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第44話 七祭の目的


俺たちは家に帰ってきた。


正確にはののの家だ。


海底から光の柱に乗り、それを伸ばしで陸に届く。


そっからタクシー拾って帰ってきた。タクシー代は俺が払った。


毎回家に帰るのに苦労するから、5万ぐらい常に持っておくことにしたのが功を奏した。


そのタクシーの中で、とんでもないことを聞いた。


「ねぇ、魔界の穴って何?カロンが、悪魔と話してるのを聞いたんだ。


この戦いは、魔界の扉を開くための儀式だって。」


初耳だ。


一十「おい、マスターメビウス。どういうことだ。」


俺の体からニョキッとマスターメビウスが飛び出す。


挿絵(By みてみん)


メビウス「やぁ、のの。久しぶりだな。」


のの「久しぶり。」


一十「おい、魔界の穴ってなんだ。」


メビウス「この七祭はそのためのものだ。」


待て待て待て待て、聞いてないぞ。


メビウス「聞いてないぞ、みたいな顔をしているが、私は言ったぞ。」


いやいやいやいや、聞いてない聞いてない。


俺は顎に手を当て、振り返る。が、やはり聞いてない。


扉・・・鍵?


一十「・・・いや、お前、確か、なんか最初に、紫蘭と戦う時、なんか鍵がどうとか、言ってなかったか。」



メビウス「そう。言ったろう。この戦いは鍵を開けるための戦いだと。」



“新月。目の無い夜。星の降る下で、門の鍵を砕く為の戦い。


この世に地獄を流し込む。人の願いを叶えよう。悪魔の願いを叶えるために。


七つの悪魔と七つの人間。全ては呼吸の為に。七祭。始まります。”



マスターメビウスは、再び、あの時のセリフをタクシーの中で繰り返す。


・・・確かに。全部言っている。


あの時、俺は、戦う緊張感で、そこの意識が全く回らなかった。


が、今聞けば、本当に全部言っている。


俺は頭を抱える。


のの「どうして穴を開けたいの?」


メビウス「私は君のことが好きだ。だから答えよう。」


マスターメビウスは俺とののの間に座った。


メビウス「この世界は神が作った。神の世界。神の法則で満たされている。」


一十「前から思ってたんだけどよ、そもそもなんでこの世界を、人間を作ったんだ?

全知全能、何でも出来るなら、何もする意味は無いんじゃないか?

すべての結果が予測できて、すべての望み通りの結果を生み出せる。なら何もしなくても同じじゃないか?」


メビウス「神が何を考えているか、知るすべはないが、観測可能な客観的な事実を元に論理的に推察するならば、

答えは既に出ている。つまりは、神は、そうならないものを求めて、この世界を作った。」


のの「つまり、“予測不可能”を生み出すため。」


メビウス「そのとおりだ。ののよ。私はそう考えている。神は、神自身が予測不可能な何かを生み出すため、

神にすら予測不可能になる世界を作った。のだと思う。」


一十「・・・何のために?予測不可能、コントロールできないってことは、例えば、神に不利益な、まぁ神様に利益や不利益とか

あんのかどうか分からねぇけど、上手く行かない。ってことにもなるんじゃないか?」


メビウス「その通りだな。だが、それを認めたうえで、そうした。そうする必要があった。」


のの「・・・」


一十「・・・楽しいから?」


メビウス「はっ!・・・はは。案外、そんなものなのかもな。何もかも思い通りに行く存在が、自らの意思を離れたモノを産み出そうとするなんて。

おっと、話がそれたな。私が、私たちが魔界の穴を開けたい理由は、そうだな。

・・・息苦しいから。だ。」


一十「息苦しい?ここは聖なる世界だから、邪悪な悪魔は生きづらいとか?」


メビウス「ま、だいたい合ってる。この世界は神の法則で満たされている。聖なるかどうかは知らんがね。

その中で我々悪魔は、そうだな。蜂蜜の中で藻掻く蟻のようなモノだ。抵抗が強くて、自由に動けない。

全力を出せない。それは天使も同じだが、あっちのほうがずいぶん有利に動けるモノだ。

故に、魔界の・・・地獄、あの世、魔空間、虚無の空間、呼び名は様々だが、ま、どうでもいい。

我々の世界の法則をこの人間界に流し込み、蜂蜜を水で薄めるように、ちょっとは動きやすくしようじゃないか。という話だ。」


一十「魔界の法則・・・それが人間の世界に入ってきて、どうなる?何が起き得る?どんな影響が出る?」


メビウス「さぁ?知らないね。どーなるか、それこそ予測は不可能だ。」


一十「悪影響は?」


メビウス「知らないと言っただろう。お前は面白くない質問をするなぁ。」


のの「だから、その力、鍵を破壊する力を集めるために、この七祭を行っているのですね。

人間の願いを叶えるというのは本当ですか?・・・いや、本当なんだろうと思う。

だからこそ人は真剣に戦う。命をかけて戦う。だから、力が集まる。」


メビウス「のの。キミは頭がいいな。」



メビウスが俺の方をみた。


メビウス「一角十馬。キミは頭が悪いな。」


そう言って、マスターメビウスは俺の体の中に消えていった。


一十「・・・」


のの「・・・」


そして、ののの家についた。


タクシーの運転手は、全く、何も触れなかった。


マスターメビウスの魔法で見えなくなっていたのか、


それとも見えていたけど、幻覚だと思って何もみなかったことにしたのか。


俺は料金を払い、


ののをののの両親に渡し、帰ろうとすると、引き止められ、


風呂に入れられ、着替えをもらい、


ののの両親に感謝と説教をさんざんされた後、


やっと解放された。


そして、帰り際、俺がののの家の玄関を出た時、


ののは外の道にまで出てきて、俺の手を掴み、言った。


「・・・助けてくれて、ありがとう。」


「ああ。お前が無事で、良かったよ。」


「私、あなたのことが大好きだよ。」


「ああ。俺もお前が好きだ。」


「・・・がんばってね。死なないでね。」


「ああ。」


ののは手を離した。


・・・俺は、家に帰る為に、歩き出す。振り向くこと無く。















私は、ウソをついた。


本当は、もう戦ってほしくない。


戦うのはやめてほしい。


でも、嘘をついた。


それは私のため?一十のため?


誰のためのウソ?


どうして、がんばって、なんて言った?


それは、嘘だ。


私は、嘘をついた。


私は、無力だ。と思った。


一十、もうやめて、死んじゃう。その言葉じゃなく、


がんばって、だなんて。


私は、・・・大人になっちゃったのかな。


大人になってしまったのかな。


一十・・・。

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