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第53話  最後の選択


俺は・・・俺の部屋に居た。


部屋にあるはずのない黒電話が、ジリリリリリと鳴る。


俺は、電話を取り、耳に当てる。



「ツー・ツー・ツー」


切れている。



俺は受話器を電話に戻す。


それと同時に、またベルが鳴る。


ジリリリリリ


ジリリリリリ


ジリリリリリ


ジリリリリリ


ジリリリリリ


ジリリリリリ



俺は受話器を取る。



「そう、例えばキミ。一角十馬くん。キミはあの火事で、選択に対して後悔している。」

「私、あなたのことが大好きだよ。」

「殺さなきゃアタシが殺されてた!!それに罪悪感を感じるわけねぇだロ!!!!」

「私の名前は、ミラー、悪魔はリリス。願いは、この世からある人間の記録、記憶を消し去る事。」

「こんの・・・バカああああああああーーーーーーーーーーーー!!!」

「私の全てをあげる。それでも、貴方の罪悪感は消えないの?」

「見事。」

「俺は・・・やらなきゃ行けねぇんだ・・・!!この街に!!」




「そうだ。最後に生き残った一人が願いを叶える事ができる。」







・・・


・・・


・・・冷たい。


俺は、地面に、寝ていたようだ。


なにか、石で出来た地面に、寝転がっていた。


俺は、手を使い、体を起こし、起き上がる。





・・・手がある。右手も、左手も、足もだ。


学生服までもが、下ろし立てのように新品になっている。


そして・・・ここは・・・




そこは、部屋だった。四方が石で出来た。石には、細かい文様、文字のようなものが掘ってある。


その部屋はどこにも繋がっておらず、入口も出口もない。


その石の壁、石の天井、石の床は、ぼんやりと、緑に光を放っている。


だから、照明もないのに、窓もないのに、モノが見えるぐらいには明るい。


俺が立ち上がると、マスターメビウスが立っている事に気づいた。


今現れたのか、俺が気づかなかったのかはわからない。


いつもふわふわ浮いているアイツが、今は、地面に足をついて、立っている。


部屋の中心に向かって、何かをしている。


「ウェニアイスズ・フー・ウェイザ・・・」


何を言ってるかわからないが、何らかの呪文を唱えている。


すると、ゴリゴリと石の擦れる音が部屋全体から聞こえる。


なにか、何が起きる?


俺は身構えていると、部屋の壁、床、天井の一部が、せり上がってきた。


正方形の石が、せり上がり、不規則な段々を作っている。一瞬、押しつぶされるんじゃないかとビビってしまった。


そして、部屋の中心に、正方形の、台座のようなものが現れた。


その台座だけ正方形ではなく、真ん中に、穴・・・凹み?


お椀上の削れた部分があるから、なにか特別な意味があるのだろう。



マスターメビウスが俺の方を向いた。


「さぁ、私の体の中から、石を取れ。」


・・・


さぁ、じゃねぇんだよ。説明しろ説明を。


いや、おそらく、そのままの意味だろう。


俺は、マスターメビウスに手を伸ばす。


コイツは俺より身長が高い。俺が手を伸ばすと、自然に腹のあたりになる。


俺の手は、マスターメビウスの体の中に、服を貫通して、ズブズブと沈んでいく。


・・・気持ちが悪い。


「あんっ♥」


マスターメビウスが、ふざけて、声を出す。


「やめろ。」


「はっ、冗談だ。」


ざぶざぶと、体の中を探ると、確かに、なにかがある。


それを掴み、取り出すと、それは宝石だった。


てのひらにすっぽり収まるほどの大きさの、


いびつな、七色、七色の宝石。


癒着というか、融合というか、それは、一つになってはいるが、調和はしていない。


気味が悪い宝石だった。


「それを、あそこに置け。」


俺は指示通りに、コツン、と置いた。


すると、台座の正方形が、ゴリゴリと、上に登っていく。


石の台座は上に延び続け、天井に当たる。当たってもなお、動き続けている。


周りの突出した正方形の石の壁、石の床が、再び変形を始める。



「では、お前の願いを聞こうか。」


マスターメビウスが、上半身を横に倒し、俺の顔の前に入ってくる。


台座から延びた石以外は、全て引っ込んで、また始めの長方形の部屋に戻っていた。


「俺の願いは・・・」


マスターメビウスは、微笑んでいる。


ワクワクしながら、俺の言葉を待っているようだ。


「魔界の門を、封印することだ。」


俺がそう言うと、目を丸くして、驚いていた。


「へぇ。それはなぜだ?」


いつかのように、くるくると、俺の周りをスルスルと浮遊し、旋回する。


「世界を・・・人間の世界を守るためだ。」


「ふむふむ。お前の、最初の願い。罪悪感を消すことは、もう良いのか?」


「ああ。俺は、罪を犯した。人を殺した。その罪悪感から逃れることは、許されないことだ。」


「なるほど。」


「俺は俺のために願いを使わない。それが俺が、俺に下す、罰だ。」


「そうか。お前は、とても、社会的に、正しい価値観を持っているのだな。」


「そうだ。」


「それがお前の願い。なんだな。」


「ああ、そうだ。」


後ろに腕を組んで、くるくる飛び回るマスターメビウスが、俺の前で止まった。


そして、地面に足をついた。



俺は、その、地面につく足を見ていた。


その足が、前後に移動した。


そして、ギュッと、地面を踏みしめた。


俺はとっさに顔を上げる。


すると、さっきまで、ニコニコ微笑んでいたマスターメビウスが、


顔に血管を浮かせながら、


その右拳を振りかぶっていた。


瞬間、俺の左頬に、骨と骨がぶつかり響く衝撃が走る。



天井だ。俺の視界は一瞬で天井を見ていた。


そう。


おれは、


マスターメビウスに、


ぶん殴られた。


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