第16話 悲しい
月曜の朝。あれから俺は、歩いて家に帰った。深夜にバスもタクシーも走ってねぇ。歩くしか無かった。
時間にして一時間か二時間か、
帰った時には疲れ果て倒れるように眠った。
コンコン、とドアを叩く音がする。俺は目が覚めた。
あの戦いの後、血と焦げと土にまみれた学生服のまま寝ていたせいで、体中が、焼いた木みたいな匂いがする。
そしてなにより体中が痛い。
そんな体を振り起し、よろよろと玄関まで向かい、ドアを開ける。
そこにはAKが居た。
俺の顔を見ると、恐ろしいものを見たような、緊張した表情だった。
「何だ。」
「・・・」
俺は、ドアノブから手を離し、ドアを開けたまま台所のテーブルの椅子に座る。
立ってるのも辛いほど体中が痛いからだ。
AKは玄関の土間に立ったまま、動かない。
「今日、学校で、江無紫蘭くんが家に帰っていない。と通達がありました。
私は、貴方の言っていた事を思い出しました。それに参加したのではないかと。そして、
・・・」
「ああ、あいつは俺が殺した。」
AKは頭がいい。俺のこの姿を見て、実感したんだろう。本当だったと。
AKは目を伏せたまま、俺の目を見ようとしなかった。
「・・・私は貴方の事が・・・好きでした。でも、・・・今は、嫌いです。」
「そうか、俺はお前のこと、好きだぜ。」
AKは結局、最後まで、俺の目を見ることはなく、帰っていった。
俺は、そうだろうな。と思った。
そりゃそうだ。人殺しなんだから、俺は。
友達を殺したんだから。当たり前だ。
だが、・・・何だこの、虚脱感は、力が入らねぇ。動けねぇ。
俺は・・・、
その時、体からマスターメビウスが抜け出した。
「おい、行くぞ。」
「もうか?夜やったばかりだろ」
マスターメビウスは答えない。
俺はなんとか立ち上がると、その瞬間、景色が変わった。
海だ。どこかの海岸。
朝の風が冷たい。
しまった。おい。靴履いてねぇぞ。裸足だぞ。
何もかもが、準備する日まもなく進んでいく。
目を凝らすと、20メートルほど先に、誰かが居る。
次の戦う相手か、なぜならそいつの肩の上に人間が浮いている。悪魔だ。
第二戦目。か。
良いだろう。どうせもう俺には帰る場所なんか無いんだ。
行く所まで行ってやろうじゃないか。俺はそう思うことにして、思い込むことで、
体を前に進めた。
悲しい。本当は悲しい。けど、もうもとに戻らない。
俺が首を突っ込んだのはそういう世界だ。自分でわかって突っ込んだんだ。
それでも。悲しい。




