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第15話 決着

俺の目からは、ただの直線に見える。


直線、いや、壁だ。面だ。


視界いっぱいに炎が迫る。


俺は剣を維持することを辞め、両手でその面を受け止める。


もうそれしかねぇ。


迫りくる面に両手を突き出し、受け止める。


俺が触れた炎は結晶となるが、回転しているから、次々と結晶化した部分が下に流れていく。


常に新しい炎が襲いかかる。


単純な力の勝負。


挿絵(By みてみん)


俺が止めるのが早いか、炎に押しつぶされて死ぬか、


俺の足元には、結晶化した炎の破片が降り積もる。


圧力が背中に来る。


腕を支える肩、肩を支える背筋、背筋を支える腰。


悪魔の力で人の身体能力を超えた状態でも、折れるんじゃないか。と思うほどの重さ。


叫んでも、食いしばっても、やれることは一つ。力いっぱい耐えるだけだ。


紫蘭「削れ!潰れ!死ね!!」


一十「うおおおおおおおおおおおッ」


トラックのタイヤを素手で止めるような暴挙、何秒経ったかは分からない。


が、徐々に動きが遅くなってきた。


輪は細くもなっている。


ついに、動きは止まった。俺は両手で、固まった輪を握り、力を入れ、握り砕く。


カラカラと結晶が辺りに降り注ぐ。


周りには俺が結晶化した炎の削りカスが積もり、


地面には輪によって削られた直線の穴が出来ていた。


そしてその先に、紫蘭が、膝をついている。


俺は剣を作り、そこへ向かい歩く。


パキパキと、結晶の欠片を踏んで。


紫蘭は力を使い切ったのか、動けないでいる。


ぜーぜーと息も荒い。


・・・剣を持つ手が震える。


紫蘭「どうした・・・殺れよ。俺の負けだ。もう、動けねぇ。指1本な。」


一十「・・・」


そうだ。そうしなければならない。


だが、動けない。


・・・


紫蘭はそれを見て、笑った。


紫蘭「はっ、覚悟がねぇなら、こんな戦いに来るんじゃねぇよ。バカが。」


そう言って、紫蘭は地面に落ちていた尖った結晶を拾い、俺に飛びかかった。


俺は咄嗟に剣を振るう。


その剣は、ざくり、という感触をもたらした。


まるでキャベツを切ったときのような、あの感触。


俺は振り向いた。


そこには、胸の上から、下から切断された、紫蘭が、落ちていた。


全身から汗が吹き出す。冷たい汗が。


剣が砕け散る。


俺は紫蘭に駆け寄る。


一十「紫蘭!!お前・・・!!」


うつむきになっていた紫蘭をひっくり返す。


既に、何の力も入っていない、肉の塊のようだった。


紫蘭「ああ・・・やられちまったな。」


一十「しっ・・・死ぬな!!」


紫蘭「やっぱりな、俺は・・・」


一十「・・・」


紫蘭「・・・」


紫蘭の体は、何の反応もしなくなった。


死んだ。


その実感をした瞬間、紫蘭の体が、サラサラと、崩れていく。


灰だ。灰になっていく。紫蘭を持つ手から感じる重さが、どんどん軽くなっていく。


挿絵(By みてみん)


ああ、と思っている間に、全てが灰となり。俺の手から消えた。


後悔。俺は後悔した。


こんなことになるなら、悪魔と契約しなければよかった。


こんなことになるなら。


静寂。いや、虫の声が聞こえる。山だから、そりゃ虫もいるだろう。だが今まで聞こえていなかった。


鈴虫やクツワムシの声が聞こえる。


俺は、それが聞こえなくなるまで、緊張していたのか。興奮していたのか。


そう思っていると、


何かがキラリと光った。


灰の中に、なにかがある。


灰の中から取り出す。


宝石だ。緑色に透き通った。


ずおっという感触が体に走る。


俺の体からマスターメビウスが飛び出した。


マスターメビウスは、俺の手からその宝石を手に取り、


ぱくり、と食べた。


一十「なっ・・・何をする!?」


メビウス「それじゃ、次の戦いまで、私は寝るから。時期が来るまで、おやすみ。」


そう言って、再び俺の体の中に入った。


俺の特別な力は消えていた。ただの人間に戻っていた。


誰も居ない、壊れた校舎、戦いの後が残るグラウンド。


真夜中の、山の中。


虫の声が響く。


俺は、友達を一人、失った。

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