↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/55

第38話 油断

挿絵(By みてみん)


俺は子供に向かって指を指し、こう言った。


「お前、フー、俺に、はぁーっ、怖いから、ふー、はー、


人質を、取る、わけだよな。はー。」


子供はこう答えた。


「あぁん?なんだその喋り方は。死にかけてんのかァ?」


息を、深く、深く呼吸して、落ち着かないと、怒りを抑えられないからだ。


「戦うのが、怖いから、ふー・・・。人質を取ったってことだよな。はー。はぁ・・・。はあああ。」


怒りが、抑えられない。ダメだ。冷静にならないと。コレも敵の術中かも知れない。


クソガキはニヤニヤしながら答える。


「効率が良いだロ?、効率的で、実に、かんたん。やらない理由はないネ。」


今、俺の体を鏡で見たら、全身に血管が浮き上がっていると思う。


それほどに、俺は、キレてる。


子供が指を、ミノムシになってるののに向けて指す。


すると、ののの体がビクッと反応した後、ののは、目を覚ました。


とりあえず、生きてることは確認出来た。


「動くと、コイツを海に落とすからナ。」


クソガキが俺に向かって、車の上から、見下した態度で脅迫をしてくる。


おそらく、俺を怒らせて、判断力を奪う作戦だと思う。


その作戦は成功している。俺は今、明らかに感情的になっている。




「・・・どこココ?うん?いちじゅー?誰?この子。・・・なんか焦げ臭くない?


いや、動けない。動けないんだけど。なんで私縛られてんの?なんか高い。いやこれなんか吊るされてない?」




気がついたののがキョロキョロとあたりを見回す。


体をクネクネと動かして、本当にミノムシそのものだ。


「ふー、落ち着け。今助けるから。」


俺がそう言った後、ののは、一呼吸入れて、返事を返す。


「・・・つまり、私は人質って事?」


さすがのの。聡い。


「そうだ。」


「十馬。」


「なんだ。」


「がんばれ。」


「ああ。」


俺は再び光を物質化して剣を作る。


それをみて、クソガキが反応する。


「おい、動くな!人質が・・・」


「ふー・・・まったく・・・ガキが、本当に子供だな。」


「なぁにぃ?」


クソガキの表情がピクリと変わる。


「お前の力、電気だろ。」


俺は一歩前に出る。


「よくわかったな。だが、理解った所で・・・」


クソガキは俺に向けて指を指す。


ピカッと光る。


が、その電撃は俺には当たらない。


バシンッ、と言う衝撃音が辺りに響く。


「そう、光速に近い速さ、回避も防御も不可能。衝撃、麻痺、硬直、熱、最強の力と言っても良いだろう。」


ガキが再び攻撃を仕掛けてくる。


さっきよりも大きい力。それも俺には当たらず、俺の後ろに雷が着弾する。


バンッ、という衝撃音が響く。


「なぜ当たらない!」


「そのお前が、人質なんて取ったために、注意力が散漫、隙だらけなんだよ。」


俺は一歩、また一歩と近づく。


俺は言葉を続ける。


「そして、お前が人質に攻撃した隙に、俺はお前の首をハネる事ができる。


人質を取るやつの末路なんてこんなモノだ。下作も下作。下の下の下。愚か者めが。」


「なぜだ、なぜ当たらないんだ!!」


「お前の敗因は、学校に行かなかったことだ。」


仕組みは単純。光の結晶で避雷針を作っただけだ。


見えないほど細く、透明な針状の光の結晶を。


俺がコレを思いついたのも、学校で雷の性質を習っていたからだ。


ありがとう。学校教育。役に立っているぜ。






ガキは立ち上がり、指をののに向ける。


「それ以上近づくな!でないと・・・」


俺は無視して歩を進める。


「殺すぞ!」


「・・・お前、罪悪感は感じないのか?」


「あぁ~ん?何だぁ?」


「罪悪感だよ。悪い事してしまった。間違ったことをした。それに対する後悔。苦しさ。心の痛み。」


「ハァ?そんなのあるわけないだロ。」


「人を殺してもか?無関係な人質を取ってもか?」


「ないネ。」


「そうか。」



既に一歩で届く距離に来た。


俺は近づきながら、機を伺う。


コイツは、きっと、ののを海に落とすだろう。


その瞬間、俺はコイツを斬り、ののが海に落ちるまでに助ける。


今の俺ならそれが出来る。その力がある。俺は、ののを助けることが出来る。





ガキまでおおよそ5メートルの距離に来た。


「そんなに人質を殺したいならお望み通り、こうしてやる!」


ガキがののを吊るしていたロープを電撃で切る。


俺はその一瞬を待っていた。


地面を蹴り、ガキに斬りかかる。


電撃は避雷針で当たらないようにしてある。


終わりだ。と思った。後はののを助けて終わりだ。と思っていた。


が、ガキは、屋根の上に乗っていた車から飛び降りた。


逃げる気か、と思った瞬間、その車が吹っ飛んできた。


俺は考える前に回転しながら飛んでくる車を真っ二つに切断する。


甘かった。コイツは悪魔と契約した、人殺しだ。


ガキと思って、舐めていた。


殺し合いをしているのだから、油断するべきではなかった。勝ちを確信するべきではなかった。


切った車の影から、ガキが現れた。


車と一緒に突っ込んできたのだ。


挿絵(By みてみん)


俺は剣を振り抜いている。


まずい。切り返しを。ダメだ。向こうのほうが速い。


ガキは俺の腕を掴む。


「死ね。」


挿絵(By みてみん)


全身に凄まじい痛みが走る。こうなっては避雷針どころではない。


掴まれている部分から、感覚が無くなっていく。見れば服は燃え、腕は熱で炭化していっている。


そして何より、電撃により、体が動かねぇ。ヤバい。このままだと炭にされちまう。その前に死ぬ。


「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


という声と共に、ボチャン、と音が聞こえた。ののが落ちてしまった。これは本当に不味いぞ。


なんとかしなければ。


体は動かねぇ、が、力は使えるはずだ。


意識が飛ぶ前に、やる。やるしかねぇ。


「おおおおおおお!!」


俺は雷光を物質化する。


それは一瞬で結晶化し、ハリネズミのように俺の体を包んだ。


その結晶の一部は電気ガキの手を貫いた。


「痛てぇッ!」


ガキは手を離す。


俺はすかさず、結晶化された光の棘の一つをもぎ取り、電気ガキの胸に突き刺した。


「ガガッッ」


掠れた喘ぎ声を出しながら、ガキは吐血する。


今、コイツの生死を確認してる場合じゃない。


俺は、全速力で、三歩で道路を走り、橋から飛び降りた。


後悔、苦しみ、心の痛み、巻き込んでしまったという罪悪感を感じながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。