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第22話 ベッドで二人


脱衣所にはバスローブが置いてあった。


服は全部洗濯中だ。


俺はそれを身にまとい、鏡を見る。


・・・ラブホテルに居る人間っぽさが凄いことになっている。


だがほかに何もないんだからしょうがない。


俺がソファーに座っていると、ブァーっとドライヤーの音が聞こえてきた。


「ねー、手伝ってー。」


脱衣所からAKの声が聞こえる。


俺は腰を上げ、脱衣所に向かう。


「なぁ、お前、そんなキャラだったか?学校じゃ大真面目優等生だったじゃないか。」


脱衣所に入ると、AKはバスローブを着ていた。


そして俺にドライヤーを渡した。


俺はドライヤーのスイッチを入れ、AKの髪にあてる。


AKは髪を後ろで左右にわけ、片方ずつ櫛で梳かす。


へー、と思った。


長い髪を乾かす方法、なんて実際知る機会は無いからな。


俺はドライヤーを左右に振りながらAKの指示通り当てていく。


あっという間に髪の毛はサラッサラになった。


最後は冷風で熱を取る、らしい。


思わず髪の毛を手にとって触ってしまった。


俺のモジャモジャ頭とは全く違う。同じシャンプー使ったのに、こうもちがうのか、と驚いた。


それを、鏡越しに、AKはじっと見ていた。


俺は、ハッとして、慌てて髪の毛を離す。


「それじゃ、俺はソファーで寝るから。お前はベッドで寝ろ。」


そう言って、脱衣所から出て、ソファーに寝っ転がる。


一人ぐらいなら、寝れないこともない。


さて、寝るか、と思ったら、AKが近づいてきた。


なんだ?と思ったら、そのまま、無理やり入り込んできた。


・・・キツい。


「いや、無理があるだろ。」


「良いじゃない。誰も見てないし。誰もいないんだから。」


ギュウギュウに詰まってるし、バスローブ越しとは言え、AKの体がギチギチに当たっている。


・・・流石に、いや流石にこれはキツい。眠れねぇ。


「わかった、二人でベッドで寝よう。だから降りてくれ。」


それを聞くと、AKはソファーから降り、先にベッドに入る。


そのベッドはふつーのベッドだった。二人分の広さがあるやつ。いわゆるダブルサイズ。


バラの花びらが散らしてある以外は。


俺が先にベッドに入る。うーん。ホテルのベッドって、あんまり使う機会がないけど、


あんまり好きじゃない。なんかこう、ずっしり来る重さが。


もっと、ふわふわしてるのが好きなんだよ俺は。と思っていると、


反対側から、AKが入ってくる。


ドキリ、とする。


ドキドキしている。ごそごそと、AKが近づいてくる。


AKの息遣いが後ろから聞こえる。


手にじんわりと汗をかいていることを自覚する。


蛇に睨まれた蛙のように、俺は一ミリも動くことが出来ない。


手に何かが触れるのを感じた。AKの手だ。冷たい。


ピーーッピーーッ


なにかのアラームが鳴る。


「あ、洗濯終わった、乾燥機に入れてくるね。」


そう言って、AKはベッドから出ていった。


思わずため息を吐く。


いかん。眠れなくなる。ギンギンに目が冴えてしまっている。


寝よう。


寝るんだ。


そう思い、目を閉じ、心を落ち着けようとするが、


頭の中には、今日コレまで見たAKの体、触れた感触が花火のように次々思い出してしまう。


その悶々とした妄想と戦っている間に、電気が消えた。


きっとAKが寝るために消したんだろう。かなり真っ暗だ。


スト、スト、とカーペットの上を歩く音が聞こえる。


その音がベッドに近づいた時、シュル、という音が聞こえた。


目を閉じてるから、そりゃ見えないんだが、


・・・まさか脱いだ?バスローブを?


AKがベッドに入る。


・・・


・・・


静かだ。聞こえるのは、クーラーの動く音、俺の心臓、そして呼吸の音、


そして、AKの息遣い。


突然、俺の手に冷たさが走る。後ろから、手を握られた。


・・・


・・・


「私の全てをあげる。それでも、貴方の罪悪感は消えないの?」


小さな声だった。


でも、その声には重さがあった。


俺は手をギュッと握り返す。


冷たい。冷たい手だ。


俺は、AKをは逆の方向を向いたまま、答える。


「俺は、火事で一人だけ生き残った。その事は、始めは奇跡だとか持ち上げられたが、


だんだんと、妬まれるようになった。子を失った親から、攻撃を受けるようになった。


石を投げ込まれたり、陰口叩かれたり、玄関の前に画鋲をばらまかれたりな、


ま、気持ちはわかるよ。どうして私の子は、ってな。


だから、俺は家を出た。家から離れて一人で暮らしてるのはそのせいだ。」


「でも、それは貴方のせいじゃないよ。貴方が罪悪感を感じることは無いよ。」


「わかってる。でも、感じてしまうんだ。どんなに幸せなときでも、


どんなに楽しいときでも、俺の心にはヒビが入っている。だから、感じるもの全てにヒビが入ってるんだ。」


「・・・こっち向いて。」


・・・しばらく考えたあと、寝返りをうち、AKの方向を向く。


何かが顔に触れた、手だ。AKの手が俺を包んだ。


・・・


・・・


・・・


・・・


・・・


・・・


・・・




朝起きると、一十は居なくなっていた。


乾燥機を見ると、一十の服だけ無くなっていた。


きっと、次の戦いに行ったんだろう。


・・・待ってるよ。君が帰ってくるのを。


ずっと。待ってます。いつまでも。



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