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第40話 再雷

俺は光を物質化し、小さいナイフを作る。


「いちじゅー!」


「今切ってやるから、じっとしてろ。」


俺は跪き、足からののをぐるぐるまきにしているテープを切っていく。


ギコギコと、ののの体を傷つけないように気をつけながら。


「これ、いちじゅーがやったの?」


この海のことだろう。


「ああ。いや、うん?俺じゃなくて、悪魔のアモンが・・・いや、まぁ俺がやった。」


説明がめんどくさいから飛ばした。


しまった。喋りながら切っていたから、スカートまで切ってしまった。


テープに張り付いてるから、避けようがなかった。


今はそんなコト言ってる場合じゃないので無視してザクザク切っていく。


胸のあたりまで切込みを入れた後、


俺は左右の手を切り離すために、手と体の隙間を狙い、テープを切り離す。


右手が自由になったののは、自分でテープを剥がしていく。


俺はそれを助けるために、左手のテープに切れ込みを入れていく。


「寒い。冷たい。」


ののがそう零す。


確かに。夜の海で溺れて、髪も服も靴の中も、びしょ濡れだ。


バリバリとテープを剥がしていく。


「痛い。」


ののの皮膚からテープを剥がすと、ののがそう言った。


「生きてる証拠だ。」


「なにそれ。」


やっとテープが剥がし終わる。


ののは立ち上がり、ずぶ濡れの服を絞る。


髪の毛もだ。


制服も髪の毛も、体に張り付いている。


水に濡れた制服、スカートが、表面張力で、ぺたんと体の輪郭そのままの形になっている。


ののは小さい。が、いつもよりもさらに小さく見えた。


そう思いながら、俺も、帽子を取り、海水を絞る。



「お風呂入りたい。寒い。」


「たしかにな。」


体の中まで海水で冷たくなっている。


今まで興奮して、寒さをあまり感じていなかったが、落ち着いたことで、徐々に寒さを感じるようになっていた。


「ねぇ、お湯は出せないの?」


「ああ?」


「魔法の力で。」


「おれはヤカンじゃねぇんだ。」


「ふっ。おもしろくないよ。」


「ハッ。」


やっと、日常に戻ってきたような感覚。


全身の緊張が一気に解ける。


俺はののが好きだ。コイツといると、ゆるやかになれる。






その時、全身がそわそわするような、奇妙な感覚。


ブラウン管テレビに、腕を当てて、産毛が逆立つような、ビワビワした感覚。


俺はこの感覚を知っている。


俺はとっさにののの腕を掴み、海の壁に向かってぶん投げる。


「えっ?わっ。えええええええーーーーー?」


叫びながらののは吹っ飛んでいく。海の中に入れば、まぁ死にはしないだろう。


次の瞬間、光と同時に、俺の身体全身に痛みが走る。


両手両足の指先まで痺れるこの痛み。


こいつは・・・あのガキの・・・



「罪悪感だぁ!!!?そんなもんあるわけねぇだロ!!!!?」


挿絵(By みてみん)



あのガキ、生きてやがった。俺はダメージで、片方の膝をつく。


あいつを見ると、俺が刺した場所は黒く、コゲていた。


・・・つまり、自分の雷で、傷口を、焼き塞いだ、ってコトか。


やるな。と俺は思った。


「アタシはなぁ!虐待されてたんだヨ!!殺さなきゃアタシが殺されてた!!それに罪悪感を感じるわけねぇだロ!!!!」


ガキは怒り狂いながら空に浮いて、所構わず稲妻を連発する。


思わずののに当たらないか見るが、距離的に離れているから、当たる事は無いはずだ。


しかし、どうやって浮いてんだ。


電気を操れれば人間は空をとべんのか?


俺は光を物質化し剣を作り出す。


立ち上がり、構え、戦闘態勢に入る。


「俺の名は、一角十馬(いっかくとば)。契約した悪魔はマスターメビウス、叶えたい願いは、俺の中の罪悪感を消すこと。」


コイツも、コイツは、ただのクソガキじゃ無かった。コイツも、悲しいヤツなんだ、と思ったら、


特に意味はないが、自己紹介するのが、礼儀だと思った。それが通じるかは知らないが。


「はぁ?何、自己紹介してんだヨ?」


「さぁな。」


「・・・アタシの名はカロン。自分でつけた名前だ。クソ親の名前は捨てた。願いは、自由になること。」


意外だった。まさかコイツも挨拶をしてくるとは。





その時、ふと思った。


なにか、奇妙な仲間意識を感じる。


殺し合いをしているのに、どこか、仲間のように思える。


どこか欠けた人間同士、共通する何かがあるのか、共鳴するのか、わからないが。


命をかけた戦い。命のぶつかりあい。だからこそ感じるなにかがあるのか。



だが、それを考える場合じゃない。



電気を操る強敵に、どう立ち向かうか。


それだけを考えることにした。

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