表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
8/24

閑話ー義妹の本音ー

お兄ちゃんの部屋の明かりは、もうとっくに消えている。だけど、私の胸の奥は、ずっとくすぶっていて眠れない。今日お兄ちゃんから、色んな女性の話が出て来て、少し意識しているのが分かる。きっとそれは卒業式の日に、本気の告白をされたから。


あの日からお兄ちゃんは、女性のことを意識するようになっていた。初めて明確に、感じる女性を意識した目線に胸が締め付けられる。


(……お兄ちゃんが、誰かを好きになる)


そんな、当たり前の未来なのに、どうしてこんなにも怖く感じるんだろう。誰かと手をつないで、笑い合っているお兄ちゃんの姿を想像するだけで、胸の奥がざわつく。息が苦しくなる。


私は、義理の妹で血は繋がっていない。だから付き合えるし、法律的には、結婚だってできる。そういう話を雑誌で読んだこともある。だから、望みがまったくないわけじゃない。


そう分かっているけれど、そんな理屈が、私の心を救ってくれるわけじゃない。


(もし私がこの気持ちを伝えて、お兄ちゃんに嫌われたら?)


そう思った瞬間、手がかすかに震えた。気まずくなって、目も合わせられなくなって……そんな未来だけは、絶対に嫌だ。私は、お兄ちゃんの隣にいたい。たとえ“妹”という立場でも。今のままの関係が壊れるくらいなら、想いは伝えない方がいい――


そう、自分に言い聞かせるたびに、胸がきしむ。だって、それは本当の気持ちじゃないから。もっと近づきたい。もっと、特別になりたい。「妹」ではなく、「ひとりの女の子」として見てほしい。


でも、その願いを口に出す勇気は、まだない。ようやく安心できる父親ができた。お母さんが笑うようになった。頼れるお兄ちゃんができた。その関係を壊すのが、ただ、ただ、怖い。ずるい気持ちだって理解してる。けど、独り占めしたい。そばにいてほしい。


だから私は勉強を頑張ってきたんだ。そうすれば、お兄ちゃんが私だけを見つめてくれると知っていたから。私を救ってくれたお兄ちゃんの幸せを願っているのに、その邪魔をするように勉強を頑張っている。この矛盾だらけのこの想いを、私はまだ、胸の奥にしまい込むことしかできない。


(……もし、“妹”のままでも、そばにいられるなら――それで、いい)


そうつぶやきながら、私は枕元のランプを静かに消す。自分を納得させるように、いつもやっているように繰り返し呟く。部屋の中に、暗闇が満ちていく。でも、胸の奥のざわめきは消えないままだった。


私はそっと目を閉じる。静かな夜の風が、木々を揺らす音がかすかに聞こえた。カーテンの隙間からこぼれる月明かりが、私の部屋をぼんやりと照らしている。その静けさの中で、ひとしずくの涙が、そっと頬を伝った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ