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第43話 冷たい海の底で


あたしの眼の前に、突然柱が現れた。


ガラスのような、水晶のような、巨大な柱が、この海底に次々と現れた。


だが、これは攻撃じゃない。


アタシを狙ってるわけじゃあない。その柱は私の視界を埋め尽くした。


なるほどな、隠れ蓑だ。


「コソコソ隠れてヤるつもりだな!一角!」


返事はない。


柱は鏡のように私の姿を反射する。


挿絵(By みてみん)


柱に映る私は、ボロボロだった。胸の傷を焼き塞いだ痕。血だらけの腹。雷化するたびに焦げる服。


だが、これは弱さの結果じゃない。戦った結果だ。


私は、戦っている。



「アタシだって電気について勉強したんだ。だから、こーいう使い方も出来る!!」



私は、電気を、私の周りに発する。それは攻撃するための強い電気じゃない。


ほんの、撫でるような電圧。


その発した電気は、モノに当たれば跳ね返り、私の元に戻ってくる。


ソナー。本で読んだのだ。


・・・


見つけた。あいつは動いている。柱の陰を、コソコソと。


「そこだ!一角!!」


私は体を雷にする。柱の間を一瞬ですり抜ける。


その間、私は何も見えていない。早すぎて見えない。


だから私に見えるのは結果だけだ。


結果として、私は砕けた柱を見る。


「居ない!?」


かわされた?アタシが見誤った?どっちだ!?


後ろを見ると、一角が居た。海の壁の際に。


腕を組んで、防御の姿勢を取っている。


アタシは一瞬でアタシを雷化する。


この距離なら外さない。


「死ね!!一角!!!」


最大威力で雷キックを放つ。


アタシの右足は、一角の胸に突き刺さり、一角は砕け散った。


やった!!と思った。


勝った!!と思った。


が、次の瞬間、アタシは水の中に居た。


挿絵(By みてみん)


!?なんで!? 眼の前は泡だらけだ。私は反射的に、手足で水をかき分ける。


私は一角を突き抜けたのか?いや、おかしい。砕け散るなんて、おかしいんだ。


私は全力で飛び蹴りを放った結果、海の壁にツッコんで、深く深く“沈んで”しまった。


息が苦しい。落ち着け。


アレは・・・鏡だ。鏡に写った一角を攻撃したんだ。


私は海の中で頭を上げると、天地が逆さになって居ることに気づく。海底が頭の上にある。


そして、海の壁はすぐそこにあった。 ちょっと遠いけど、行けないことは無い。


アタシは息を止めながら、雷化しようとする。雷になって、さっさと水中からを飛び出そうと思ったからだ。


ガボン!と私の体の周りで泡が吹き出す。


「!?」


何が起きた?私はもう一度力を使う。


ボボンッ!とまた、泡が吹き出す。


「~~~~ッッッ!?」


挿絵(By みてみん)


どうなってる?なんで?水の中だから?電気は使えないのか?クソっ!聞いてないぞそんなの。


アタシは海の壁に向かって、泳ごうとする。が、前に進まない。


手足を動かしても、全然今いる場所から動かない。どうして。なぜ。


あと少し、すぐそこなのに。


その時、私は、何故かわかった。


私は、水泳の授業を、受けてない。学校に行ってないんだから。行かせてもらえなかったんだから。


それに気づいた時、私は、この世の全てから見捨てられたような、悲しさが胸から溢れてきた。


もがいても、もがいても、進まない。


息を止めるのも限界だ。


息が勝手に吐き出される。そして、勝手に吸い込む。


苦しい。息ができない。冷たい。痛い。


体が痙攣している。肺が、筋肉が。


助けて。死にたくない。私は、まだ、何も・・・



突然、周りが真っ赤になった。


それと同時に、全身から力が抜ける。


私は私の体を見ると、胸から下が真っ二つに切り離されていた。


不思議と、私から苦しみが消えていく。


海の壁を見ると、ぼやけているが、おそらく、一角十馬が立っていた。


挿絵(By みてみん)


ああ、そうか。私を楽にするために。


もう、何も痛くなかった。何も苦しくなかった。


ただ、冷たく、意識が流れ落ちていくような、爽やかさがあった。


「ありがとう。一角。」


・・・


・・・


・・・


私は、海の中で、夢を見た。優しいお母さんと、優しいお父さんが居て、一緒にご飯を食べている。


それだけの夢。


それだけ。たったそれだけだった。


私には、それだけが。


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