第37話 橋と人質と子供
相変わらずの、何の説明もされない瞬間移動。
一瞬で景色が変わる。俺はまずあたりを見回した。
まず、寒い。海だ。俺は、橋の上にいる。周りを見渡せば、フジテレビ社屋がある。
海のどまんなかで、橋で、そんな場所、一つしか無い
東京湾横断橋。大田区から東京湾を横断し袖ヶ浦市につながる巨大連絡橋。
もう既に、相手は先に来て、ひと暴れしたらしい。
あちこちに車が止まって、放置されている。
燃えてる車もある。人が居ない方が戦いやすいから、野次馬になる一般人は逃げてくれたほうが助かる。
そして、あたりを見回す俺の視界に、人の形が目に入る。
焦げた赤い車の上に、屋根の上に座っている。子どもが一人。
ボサボサの髪。ボロボロの服。パンクファッションのような。
そして、その後ろ、道路から生えてる電灯、先は直角に曲がっている、それを橋の外に曲げて、
そこに、銀色のテープで、グルグル巻きにされて、みのむしのように、ののが吊るされていた。
それをみた瞬間、俺は、俺の脳が、怒りに沸騰する。
蜂蜜を脳に直接流し込まれたような、ぬめりとした怒りによる、思考の遅延。思考の弛緩。
いかん、これはダメだ。怒りに、感情的になっては、適切に行動できない。
冷静を保つため、ため息を吐き、状況を正しく認識する。
あれは紐が切れたら海に落ちる。
つまりは人質ってわけだ。
はは、良くテレビや映画で、人質を取る話を見るが、
は、アレを、実際に、現実に、やられると、まぁ、ここまで、ここまで怒りが、怒り狂うか。
車の上の子どもは、ニヤニヤと、笑って俺をみている。
どうみても小学生に見える。が、関係ない。
殺す。友達を、人質に取った。許さない。殺す。
俺は光を物質化し、剣とし、地面を蹴った。
一振りで終わらせる。
問答無用。俺は剣を横薙ぎに振るう。
光った。
いや、俺の光じゃない。
眼の前が光ったと思った瞬間。全身に衝撃が走る。
そう思った次の瞬間には、背中から衝撃が、
俺は地面にぶつかった。
痛みは無い。
痛みってのは、大抵、何が起きたか理解ってから感じるものだからな。
それよりも、苦しい。背中を強く打ったせいで、息ができねぇ。
「かはっ」
俺は咳き込むと。口から血が出た。
何が起きた、何をされた。
あの子どもを見ると、何も動いていない。立ち上がっても居ない。
段々と、痛みを感じる。全身から。
そして、俺の体の異変に気づく。
俺の体は・・・焦げていた。
俺はゆっくりと立ち上がる。
辺りの違和感に気づく。
車は放置されて、人は逃げ出している。と思っていたが、違った。
運転席をよく見ると、そこには、黒いものがあった。
暗くて良く見えていなかったが、それは、炭だ。人間の形をした。
しかし、燃やしたにしては、車は、そんなに炎の痕跡がない。焦げてはいる。
なるほどな。
こいつぁ・・・厄介だな。




