存在
夜11時
『ふぁぁ…眠い…』
『眠いのか?』
『うん…それに疲れた…』
犬太は足を止めて周りを見回した。
『こっちだ』
犬太は走っていった。
『あ、待って…』
葵も走って犬太について行った。
そこにはまた見知らぬ路地裏があった。
『ここで寝るか…』
ゴミ袋がたくさんあるところを見て犬太は言った。
『葵はそこで寝ていいぞ。俺は地面でいい。』
犬太はもふもふしているところを葵に寝かせようとした。
『え、でも…』
『葵、疲れてんだろ?俺はまだまだ大丈夫。だからそこで寝ていい。』
『……ありがとう…』
葵は素直にそこに寝て一夜を過ごした。
『んー…』
朝起きると犬太は寝ていた。幸せそうに。
葵は人間の姿に戻ると犬太のことを撫でた。
『お疲れ様…』
『…あ……葵…』
『おはよう!』
『おはよう…』
『一緒にお買い物しない?』
『金ないだろ…。それに人間の状態で外を歩くのは危険だ。今葵の親は警察に葵を探すようにお願いをしている。葵が見つかれば危険だ。』
『犬太の親御さんは…?』
その途端犬太はハッとして視線を落とした。
『俺に親なんていない。捨てられた』
『え…?』
『小さい頃、両親は離婚してどっちも俺のことを引き取ってはくれなかった。それから婆ちゃんに引き取ってもらってたけど婆ちゃんも年寄りで俺のことを大切には育ててくれなかった。だから逃げ出してきたんだ』
『そうだったんだ…。でもお婆ちゃんもさすがに犬太のこと探すよ…』
『俺のことなんか誰も探さないよ。もういらない存在でいいんだ』
『私は犬太がいなきゃダメ!!』
『えっ』
『犬太は私にとっていなきゃいけない……存在…なの…』
最後は恥ずかしくなって言葉が消されかけていた。
『…………なにそれ…初めて言われた…』
ドキドキしながら犬太の顔を伺うとまた顔が赤くなっていた。
『ご、ごめん…』
『いや、嬉しかった…ありがとう……』
葵は恥ずかしさのピークに達していて顔が赤く染まっていった。
『はぁー暑いな…。もうそろそろ行くか』
『うん…』
葵と犬太はまた歩きだした




