第14話 結晶化と炎の輪
まるで、雪のように、体にガラスのような、割れた結晶が降り積もる。
一歩足を前に出す。
パキパキと音がする。炎が、固まっている。
固まって、結晶・・・薄い板の重なった、さくさくの・・・パイ生地のようになっている。
俺はゆっくりと、前に進む。ザクザクと音がする。冬の霜柱を踏み潰すような感触。
どうなってる。なんだこれは。
壁で固まっている炎に触る。熱は無い。パリパリと割れ落ちる。
俺は校舎を出て、グラウンドに進む。
炎が迫る。俺はそれに手をかざす。
すると、パリパリパリと、炎が個体になり、その勢いのまま、四方に舞い散る。
紫蘭「なんだそりゃ。どうなってる。お前のそれ。なんなんだ?」
一十「知るか。」
本当に分からない。これは何だ?
炎をガラスにする?固定する?わからん。わからんがこの力で何が出来る?
俺は集中する。何かを個体にする。結晶にするなら、何かの形が欲しい。
手を振ると、手の軌跡に、結晶が出来る。
俺はそれを掴む。
これは・・・剣だ。安定していないが。刃しか無い剣。俺はそれを握っている。
握っている部分はパイ生地を握りつぶしたかのように壊れ崩れる。それが常に再生して、新たな結晶が発生し続けている。
奇妙な感触。パキン、パキン、と常に音がする。
俺の力は、何かを、固定し、結晶にする力。
何かはわからん。が、コレでやるしか無い。
紫蘭「おめぇも目覚めたってことか。力によぉ!!」
紫蘭が突っ込んでくる。炎の攻撃は全て結晶にされるなら、拳で戦うしか無い。
超人的な脚力で、俺の周りをバシバシと地面を蹴り旋回する。
ピッ
夜のくらやみに、緑の炎を纏った腕が、ちぎれ飛ぶ。
一瞬の攻防。
俺は紫蘭の攻撃を、体を横に倒し、交わすと同時に、結晶の剣を振り上げる。
それが、当たってしまった。
紫蘭の右腕が根本から、切断される。
紫蘭「うあああああっ」
うずくまる紫蘭。
一十「終わりだ。MC」
紫蘭「うるせぇ。」
右腕を抑えながら、立ち上がる。
紫蘭「俺は・・・やらなきゃ行けねぇんだ・・・!!この街に!!」
同じだな。と俺は思った。
コイツも、罪悪感に、突き動かされている。
紫蘭の母親は、ある日、道で倒れた。それを、誰も救わなかった。そして死んだ。
原因は、座るように意識を失っていた。だから、誰も病気だとは思わなかった。
それだけだ。言ってしまえば誰も悪くない。
紫蘭は逆恨みと言っても良いだろう。
だが、俺にはわかる。それを納得できない。受け入れられない。
そして何よりも、母親の無念という罪悪感に耐えられないんだ。
俺は・・・どうするか、まだ迷っている。殺す・・・殺すことが、俺に、出来るのか。
殺せばさらなる罪悪感で、俺はおかしくなるだろう。
だが、俺は、この戦いに参加した。殺さなければ、殺される。
そう考え、答えが出せず、行動に移せず、俺は手を出せずに居た。
紫蘭「お前の考えが手に取るようにわかるぜ、お前。俺に、同情してるな?」
紫蘭は、右腕の傷口を炎で焼き塞ぐ。額には玉のような汗を浮き上がらせ、
苦悶の表情。そして怒りの表情を俺に向ける。
紫蘭「なら、死ね!!ここで!!俺の怒りの炎で、炭になれ!!」
紫蘭が左手を掲げると、炎の輪が浮かび上がる。
その輪は回転しているようだった。その輪の太さ、大きさ、速さがどんどん大きく、早く、強くなる。
考えたな、炎が結晶化されるなら、その運動エネルギーと質量で叩き潰すわけか。
冷静に判断してる場合じゃねぇ。
炎の直径が、何メートルだ?校舎よりもデカくなってんじゃねぇか。
もう緑の線になっている。
逃げる選択肢は無い。
コレを逃げるなら、死んだと同じだ。
受け止める。
出来なきゃ死ぬ。
その状況の単純さに、俺は一種の爽快感、清々しさすら感じていた。




