第34話 ののと俺
あれから
吹っ飛んだ新宿は、今、天使と悪魔が総出で復旧してるらしい。
俺の方は、傷ついた体を癒すために、毎日食って寝て風呂入って寝てる。
あとは学生服の新調だ。ボロッボロでボロクズになってたからな。
俺の中には今、5人の悪魔がいるが、これが、結構勝手に動いてる。
ベルゼブブはどっか行ったし、
アモンはボクシングの試合を見に行っている。人間の技が好きらしい。格闘技の研究をする悪魔。俺の古武術にも興味を持っていた。
リリスは天使について行って新宿で復旧を手伝ってる。天使となんらかの関係があるらしいが、詳しくは話さない。
ミノタウロスは俺の部屋で寝てる。
マスターメビウスは俺の中にいる。
一度、お前らの力を俺に使わせろと言ったが、誰一人協力してくれるやつは居なかった。
ミノタウロスお前はミラーに貸してたんだから俺にも貸せと言ったら、お前が好みじゃない。だと。
なんたるワガママ。しかし、悪魔らしいといわれたら、悪魔らしい。けど理不尽。腹立つ。
俺は毎日ふらふら街を散歩する。
なぜかって、暇だからだ。いつ始まるかもわからない戦い。
学校に行くわけにも行かねぇ、家に居てもしょうがねぇ。
毎日外で買い食いして時間を潰している。
今日は、河原の斜面に寝転んで、ぼんやりしていた。
あれだけ激動の事件の連続を経験すると、今、こうやってのんびりすることが、とても価値のあることだと思える。
あー、気持ちいいな。と思っていると、眠たくなってきた。
涼しい。乾燥してさっくりとした芝生。芝かどうかはしらねぇけど。草。
川のザブザブした音。
ちょっと眠い。
・・・寝る。
ちょっとだけ。
・・・
・・・
・・・
突然、俺の額に何かが当たった。ビクッと反応し、目を覚ます。
なにか、動物か虫が当たったのか?
と思ってあたりを見ると、上から声がする。
「いちじゅー、なにしてんの。こんなところで。」
ののだ。
あたりを見ると、もう夕方だ。そうか、下校の時間になってしまったのか。
「ああ、寝てた。」
むくりと、体を起こす。
血が頭に回ってないので、少しふらつく。
俺の背後に立っている、ののが、俺に話しかけてくるその声には、怒りが滲んでいた。
「なんで学校来ないの。」
俺は振り向かず、座ったまま答える。
「さあな。」
「MCは行方不明になるし、AKは変な雰囲気だし、つるはずっと悲しそうな顔してるし!」
「そうだな。」
「十馬!こっちむけ!」
ののが怒っているのを初めて見る。いつも子供っぽく笑ってるだけなのに。
俺は顔だけ横に向け後ろを見る。
すると、ののが、手を振りかぶって、殴りかかってきた。
「バカ!!」
グーパンチを放とうとするののを見て、俺は思わず、体をすくめる。
のののパンチはヘロヘロで、何の形にもなっていなかった。
おそらく人を殴ったりなんかした事無いのだろう。
俺がちょっとかわすと、思いっきり空振って、バランスを崩した。
斜面で、バランスを崩す。
ののは、そのまま下に落ちようとしていた。
「おい、危ないッ」
「わーーーー」
落ちそうになるののを助けようと、俺はののの体を掴む、が、座っている姿勢から、急に立ち上がろうとしたから、
俺もバランスを崩し、ののを抱きしめたまま、ごろんごろんと斜面を転がり落ちてしまった。
どすんどすんと、地面に背中が当たる。
痛い。強い衝撃が肺に来ている。
3回ほど回転した後、俺達二人は斜面の下の砂利にぶつかって止まった。
本当は、ののに当たらないようにしたかったが、そうもいかず、
二人とも地面にぐしゃっとぶつかった。
「・・・痛いぞ。すごく。」
「ふえ・・・痛い・・・ぐえ・・・」
上半身を起こすと、体中痛いわ目が回るわで、笑えてくる。
ののの方も、起き上がってきた。
「なんで避けるの。」
「あのなぁ。」
ののの体をよく見ると、腕を擦りむいて血が出ていた。
それにののも気づく。
「あ、これ?大丈夫だよ。このくらい。」
「・・・ちょっと、こい。」
俺は立ち上がり、ののに手を差し出す。
ののは俺の手を掴み、力を入れ、立ち上がる。
二人して体についた草と土を払い、斜面を上り、上に上がる。
ののはカバンを拾い、ついてくる。
「ねぇ、何処に行くの?」
「コンビニ。その怪我。絆創膏売ってるだろ。」
俺はののを連れ、夕暮れの土手を歩く。
会話は無い。あのののが、だ。
土手から階段で下に降り、少し歩くと、コンビニがある。
そこで俺達は店の前にある水道を借りて、手を洗い、怪我を洗った。
夏の終わり、夕暮れの水道水は、思ったよりも冷たかった。
水で洗った後、ハンカチで拭き、ののに買った絆創膏を貼ってやる。
「あのね。私。自分でできるから。」
全部終わった後、不満そうにののが言った。
「悪かったな。子ども扱いして。」
ののはむっとして言い返す。
「あんたも子どもでしょ。16才。車も乗れないくせに。」
・・・コイツは、たまにグサッとすることを言うから侮れない。
「そうだな。悪かったよ。肉まん食うか?」
「たべる!」
子どもじゃないか。お前も、俺も。




