事故〜2〜
目をまた開けた。
視界には見たことのない白色天井。少しだけ汚れている。体は相変わらず痛い。特に腹部が刃物で刺されたように痛い。
『あお…い…?』
その声にハッとして左を見た。
そこには犬太が座っていた。
『………けん』
『葵!!…本当にごめん……!』
犬太は深く頭を下げた。
『え…?』
『葵が誤解するようなことして辛い思いしてるのに…また車に轢かれたって聞いて俺…もうどうすればいいかわかんなくて…』
犬太は下唇を力強く噛んでいた。
『犬太は…悪くないよ……』
葵は包帯でぐるぐる巻きにされた手を動かして犬太の手を力なく握った。
『私が悪いんだよ…?自分で傷ついて、自分から出て行ってそれで…自分から………赤信号を…渡ったんだよ…』
葵は目にいっぱい涙を溜めて言った。
『あいつが…来なければこんなことにはならなかった……俺が代わりに謝るよ。本当にごめんな』
犬太が謝ると葵は起きた。
『葵…!まだ寝てなきゃダメだっ……』
犬太は葵を寝かせるように言った。
『……うぁっ…!』
葵はそのままバタンっとベッドに叩き落された。
『ほら…言っただろ…』
『……体が痺れて動かない…』
葵の体はプルプルと震えだした。
『大丈夫か…?』
犬太は葵の体を摩った。
『怖い……』
葵は突然泣き出した。
『どうしました!?』
見回りをしている看護師さんが葵のところを訪ねてきた。
それから2時間経っただろうか。
廊下に出された犬太は不安でいっぱいだった。
『犬太くん…?!』
葵の母が心配そうに犬太のことを呼んだ。
『葵は…どうしたの?』
『さっき起きたんですよ。葵が起き上がろうとしたら急にバタンってベッドに勢いよく横たわって体が痺れるって言って…今看てもらってるんです。』
『葵……死んじゃったら私……』
『えっ……?』
犬太はハッと目を見開き葵の母を見た。葵の母は両手で顔を抑えて悲しみに暮れていた。
『(葵がもし死んだら……?)』
葵がもし死んでしまったらと思うと犬太は寒気がした。
それからまた2時間。
『先生…!』
病室から先生が出てきた。
『葵さんは大丈夫ですよ。心が少し不安定だったんだと思われます。交通事故に合った悲しみや…なにかを悔やんでいるのかと…。今は眠っていますよ。もう面会時間は終了なので気をつけてお帰りください』
病院の先生と看護師さんは頭を下げると行ってしまった。
『はい…ありがとうございます。』
『犬太くん。ありがとうね。』
『俺…ですか?』
『うん。葵ね犬太くんのこと本当に大好きみたいなの。』
葵の母は歩き出して話を進めた。
『今年の夏は犬太とお祭りとかプールとか海行きたいなぁって言ってた。初恋が犬太でよかったとも言ってたわ。今がすごい幸せって』
『……』
犬太は黙って葵の母の話を聞くしかなかった。
病院を出た時、葵の母は足を止めて犬太のことを見た。
『だから葵のこと大切にして欲しいの。葵も犬太くんのこと大切にするはず。』
葵の母は犬太の目をしっかり見て言った。
『はい。もちろんです。僕も葵のこと大好きです。世界で1番大好きです。必ず彼女を幸せにします。』
犬太はニコッと笑って葵の母を見て宣言した。
『ありがとうね…!私、家こっちだから気をつけてね』
葵の母は手を振っていってしまった。
犬太はその背中を見守ると涙を流した。




