第31話 無敵・最強・鷹宮鶴と四大天使
どうやら私は、めちゃくちゃに強いようだ。
一十が結晶の剣で、私に斬りかかる。
が、私にはそれが、ゆっくりに見える。ビデオのスロー再生よりも。
私はその中で、普通に動ける。
それほどの速さの差がある。
最小限の動きでかわし、バットをフルスイングするように、
ハンマーで、ぶん殴る。
凄まじい衝撃波と共に、一十が地平線の彼方まで、地面にぶつかりながら吹っ飛ぶ。
ミラーは音で攻撃するようだ。
それも見える、空気に音が伝わる様子が。
私はハンマーで地面をぶん殴る。その衝撃波で、ミラーの攻撃をかき消す。
その余波でミラーは風に飛ばされるたんぽぽの綿毛のように、くるくると吹っ飛んでいく。
強い。強すぎる。
まるで、幼稚園の喧嘩に、横綱が殴り込んでいるかのような、力の差。
強いんだ。四大天使って。
地平線の彼方に吹っ飛んだ二人が帰ってくるまでに、私は天使に質問をする。
「ねぇ、悪魔を消すにはどうすればいいの?」
このままヤッてると、加減してるとしても、悪魔が消える前に二人が死んでしまう。
私の右肩から、ガブリエルが、上半身だけをにゅっと出す。
「人間が死んだら。中から悪魔が出てくる。そこを叩く。」
「いや・・・死んだらって・・・あのね、殺したくないって言ってるじゃない。」
「話を最後まで聞け。本当に殺すわけじゃあない。一時的な死だ。魂が体から離れる前なら、生き返らすことは簡単だ。
完全な死。魂は体から離れ、肉体は腐り、魂が誰かのモノになった時、それを生き返らすのは難しいがな。」
「・・・つまり、手術するために仮死状態にしてから腫瘍を取り除く、みたいな?」
私がそう言うと、左肩から、ラファエルがにょきっと出てくる。
「きみ、大学出てるでしょう。」
それだけ言うと、また引っ込んでいった。
それから、何時間戦ったかわからない。何十分かも知れない。
すり鉢状だった荒野が、ボコボコになっている。
私は無傷。制服で来てるけど、汚れ一つ無い。
対する二人は、なんで立っている?なんで、立てている?
何度も、叩き、ふっとばし、ぶん殴った。何度も、何度も。
一十もミラーも、血だらけ、傷だらけ、泥だらけ。
勝つ見込みなんて、無いのはわかっているはずだ。それほどの力の差がある。
なのに、どうしても、諦めない。折れない。屈しない。
目が。目が死なない。立ち向かってくる。
つる「どうして・・・?どうして諦めないの?」
ミラー「例え・・・例え天使が相手でも、例え勝てないとしても、私が、私のための戦いを、邪魔するやつは、例え貴方でも、許さない。」
一十「同じだな。例えお前でも、コレは俺の戦いだ。俺達の戦いだ。俺の意思だ。それを、力で変えようだなんて、許せない。」
確固たる信念。圧倒的な意思。それほど・・・それほどなの?それほど願いを叶えたいの?人を殺しても?殺されても?
間違ってる。そんなの間違ってる。
私は許せない、私の、友達が、そんな事をすることを許せない。
わかった。ああ、そうか。今、わかった。
だから、戦うんだ。戦って、勝ち取る、それが、きっと。
私は覚悟を決めた。
つる「ならコレが最後。これで死ななかったら、私は諦める、負けを認める。だから・・・死なないでね。」
私は、すべての力を、世界が滅ばないように、セーブしていた力を解放する。
大地が震える。重力が歪む。小石が、衛生のようにくるくると私の周りを回る。
私の背中から、天使の羽がザクザクと生える、2枚だった翼は、今は8枚になった。
一十「こいつは・・・やべえな。」
一十の体から悪魔が出てくる。
マスターメビウス「ヤバいね、こりゃあ。ヤバい。」
ベルゼブブ「ヤバい。」
アモン「こいつぁヤバい。」
ミラーの体からも悪魔が出てくる。
リリス「力の光圧が第七次元まで到達してるけど、空間が断裂するぞ。」ポロロンとウクレレを弾く。
ミノタウロス「はー、さすが四大天使の力。ワクワクするね。地球吹っ飛ぶんじゃないか、あれ。」
ミラー「受け止めるわ。貴方の思い。だって、友達だもの。」
一十「そうだな、友達なら、受け止めるしか無いよな。」
二人は歩み寄り、手を握る。
それを見て、私は、ちょっとムカついた。
力を、形にする。ハンマーではなく、右手の拳に集める。
道具を使うことは、違うと思った。
私は、私のこの手で、止めるんだ。この手で、ぶん殴る。
つる「じゃ、行くよ、私を受け止めてね。」
一十「ああ。愛してるぜ。つる。」
ミラー「私も、貴方のこと、好きよ。」
新宿・・・だった場所に、光の柱が吹き上がった。




