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第12話 特別な力


俺は立ち上がった後、埃を払い、呼吸を整える。


心臓がまだドクドク言っている。


体中がしびれているような、全部のセンサーが全開になってるような、


アドレナリンの鉄の味がする。


呼吸を落ち着ける。


ふーっ、っと息を吐く。


そうしてるうちに、MC、紫蘭が近づいてくる。


紫蘭「いや、驚いたね。こんな力になるなんてな。」


一十「まったく、まったくだ。」


俺も歩みを進める。


二人は構えない。手をポケットに入れたまま、歩き続ける。


俺と紫蘭は、一度も喧嘩をしたことがない。仲も良いし、キレたりする関係じゃない。


だが、紫蘭の方は、本気で俺を殴った。


気合い入れて立ち向かわないと、本当に、殺されちまう。


お互いの手が届く距離に近づいた。


紫蘭が右手を構える。


本気だ。アイツの目は本気だ。冗談では無い。


真剣な目だ。


俺は息を吐く。


体の固さを取る。


左手でヤツの拳を捌く。


そのまま右でヤツの腹を思いっきり殴る。


腰に力を入れ、体を落とし、拳に体重を乗せ踏み込む。


ほんの一瞬の瞬間。全てが同時。


紫蘭は吹っ飛んでいった。サッカーボールを思いっきり蹴ったぐらいの勢いで。


ゴロンゴロンと地面に打つかり、バウンドし、やっと止まる。


紫蘭「がっ・・・ハッ・・・あっ・・・」


なんて力だ。


恐ろしい。


力が強い。ということがどんなに恐ろしいか。


紫蘭「やるじゃないか。やるじゃねぇか。ああああああああッ!!!」


紫蘭は雄叫び、気合を入れ立ち上がる。


立ち上がった紫蘭は、ぴょんぴょんとジャンプを始めた。自分の力を試すように。


トーン、トーン、と、ボクサーがステップを踏むように。


フッ、と紫蘭の姿が消えた。


いや、


俺は体重を落とし、力を入れ防御する。


一十「がっ」


衝撃を感じた瞬間、ふっとばされている。


体当たりだ。単純な。だがこの力で行うと、一撃必殺の破壊力が出る。


再び小学校の校舎の壁に叩きつけられる。


しかし二度目だ。衝撃のほどもわかっている、確かにすごい衝撃だが、今の俺なら耐えられなくはない。


地面に着地すると同時に、俺も地面を蹴る。


蹴り一発で凄まじい距離を飛ぶ。だが、


その勢いのコントロールが難しい。重心を崩し、着地に失敗する。


勢いでごろんごろんと転がった後、顔を上げ、前を見る。


紫蘭が突っ込んでくる。


俺は両腕で二度目の体当たりを受ける。後ろに踏ん張った左足はグリグリと地面に埋まっていく。


今度は吹き飛ばず、紫蘭を捕まえる。二度も同じ事をされれば、対応出来る。


拳、捌く。拳、防御。蹴り、掌底で軸をずらす。


考えてる暇はない。反射で対応していく。


紫蘭が回し蹴りを放とうとした隙を突き、脇腹を掌底で打つ。


紫蘭「ごがっ・・・」


二歩、三歩、後ろに下がる。


紫蘭「お前・・・なんかヤッてんな・・・」


一十「古武術を少々。中学校の頃、親に習わされた。」


紫蘭「ったく・・・いつもお前は言わねぇよな。そういう事を。」


一十「・・・」


紫蘭「嫌いだよ。お前のそういう、自分を隠す所が。嫌いだよ。」


一十「別に、隠してたわけじゃない。別に、言うことでもないなと思っていただけだ。」


紫蘭「それを隠すって言うんだよ!」


紫蘭が殴り掛かる。


俺はそれを体移動でかわす・・・はずだった。


一十「あっつッ!」


拳はかわした。しかし、熱さが襲った。拳がかすった右腕に熱を感じる。


腕を見ると、微妙にプスプスと焦げている。


紫蘭「おお・・・」


紫蘭の方を見ると、紫蘭の手が燃えていた。緑色の炎。


燃えているのに、紫蘭は熱く無いようだ。


紫蘭は自分の手にまとわりつく炎を見ている。


挿絵(By みてみん)


手を動かし、握り、開く。


火は大きくなり、小さくなり、脈動する。


こいつは不味いぞ。


特別な力。つまり、こういうことか。


こいつはやべぇ。


嫌な冷たさが背中に走る。


今から、俺は、コレと、戦わなくちゃ行けないのか。

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