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番外編・ある騎士の話

あの時彼は……!!

今日は我がウェルネス王国の舞踏会の日。

隣国のクシャナ王国の王太子様が来ている為に開かれた歓迎会の様なものだな。


俺達みたいな一騎士でも貴族の子弟が多く、こういった場には参加する者もいる。しかし警備はせねばならないので誰かが…まぁ俺達みたいな下級貴族が仕事に就くのが暗黙の了解だ。

ちなみに俺はこんな集まりに魅力を感じないので特に不満はない。




俺は同僚と共にその扉を警護していた。

と言っても特にする事はなく、真面目な顔で立っているだけの面白味もない仕事だった。




…はずだった。









その試練は突然訪れた。




俺は廊下の向こうから若い男女がゆっくりとこちらに向かって来るのを認めて姿勢を改める。騎士と言う職業は見た目が大事なのだ。



前を向きながらチラリと視線をやると、なんとそこには俺達下級騎士達が恐れに恐れる王太子殿下の近衛隊長、アレクセイ様の姿があった。隣に居るのは可愛らしいご令嬢。

アレクセイ様はこういった場に現れる事は殆ど無いに等しい。王太子殿下の従兄弟と言う立場であり、強大な魔力保持者のアレクセイ様はその顔立ちも相まって若い女性の憧れの的だ。しかしアレクセイ様は群がる女性達に興味を見せられず、(…と言うよりいつもゴミを見る目で見られているが)大抵警護組に入られている。



その、アレクセイ様が、何故……。



俺は驚きを表情に出さないように気を付けて前を向く。

もしもアレクセイ様に見つかれば後でどんな目に遭うか分かりきっているからだ。

アレクセイ様の特別訓練と称した虐めで生ける屍になるのは全力で避けたい。

もうあんな思いは二度と御免だ!!!

平常心!!俺っ!!!



しかし俺の努力を嘲笑うかのような事態が起こり続けていた。

なんと、あの鉄壁のアレクセイ様が笑っているのだ!!

それも、いつも俺達を扱き倒す時の悪魔の笑いではなく、とても楽しげに笑い声を上げられているではないか……!!!



俺は素早く同僚に視線を移すと、同僚も同じくポカンとした表情で二人を凝視していた。

一体何が起こっているのだ…!?



いやいやいや、落ち着け俺!!

これは何かの罠に違いない!!!



俺は必死に顔面に意識を集中させる。

こんな事で負ける訳にはいかない!!



ところが無情にも事態は深刻化していく。

あの悪魔の様なアレクセイ様が女性に何かを囁いて(その姿はまるで紳士のようだ)、有ろう事かその美しく垂らされた銀の髪に口付けられたのだ!!



な、何だとぉぉぅ!?



アレクセイ様は頬を染めて恥じらう女性を満足気に眺め、最早顔面が崩壊した俺達をチラリと一瞥し(あ……死んだ)ドアを潜り抜けて行った。







その後の事は………思い出したくもない。










そして再び俺に試練が訪れたのは、またしてもクシャナ王国の王太子に関する舞踏会だった。

何度も言うが、俺はこう言う集まりに興味は無い。だから自然と仕事組になる訳だな。

それ自体は不満もない。むしろ大歓迎なのだ。



しかしこれは何だ!!

俺にどうしろと!?








前回同様、可愛らしいご令嬢を伴ったアレクセイ様が俺達の立つ扉の前までやって来た。

もう二度とあんな思いはしたくない俺は、遠目にそれを認めた瞬間に必死で無表情を装う。

負けるもんか!!

俺はやれば出来る男だ!!




しかしその決意を試すかのように、アレクセイ様は穏やかな笑みを浮かべてそのご令嬢をエスコートして歩いてくる。



そんな……


あの蕩けるような表情は何なのだ!?

まるで別人じゃないか!!!




見ては駄目だ。見ては駄目だと言い聞かせていたのに見てしまった自分を激しく後悔していると、俺に気付いたご令嬢が柔らかく微笑んで会釈をした。


う…可愛いじゃないか…。


そう思った瞬間、全身に感じる恐ろしい程の殺気。






お……終わった…。





その後の事は……




本当に思い出したくもない……。


こんな感じだった訳です。

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