから』
犬太はギュッと葵を抱きしめた。
『…………』
『………ん?』
葵の顔を見ると寝ていた。
『(これからもっと酷いのかな……)』
犬太も少し不安があった。特に『八つ当たりをす』と言われたら少しだけ怖かった。
『(俺が支えなきゃ…)』
『せんせー?せーんーせー?』
『…!あ、ごめんね…』
気づけば20分休みだった。犬太は寝ていたらしい。
『先生、眠いの?』
子どもたちが心配な顔で犬太を見た。
『ううん!元気!よーっし!外で先生と鬼ごっこする人ー!』
犬太はイスから立ち上がって手を挙げた。
『はーい!はーいはーい!』
子どもたちは元気よく手を挙げた。
『ただいま…』
犬太はリビングに行くとソファにダイブした。
『おかえり〜って元気ないね?どうかした?』
『疲れた…。今日は俺ご飯いいや…。もう寝る』
『そっか…。お疲れ様。』
犬太は着替えると寝室に行ってしまった。
『(犬太も…お疲れなんだよね)』
バタッ
『葵…?』
休日の朝、キッチンで葵が急に倒れた。
『葵!?大丈夫!?』
『うん…最近、なんか頭クラクラして……』
『それ病院行った方がいいんじゃ…』
犬太は葵をゆっくり起き上がらせるとソファに座らせた。
『お医者さんに「妊娠中はそうですよ」って言われちゃったから…。妊婦さんはみんなそうなんだよ…』
『今日はゆっくりしてて…いっつも家事してもらってて悪いし…』
『それは私の仕事だもん。犬太こそ今日、おやすみなんだからゆっくりして…私は大丈夫だから』
葵は洗面台へ歩き出すと犬太は葵の手を掴んだ。
『葵は…お腹に赤ちゃんいるんだから安静にしてなきゃ…』
『でも…お仕事で疲れてるでしょ……?』
『俺、明日やすみだから。1日くらい平気。1日奥さんになる!』
犬太は笑って葵のエプロンを脱がすと自分につけた。
『いつも葵がしてくれること俺がするから』
犬太はそう言うと洗面台に向かって洗濯カゴを持つと庭に行き、干しだした。
葵はぼーっと犬太の働く姿を見た。
『(やっぱりカッコイイなぁ…)』
『よーっし!終わったぁ…後は…』
犬太は辺りを見回すと思いついたように掃除機を持ってきて掃除をした。
『(意外と掃除機って重いし動かすの大変だな…。葵いっつもこんなのしてるのか…)』
犬太が持っても重いし、動かすのも大変なのを葵が毎日してると思うと犬太は葵のことを感心した。
『次は…あっ』
『え…?』
犬太は葵と目を合わせるとキッチンに向かっていき、棚にあるミルクティーのティーパックを取り出した。
『(葵はコーヒーが苦手なんだよな…)』
犬太はティーカップにミルクティーのティーパックを入れてお湯を入れた。
そして浸し、砂糖と牛乳を持って葵のところに行った。
『いつも葵は俺にお茶くれるよな?』
犬太は笑って葵に『はい』とミルクティーをあげた。
『……ありがとう』
葵は嬉しさのあまり泣いてしまった。
『ええ!?ごめん!ミルクティーきらいだったっけ…?』
『違う…嬉しいの…』
葵がなぜこんなに泣いているのか犬太はわかった。
『(いつも1人だったのか…)』
全部1人でやって作って、1人で飲んで食べて、喋ってもお腹の赤ちゃんに問いかけるくらいで葵は寂しかったのだ。
『毎週土曜日は俺が家事する。』
犬太が葵のことを見て言った。
『でも…』
『葵が嬉しいんだったら俺辛くても大変でも葵がしてくれたことする。』
『本当…?』
『うん。その方が葵も安心できるだろ?』
『なんでそんなに犬太は優しいの…!』
葵は子どものように泣くと犬太に抱きついた。
『これからは寂しい思いさせないように頑張るから。』
『うん…』




