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第42話 雷キック


まったく、厄介な能力だ。雷。電気。エレキテル。


雷は避雷針で無効化出来る。


直接触れての電撃攻撃も、雷光を物質化することで、ダメージは受けるが、反撃できる。


が、何にしても電気という力の応用が広すぎる。


あんだけ深く刺した胸の傷も、どうやったのか塞いでいる。


俺はつばを飲み込む。理解ってる。俺は緊張している。


俺は、恐怖している。


怖いね。ああ。怖い。


恐ろしい相手だ。




カロンが、猫背になって、だらんと、両腕を垂らす。


来る。何かを仕掛けてくる。


何度も殺し合いをやってると、だんだんなんとなくわかるようになる。


俺は光の結晶で剣を作り、さらに、俺の周りに、ハリネズミのようにトゲを作った。


挿絵(By みてみん)


光の結晶で作る棘。


これは避雷針も兼ねた攻防一体の構え。


ピカッと光った。と思った瞬間には、俺の剣を持つ左から、凄まじい衝撃が全身に疾走る。


舐めていたわけじゃない、油断していたわけじゃない。あらゆる状況を想定して待ち構えていた。


が、そんな俺の備えを無視して、俺は吹っ飛んだ。


挿絵(By みてみん)


慣性の法則で、内臓が潰されて、凄まじい腹の底からの苦しさが襲う。


地面が近づいてくる。そして、俺に向かってぶつかり、視界がぐるぐる回る。


海底の茶色。海の壁の青。夜の空の黒。


俺の体は泥だらけになる。


視界も感覚も、何もかもがシェイクされ、ぐるぐる回った後、


やっと止まる。



俺はすぐに、無理をして立ち上がり、ぺっぺっっぺと泥を吐く。



「やるじゃねぇか。」


去勢を吐く。だが、このセリフを最後まで言い終わる前に、


今度は右側から凄まじい衝撃。


同じく吹っ飛んで、転がって、泥だらけになる。


「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」


全身の骨が軋む。どうなってる。雷(イカズチ)じゃない。


俺は攻撃された腕を見る。そこには、くっきりと、足跡がついていた。


黒の制服が、子どもの足跡の形に、焼け焦げている。


いや、どうやって、光の棘をすり抜けて攻撃してるんだ。それに攻撃の動きが全く見えねぇぞ。


海に空いた穴は、かなり広い。野球場・・・学校のグラウンドよりも広い。200メートル?300メートル?


逃げるには狭く、捕まえるには広い。


ののもいるから大袈裟な攻撃もできねぇ。


カロンは、かなり遠くにいる。


電撃なのか、何かを投げてるのか、いや、それなら棘の壁をすり抜ける理由がわからねぇ。


この謎の攻撃を理解しないと、俺は負ける。死ぬ。と思った。


また光る。と同時に背中から強い衝撃。


衝撃で肺から息を吐き出しながら、俺は再び地面にぶつかり、跳ね跳ぶ。


だが、3回目、受け身を取り、無様に倒れ込むのを避け、一回転し、膝をついて、顔を上げる。


ひゅー、ひゅーと、呼吸の音がおかしい。


3回もあんな威力の衝撃を受けたせいで、体の、内臓のどっかがイカれてるのかも知れない。


俺がふっとばされたのは、ののがいる場所の近くだ。


海の壁、のの、俺、カロン。海の壁、という位置関係にある。


「いちじゅー、いなづま!」


ののが、俺に、何かを叫ぶ。


いや、理解ってる。俺は雷を操る相手と戦ってんだ。


いや、・・・いや、まさか。


「のの、伏せてろ!」


俺はののに伏せるよう警告し、光の剣を再び作る。ありったけの力を込めて。


「なんだぁ、まだヤる気があるのか?」


カロンは、もう笑っていない。真剣な表情で、冷静な目で、俺を見ている。


「カロン。」


俺は名前だけを口にする。


その意味は俺にもわからない。ただ、名前だけが口から出た。



俺は光の剣を、横薙ぎに振るう。


光の剣は、一気に伸びる。


この海の穴全てに届くように。


光に重さはない。


だから俺が振るう速度は俺の力の最速。


そして、俺の回転半径から、離れれば離れるほど、剣の先の速度は上がる。


ふつーなら交わせない。範囲的にも、速度的にも。


だが、カロンはそれを“すりぬけ”俺の顔面を、おそらく、蹴った。


脳みそが、目が、骨が、鼻が、全て千切りとぶかのような衝撃。痛み。


首の骨が折れたんじゃないかと言うほど俺は首を曲げ、そのまま縦に回転し、


海の壁に叩きつけられる。


そのまま海中にまで回転しながら深く入り込む。頭を殴られ脳震盪を起こし、視界も感覚も、グルングルン回る。


ごばごばと、水の音がする。どっちが上かわからねぇ。


右目が見えない。おそらく今ので潰れたんだろう。


冷たい。冷たい海水がちょうどいい。


俺は海の中で光の剣を作る。海の壁があるから、光が届いている。


光を物質化し、剣にして、それを伸ばし、海底に引っ掛け、


西遊記の如意棒のように、うにょーんと伸ばして、俺は海の壁から飛び出す。


そう何度も溺れてたまるか。


ふはーーーーーーーっっと呼吸を再開する。


ある程度乾いてきた服が、またびしょ濡れだ。不愉快。


俺が海底へ着地すると、ののが俺が落とした帽子を持ってきた。


「あいつ、雷。雷みたいだった。」


「ああ、理解ってる。」


俺はののから帽子を受けとり、被り直すと、カロンの元へ歩く。


「カロン。理解ったぞ。お前のそれ。お前自信が、雷そのものになるんだろう。」


カロンはポケットに手を突っ込みながら答える。


「一角十馬、わかった所で、それを防ぐ手はお前にあんのか?ねぇだロ?


最速で、最強の攻撃。どーするよ、一角十馬。」



「ああ。お前は最強だよ。最強の力だ。だが、俺は勝つ。」


「やってみロ。」


カロンは、ハッ、とひと息だけ笑った。


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