いじめ〜2〜
『葵、野球部のマネージャーって知らなかった。野球のルールとかわかるの?』
『私、中学のときはソフトボールやってたの。だから大体のルールはわかるよ。夏はほとんど練習とか試合とか大会と…それに甲子園もあるからね…』
『マネージャーとか大変そう…』
犬太は苦笑を浮かべた。
『でも1番大変なのは野球部の人だから…。頑張ってプレーしてる姿がすごい眩しくてさ…』
葵は目を輝かせながら言った。
『……ふーん』
犬太はそっぽを向いた。
『……犬太は部活入らないの?』
『俺、葵が「野球部がプレーしてる姿眩しい」って言うなら野球部入る…』
『え…?』
『野球部の人…羨ましいなぁ。葵と一緒に試合行ったり飲み物もらえたり…』
犬太が『いいなぁー』と呟いた。
『……「野球部がプレーしてる姿眩しい」って言ったけど1番私が好きなのは犬太だし……あっ』
その途端、葵の心はなぜか悲しい気持ちに襲われた。
『ん?どうした…?』
犬太が葵の顔を伺った。
『………ごめん…えっと…』
女の子たちに言われた言葉が蘇り胸に刺さる。
『葵、大丈夫?顔色悪いぞ?』
『大…丈夫。』
葵は昔から顔に出てしまう性格でなかなか隠すことができなかった。
『全然大丈夫じゃない。葵なんかあった?』
『え…な、なにもないよ…?』
『葵、お願いだから溜め込まないで。話は全部聞くから。』
『ダメだよ……』
『……!!』
犬太が葵の顔を見たときは葵は大粒の涙を大量に零していた。
犬太は思わず足を止めて葵の背に合うようにしゃがんだ。
『葵?どうした?』
『言ったら…私…ダメなの…』
葵は『ヒクッヒクッ』と息を殺しながら言った。
『なんで?なにか酷いことされた?』
『言っちゃったら………殺される…』
『え……』
さきほど、部室で葵の携帯から『さっきのこと他の人に言ったらあんたのことぶっ殺すから。絶対に言うなよ』という嫌がらせが送られてきた。
『言ったら…ダメ…』
葵は号泣するレベルだった。ちょうど歩いていた道が人通りが少なかったため安心できたが葵がずっと泣くのは変わらなかった。
『(葵がこんなに泣くほど嫌なこと誰かしたのか…)』
『葵、大丈夫。誰に殺すって言われた?』
『怖い…!』
葵は号泣を通り越して霊が乗り移ったように『怖い』と言い始めた。
『葵!!俺のことを見ろ!!』
犬太は葵の頬を両手で抑え顔を上げた。葵は泣き疲れたようのか息を切らして黙って犬太のことを見つめた。
『大丈夫。部活行く前のこと全部話して。』
犬太は真剣な目で葵のことを見つめ返した。




