第23話 鷹宮鶴の場合
学校にAKとMCが来ない。
AKは連絡があった。今青森県にいるそうだ。
MCは連絡がない。行方不明。
一十は相変わらず学校に来ない。
ちゃんと来てるのは私と、ののだけだ。
いつも子どもみたいにバカやってるののも、今日はテンションが低い。
ののに言うか?一十は悪魔と一緒に願いを叶えるために殺し合いをしてるって、
いや・・・言えない。信じられるわけ無いもん。
あー、苦しい。
そもそも私はこんなくよくよ悩むタイプじゃない。
単刀直入、ガッとやってサッと終わらす。どーにもならない事は、さっさと忘れる。
そーいう人間だ。
だけど、こーなると、どーにもならない。
逃げるわけにも行かない、忘れるわけにも行かない。
苦しい。
学校が終わり、家に帰る為に、バスに乗る。いつもなら、いつものメンバーでバカをやってる時間だが、今日は静かだ。
ぼんやり窓から景色を眺める。そういやこうやってゆっくり景色を見るって、なかったな。と思っていると、
変なものを見た。
思わず身を乗り出し振り返る。
私は急いでおりますボタンを押し、次のバス停で降りる。
普段は降りることのない場所。
私は走る。
まさか、そうだ。そうかも。
歩いていた方向は駅の方だ。きっとそこに行けば。
レンタルビデオ店を超え、坂を上り、ぐるっと回って、先回りをする。
夏も終わりだけど、全力疾走するにはまだ熱い空気。
その中を泳ぐように空気をかき分けて走る。
このコンビニの裏を抜ければ・・・
いた。
明らかにおかしい人物。
どうおかしいって、
肩に人間が乗っかってる。
それなのに周りの人間はだれも気にしない。
それなのに一つも重そうにしてない。
インコを乗せてるかのような重さのなさ。
私はコレを知っている。
きっと、悪魔だ。
青い髪。オレンジ色のスーツ。手には小さいギター・・・いや、ウクレレ?
そんなのが空中に殆ど浮いている。
ああ、と思った。
私、とうとう悪魔が見えるようになっちゃった。
悪魔を連れているのは誰かを見ると、女性だった。美しい、黒い長い髪。
・・・この時、私は気づいた。
私は、どうするつもりなんだ。って。
「あなたのそれ、悪魔だよね?私の友達も悪魔に取り憑かれてて、知らない?」
とでも聞くつもりか?
うっ・・・どうしよう。
もし、悪い悪魔だったら、私殺されちゃうかも・・・
私らしくない煮えきらない態度で、建物の角の後ろで、うろうろしていると、
突然背中から、冷たい空気を感じた。
ばっと振り向くと、その悪魔がそこに居た。
もう一度振り向く、さっきまで、そこに居たはずだ。私の前方、10メートルほど先に。
また振り向く。女性と、悪魔がそこに居た。どうやって背後に回ったのか、一瞬で、
・・・いや、悪魔だから、本当なんだ。と思った。
本当に魔法とか悪魔とか、その存在を実感していた。実感というか、恐怖を。
「あなた、みえてるね。」
女がそう言うと、悪魔が答える、
「なにか、悪魔の匂いがするね。」
怖い。いま、私は、社会から、宙ぶらりんになっている事に気づいた。
例えば事件に巻き込まれたら警察が助けてくれる。
けど、悪魔にさらわれたりしたら、どうにもならない。だれも助けられない。
法律も、警察も、大人も。
雪山で裸で居るような、冷たい怖さが私の体に広がっていく。
やばい。
女が私の目を覗き込む、
「お話、しましょう」
女がそう言うと、ぱっと、世界が変わった。
カラオケの部屋だ。カラオケボックスだ。
えっ?私は辺りを見回す。地面を見る。天井を見る。カラオケボックスに居る。
あまりの状況変化に、思考が追いつかない。女は座ってジュースを飲んでる。
わたしは、あぜんと立ち尽くすしか無かった。




