表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/27

人類が最強

 誰かの『おかげ』で泣ける人間になろう。

 俺の『せい』で誰かを泣かせないようにしよう。


 たった二つのプライド。

 今まで矜持に反しないように行動してきた。

 だけど、それでも無理なときはやっぱりある。


 そんな時どうしたらいいのか。

 それをティアが行動で示してくれた。


 誰かを頼ればいい。


 恥ずかしいと思うかもしれない。

 迷惑をかけてしまうと悩むかもしれない。


 だったらその分、いつか応えてやればいいとティアは盾になってくれた。


 盾に成れたら頼られる事も増えてくる。

 俺はティアに一分の時間稼ぎを頼った。


 それはとても辛い事だろう。

 とても苦しい事だろう。


 だったら、たえようとティアは勇ましく体を張ってくれた。


 それで全力を尽くして果てたなら、俺が支える。

 今度はティアが俺を頼ればいい。


 そうやって頼り、頼られ、たえて、応えて―――成り上がっていくんだ。


 どままでも高く、最強だって倒せるほどに。

 どこまでも遠く、限界だって超えるほどに。


 ティアの想いを受け継いだ。


 左にはグラム。

 右にはリセル。

 後ろにはフレイヤ。

 前には限界に到達した最強の魔王。


「最初は頼らせてくれっ!」


 《真紅》と《紅蓮》の激突で受けた致命傷。

 それを【再生】と【回復】で癒さなければならない。

 また頼ることになる。

 でも、確かに進んでいる。


「応よっ!」

「はい!!」

「うん!」


 答える声は三つ。


「限界は能力。最強は才能。先があるなら示せ―――我は数の上限」


 対する者は9999。


 武器は持っていない。

 されどそれは弱さの根拠にはならない。

 なぜなら彼の者は上限。


 腕を振るえば人が裂け、足を振るえば人が飛ぶ。

 殴れば崩れ、蹴れば壊れる。


 攻撃に些かの衰えは無く、防御にも僅かの綻びが無い。


 《紅染の重鎧》はありとあらゆる有象無象を『紅』に染め上げて均一化させる。

 打ち破るにはただ超えるしかない。


 先手はグラム。


「エリー、シャル。オレはいくぜ」


 いってらっしゃい。


 懐かしい声が背中を押してくれた気がした。

 振り返らない。


 向かうは家族の仇敵ではない。

 恨みはいらない。

 ここに置いていく。


 向かうは仲間の宿敵だ。

 宿すは諦めない心。

 胸に詰まっている。


「うらぁぁああ!!」


 《オルクスの破槌》


 魔龍の槌が魔王へ使われる。

 男十人分の質量体をグラムは自在に扱う。


 遠心力を乗せた一撃は破槌の名に相応しいエネルギーを持つ。


「くっらええー!!」


 だが。

 グラムの体重も乗った一撃は、魔王の片手で軽々と掴まれた。

 一歩も動かず。動かせず。


 魔王が手を閉じる。

 野球ボールの感触を確かめるような気軽さで《オルクスの破槌》を無残に握り潰す。

 この絶大な能力こそ魔王。


 手足が伝説武器を上回る。

 その身は伝説を越える生きた頂点。


 彼我の差に笑ってしまいそうだ。

 諦めてしまいそうだ。


 だがよ! いまなら行ける気がするんだよな!


 この瞬間、世界を覆う魔気は《赤尖塔》へと寄っている。


 壊れたのならまた生み出すしかない。

 開いたのならまた塞ぐしかない。


 《オルクスの破槌》


 ―――っ!?


 いつもと違う。

 重い。


 伝説と呼ばれる程の過去を保存し呼び出す『魔法空間』。

 であるなら五年前なんて過去ですらない。

 それは現在とすら言えるほど近い距離。


 男十人分に、あと家族二人分が合わさる。

 想いは現在に重なる。


「いっくぞぉぉおお!!」


 それは最高で最硬の一撃。

 詰めるだけの想いをすべて乗せた重量体が再び振るわれる。


 魔王は一合前と同じ。

 足掻きに対して手を降す。


「むっ―――」


 しかし同じ攻撃であったはずなのに、腕が押された。

 剛速球を受けたキャッチャーミットのような重さが伝わってきた。

 だが所詮それだけ。


 魔王の強靭な力が発揮されて《オルクスの破槌》は壊される。


 壊れたら。


「また生み出せばいいだけだろうがぁっ!!」


 《オルクスの破槌》


「重層の挑戦者よ。我は最上層より人を臨む頂点。示せ―――想いの高を」


 言葉通り魔王は挑戦者であるグラムに体を向かる。

 その背後。


「【イフリト】!!」

「む―――」


 獄炎を纏う剣が襲って来る。

 完璧なバックアタック。

 されど受けるは赤の魔王。

 焼け石に火でしかない。


「私は生きたいっ!」


 『姫と勇者様』。

 称号が『姫』であることもあり大好きな絵本。

 自己を重ねて投影もした。

 だけど、どうしても逃亡時で想いがすれ違う。


「守られる『姫』じゃない! 私は剣を持ち戦う『姫』なのっ!!」


 一緒に、隣に並んで立ち向かう。

 それこそが冒険者であり姫であるリセル・ヴェルホロウの願い。


(マコト君とまたお出かけしたい。また一緒に買い物がしたい)


 恋する少女は燃え上がる。


(一緒に生きてくれって言ってくれた!)


 ならこれは愛だ。

 好意は愛情へと成り上がる。


 【炎の魔法―――違う。


 胸を焦がす想いは決して炎なんてものじゃない。


 【紅の魔法】【獄炎】


 《イフリトの剣》の纏う獄炎が紅に染まる。

 再び剣を振る。

 結果は繰り返しじゃない。


 焼け石を溶かせと、紅に熱する。


「私も一緒に生きたいっ!!」


 邪魔する障害物は愛で燃やせ。

 恋する乙女はどこまでも燃え上がる。


「恋慕の挑戦者よ。我は孤独より人を妬く魔王。示せ―――繋がりの幅を」


 魔王がリセルを敵と定める。

 グラムを右手で、リセルを左で払う。


 その胴は開いている。


「「フレイヤ(ちゃん)!!」」

「はい!!」

「「頼んだっ(お願いっ)」」


「―――任せてください」


 《嵐精の杖》


 もう頼りきりだと塞ぎこむ必要は無い。

 たえる時間はとっくに終わった。

 応える時間がさっさと来たのだ。


(私は誓いました。ずっと傍にいると)


 故郷を失い、家を持つのが怖かった。

 また失うかもと震えて旅宿でしか暮らせなかった。


(でも姉さまがいてくれた。いつの間にか私は―――)


 アストの私物が消えことよりも部屋に心が揺さぶられた。


(家を手に入れていたんですね)


 安らぎ、皆が集まり笑い泣きする場所。


(帰るんです。帰りたいんですっ!)


 帰路を邪魔するは魔王。

 門を守る騎士。


 そんな障害は吹き飛ばしてしまえ。


 【翠の魔法】【風翠】


 頂上の間にある大気が渦巻き、竜巻が出現する。

 それは地に足を着ける者たちを持ち上げる魔法。


 魔王は自身を上方向に引っ張り上げる風にたえる。


「私は応えたいんですっ!」


 【風翠】の範囲は広間を上回る。

 いまも戦う二人や、回復している二人も効果範囲内だ。

 しかし仲間は吹き飛ばない。


(みんなと帰るんです!)


 魔法はイメージ。

 脳の神経が焼ける。

 それでも尚、《嵐精の杖》を手放さない。

 

(邪魔者は魔王だけです―――!!)


 一段と風力が増す。


「突破の挑戦者よ。我は関門より人を払う騎士。示せ―――帰り道の奥を」


 魔王が挑戦者と認める。

 前に立つべき敵であると。

 ならば吹き飛ばされる訳にはいかない。

 魔王の重量が増す。


 《オルクスの破槌》


「ぬぉぉおおっ!!!」


 想いを乗せた破槌は腕を押せた。

 なら、当てる方向を下から上にすれば、僅かであっても体を浮かせる事が出来る。


「これがオレ達のコンビネーションだっ!!!」

「むっ―――!」


 人型の魔王に羽はない。

 翼もない。

 ゆえに少しであっても地を離れてしまえば後は持ち上げられてしまう。


 手元に《紅蓮》や《真紅》があれば逆噴射の要領で対応できた。

 しかしそれは仮定の話だ。

 彼の存在は騎士をした正々堂々の魔王。


 魔王は浮かぶ。


「姉さま。協力してください!」

「もちろんよ、フレイヤ!」


 【翠の魔法】【風翠】

 【紅の魔法】【獄炎】


 空間を覆う風の嵐に炎が乗る。

 風の軌道に導かれて獄炎が走る。


 二人が応え合った奥義。

 それはどこまでだって一緒の攻撃。


「ぐっ―――!」


 グラムの攻撃が《紅染の重鎧》を叩き、浮かせた。

 リセルとフレイヤの攻撃が《紅染の重鎧》を燃え切り、浮かせた。


 それでも《紅染の重鎧》は破られない。

 無傷。


 0か1の【紅染】の魔法。

 9999以下は全て0となる。

 それはつまり絶対防御の最高の盾だ。


 一分。


「―――終わりだよ魔王」


 .........。

 ......。

 ...。


 俺は愛銃の《L96AWA》を構える。

 持つ腕はミイラのように細い。

 体に治療の跡はない。


 構えてトリガーを引ければ、それだけでいい。


 使用した魔法は腕の骨と神経、血管と皮の【再生】と【回復】だけ。

 あとは全部、一発の銃弾に込める。


 MPを全消費し、いま全回復した。

 全てを『銃』の効果で攻撃力に変換する。


 俺は人類でもっとも高いMPを持っている。

 それを一度空にした。

 満タンになるまで魔気を吸収した。


 魔力で生成された弾に込められたのは祈りであり願い。

 魔気には過去の深層意識も貯蔵されている。

 ダンジョンに挑み、散っていた過去の英雄や勇者の深く刻まれた想い。

 それら全てが時を越えて焼き付く。


 万感を込めて引き金をひく。


 発射と同時に甚大な高圧に負けた銃身が爆散した。

 銃口を飛び出した弾は強大な負荷に耐え切れずに崩れる。

 弾丸が無くなり、衝撃波だけが残る。


 ―――だが。


 やばい。ズレた!


 手に返った衝撃で悟った。

 このままでは外れる。


 だったら頼ればいい。


「フレイヤっ!!」

「はいっ!」


 【翠の魔法】【翠旋】


 衝撃波となった銃弾に【翠旋】は合わさり、行き先を修正する。


 まだ足りない。


「リセルっ!!」

「うんっ!」


 【紅の魔法】【獄炎】


 衝撃の竜巻に獄炎がまとわりついて攻撃力を上げる。


 あと少し。


「グラムっ!!」

「応ともっ!」


 【煤の魔法】【震衝】


 衝撃波を飛ばす魔法が、後ろから竜巻を押し上げる。


 最強がなんだ。

 限界がなんだ。


 そんなの通過点でしかない。

 俺達はどこまでだって成り上がっていく。


 高を、幅を、奥を、時を―――示せ。


 これは次元すらも飛んでいく一撃。


「―――見事」


 重なり合った衝撃波は《紅染の重鎧》を突き破る。

 0か1の【紅染】

 たった1でも上回れば崩壊する。


 所詮物体である《紅染の重鎧》は、1つ上の次元に負ける。

 全身鎧にヒビが走る。

 それは胸から始まり胴へ腕へ脚へ、そして頭部へ。


「―――天晴れ」


 崩れた頭部から最後に漏れたのは賛辞。


 魔王は身を包んでいた鎧を剥がされながら、衝撃波の勢いで上空へと吹き飛ばされていく。

 それはどこまでも高く。

 それはどこまでも強く。


 そしてついに―――。


 魔王は大鐘楼と激突する。

 もはや身に鎧はなく。

 あったのは魔気。


 聞こえる。

 それは間違いなく鐘の音だった。

 

 大鐘楼は揺れる。

 勝利の音は鳴り響き、魔気を震わせる。

 天の鐘から地平線を越えて世界へ届けられる。

 

 その音は今後こそ。


「―――俺達が鳴らしたんだっ!!」


 福音は世界へ答えた。






 称号を獲得しました。


 称号詳細説明

 名称『塔』

 効果:【赤の魔法】

 条件:赤の魔王に止めをさす。

 説明:限界突破の証

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ