第5話 来訪者その①
朝、いつもなら自分でパンを焼き、朝ごはんを食べ、学校に行くところだが、
もはやそれどころではないので、行かないことにした。
悪魔が与える力・・・、それが何なのか、知る必要がある。
つっても、力とは一体なんなんだ?
悪魔と合体したが、今のところ、なにかが変わった気はしない。
さて・・・どうするか・・・
コンコン、 と部屋の扉を叩く音がする。
誰だ?今は・・・まだ朝の9時だ。
扉を開けると、AKが居た。俺はシャツと短パン。まさかAKだとは思わなかった。
AK「あなた、なぜ学校に来ないの?」
一十「ちょっとまって、服を来てくる。」
AK「上がらせてもらいます。」
有無を言わずに玄関に踏み込み、靴を脱ぎ、俺より先に部屋の中に入る。
俺の住んでるボロアパートは1LDK。六畳一間だ。
タンスも布団も机も一つの部屋にある。部屋が一つしか無いんだからそうなんだが。
AKはちゃぶ台の前にぴしゃりと座っている。
俺は学生服のズボンとカッターシャツを着た。同級生の女子に見られながら。
俺もちゃぶ台の前に座る。
一十「・・・お前こそ学校はどうしたんだよ。」
AK「貴方が来ていないこと、連絡がないことから、心配してきました。」
にしたって、早すぎるだろ。ホームルームが8:30で、1限目が9時で、学校から家まで30分で、
ってことはもう居ないと思った瞬間こっちに来たのか?
AKこと、霧島永15歳。同級生だが、20歳超えてんじゃねぇのか、ってぐらい見た目も精神も大人だ。。
俺は少し苦手だ。既に大人って所が。それともう一つ。
AK「私は貴方のことが好きです。何かあったのではないかと心配になるのは当然です。」
これだよ。本気で言ってるからな。
一十「前から聞きたかったが、俺の何が好きなんだ?」
AK「・・・」
AKは口に手を当て、考え込む。
AK「わかりません。」
一十「わかりません、って、そんな真っ直ぐな目で言うな。」
AK「理由があるから貴方に好意を寄せているのではないのです。理由無く、私は貴方が好きです。
人を人が好きになる理由は、突き詰めればこのようなものでしょう。
直感的に好きになった後で、好きな理由を作り上げる。それを好きになった理由と思い込むだけです。
私は、貴方と関わるうちに、気がついたら好きになっていたのです。」
本気だ。本気でコレを言ってるから怖い。
一十「それはそれで良いとして、俺はしばらく学校に行かねぇ。先生に言っといてくれ。」
AK「なぜですか?病気ですか?学校が嫌になったのですか?」
一十「俺の部屋に突然悪魔が現れてよ、人間同士の殺し合いに参加して、生き残ったら願いを叶えてくれるんだとよ。
俺はその戦いの準備があるから、学校にはしばらく行けねぇ。」
AK「わかりました。先生にはしばらく休校すると伝えておきます。」
一十「信じるのか?」
AK「信じます。先生は信じないだろうから適当に別の理由を考えておきます。」
一切茶化すことも疑問を挟むこともなく、真剣な目で俺を見ている。
圧倒され、俺のほうが折れるような気分になってくる。
一十「帰るのか?」
AKは、決められたような美しい所作で、美しい体重移動で正座を崩し、立ち上がる。俺はAKのこういう所は好きだ。
AK「はい。私に手伝える事があれば言ってください。何でも手伝います。」
一十「いや、コレは俺の問題だ。お前に手伝ってもらうことはないよ。」
AK「そうですか、では。」
そう言ってAKは部屋を出て、玄関で靴を履く。
ドアに手をかけた時、AKは一つだけ質問をした。
AK「貴方の叶えたい願いはなんですか?」
それは俺の魂に深く関わる事。それを理解した上で、聞いているのだろう。
AKの顔には、答えなくても当然、というような、少しの諦めが見えて取れた。
一十「俺の・・・過去に起きた事件の、罪悪感を消すことだ。」
俺は、AKの誠実さに対して、誠実に答えた。
すると、AKは悲しい顔をした。なぜ?と思ったが、それは、きっと、
この問題は自分ではどうにも出来ないことを理解したからだろう。
そうだ。これは俺が自分でなんとかするしか無いんだ。
誰にも救うことは出来ない。
AKはドアを閉めた。




