冒険者ギルド
救助された翌日。
「とりあえず冒険者になれ」
しばらく休養することを決めて、その時間を使い、ギルドに行って来いと指示された。
すでに俺の肉体は【再生】済みで生活に不自由はない。
「オレ達と一緒に行くなら登録してこい」
これからグラム達と行動をともにすると決めた。
リセルに頼まれたのが理由の一つだ。
そもそも一人で旅をしようと決めたのはフレイヤとの条件があった。
強姦未遂を許す代価だ。
しかしフレイヤがリセルと和解し、強姦の件は解決した。
晴れて同行を許された。
というかお願いされた。
「失礼な事を言ってすみませんでした!」
「俺は気にしてないから」
「今度ともよろしくお願いします!」
そういう訳で現在、冒険者ギルドに来ている。
街の中央区に位置するギルド支部は一階がレンガ造りで二階と三階が木造だった。
「新規の冒険者登録申し込みですね?」
最近忙しいのか受付嬢の動きにキレがなかった。
女性や子供を見るとビクビクしている。
なにか女の子で怖い目にあったのかもしれない。
「こちらにご記入お願いします」
登録申請書に名前やLv、種族といった基本情報を書く。
ステータスの表記が「アスト」なので、そちらを記入する。
「申請書の受け付けで仮登録です。講習を受講して本登録となります。では申請書をお預かりします」
不備がない事を確認する。
「そうしましたら講習は二階の一番奥の部屋となります。そちらでお待ちください」
言われた通り二階にあがる。
コンコン、と扉を叩き、講習室に入る。
室内に人はいなかった。
簡易の机が椅子とセットで十組。
習性で後ろのほうに座る。
「講習を始めます」
他の新人は来ず、一人での受講となった。
指導員はプラチナブロンドのショート、眼鏡の奥には糸のように細い目。
インテリな雰囲気を纏っている。
「私は冒険者ギルドの職員ジャココと申します」
よろしくお願いします、と挨拶を交わす。
「では長々と前置きしても仕方ないので本題に入りますね」
仕事は淡々とこなすタイプのようだ。
「まず冒険者とは何か。それはダンジョンを攻略する者たちです。ではダンジョンとは何か。それは魔気の淀む場所に存在する魔物を産出する建造物です。だとしたら魔気とは何か。それは魔力が空気中に溶けているものです。だったら魔力とは何か。それは学者達の頭を悩ます力です」
オチはつまらなかった。
「世界にあるダンジョンは五つのみです。『黒城砦』『青浮島』『赤尖塔』『黄遺跡』『白坑道』」
歴史が生まれる前から存在する建造物。
誰が作ったのか。
この世界の人々はその問いに『神』だと答えをでっち上げた。
宗教としてダンジョンを敬い、同時に畏れる。
派閥などをひっくるめてダンジョン教と呼ばれている。
「冒険者はダンジョンの踏破を第一とします。そのため冒険者ギルドは五つ。全てダンジョンの最寄で交通の便が優れた都市にあります」
『黒城砦』のヒルベスタ支部。
『青浮島』のロザリオ支部。
『黄遺跡』のジルニトラ支部。
『白坑道』のサリサ支部。
「そしてここ『赤尖塔』の最寄都市であるオルニアンが最後となります」
各ダンジョンには特徴があり、難度も多少変わってくる。
でも。
「未だにダンジョンは踏破されておりません。たった一度も。有史以来です。つまりとても危険です。命の価値がパンに負けます」
パン欲しさに殺し合いが起こると脅す。
「覚悟の持ち込みが必須となります。では次に事務的な話に移ります」
冒険者は冒険者ギルドに対して税を支払う義務がある。
「一月に銀貨一枚。納税期日は毎月締めの二十八日。一年ですと十三枚になりますが一括での先払いなら十二枚で済みます」
一ヶ月は二十八日で、一年は十三ヶ月の三百六十四日。
前世とそう変わらない暦だ。
「これが一つ目の義務。もう一つが探索です。一月に一日分、二十四時間は潜らないといけません」
ダンジョンの魔物を狩らないと外に出てしまう。
定期的な討伐が求められるために設けられた義務だと説明してくれた。
「合計で二十四時間ですので、一日三時間を八日でも構いません」
探索で得た素材や鉱石は冒険者の物。
鉱石は掘ったパーティー。
魔物の素材は止めをさしたパーティー。
草木の素材は発見者と採取者の協議。基本は採取者優先。
「買取はギルドでも行っています。ですが強制ではありません。定期的に市場調査をして適正価格を出しておりますが特定の素材を高く買い取る方もいます。そちらに持ち込んでいただいても構いません」
ただし、ギルドで買取すると累計の量と金額で税の優遇をします。
と付け加える。
「ギルドでは依頼を受け付けております。冒険者ギルドですのでダンジョンに関係するモノのみとなります」
ダンジョン内の素材、鉱石の依頼。
外に逃げた魔物の討伐や、魔物からの護衛、危険な場所での諸行動。
腕っ節が必要な依頼が冒険者ギルドの受け持ちだとジャココはまとめる。
「次にパーティーです。ギルドはパーティーを断固として推奨しています!」
力説だった。
「強制できないのが口惜しい!」
ぐぎぎ、と歯軋りする様子をみるに、かなりマジらしい。
「先日、パニックベアにより複数の新人冒険者が亡くなりました」
あの一頭以外にもいたのか。
「決して他人事ではありません! いつなんどき不幸が降りかかってもおかしくないのです!」
心配する気持ちは本心だった。
第一印象のインテリの冷たい人を訂正する。
「ギルドは四人編成を強く勧めます。なぜかと問われれば武装魔法の登録が三つであるからと答えます。近距離、中距離、遠距離の物理攻撃を担当する三人が交代しながら戦い、支援魔法使いがサポートする」
この形がベストなんです、と熱の篭もった声で演説する。
ジャココは水を一口飲み、締めに入る。
「説明はこのぐらいですね。次はサインをしてもらいます」
上質な紙を配られる。
「そこに自身の名前を記入してください。その筆跡が証明となります。ダンジョンの入り口にはギルド職員がいますので、入る際はサインをして現時刻、終了予定時間、目的の階層などを記入してもらいます」
義務のチェック体制だ。
「言っておきますと、終了予定日時を過ぎた場合、余裕を持たせて侵入からの倍までギルドは待ちます」
一日に入り、終了予定が三日だとする。
三日を過ぎても戻らない場合、五日まで待つという事らしい。
「それでも戻らない場合ギルドが捜索依頼を出します。報奨金は税からの支払いとなります」
サインの他の利用を挙げると税の支払いやパーティー申請、依頼の受注報告時だ。
「重要な証明になりますので誰かに見せたり教えないようにしてください」
サラッと「アスト/マコト」と書き、紙を渡す。
「確かに受け取りました。これはギルドで管理させてもらいます。もし支部を移動する場合には紙を送ることになります」
ここ以外の四都市。
いつか行ってみたいので覚えておく。
「以上で講習は終了となります。一階の受付でギルド証を受け取ってお帰りください」
一階に降りて受付を訪ねるとドックタグのような金属のプレートを渡された。
名前と五桁の数字が刻まれていた。
それを首にかけておく。
これで晴れて冒険者となった。




