↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
51/59

新ヒロイン、春風望未の独白

リメイク版の内容は、次回から内容が少しずつ変わってきます。

私のことを、君は覚えていてくれているだろうか。そんな不安を抱えながら出した手紙に、返信が届いた日のことを思い出す。幼稚園の頃、大好きだった人。転勤でお別れすることになったけれど、お父さんが本社に戻ると聞いて、もう一度会えるかもしれない——そんな淡い期待を抱いて、久しぶりに手紙を出した。


途中から返事を返さなくなってしまった私だから、まさか返信が来るとは思っていなかった。だから、ポストに自分の名前が書かれた封筒を見つけた瞬間、信じられなくて何度も母に尋ねた。


「これ、本物だよね?」って。


部屋に戻ってからは、頬がゆるみっぱなしで誰にも見せられないほどだった。だって、ずっと好きだった人からの手紙だったのだから。


彼の隣に立ちたくて始めたアイドル活動。ステージの世界は想像以上に眩しくて、夢のようで精一杯頑張った。もちろん下手だって否定されることも、逆に応援してるって声援ももらえた。努力しても上手くいかない日もあったけど、応援してくれる人たちの声が背中を押してくれた。


その人たちの期待を裏切りたくないと、彼への想いを断ち切ることにした。不誠実だって思ったから、ファンを大切にしたいと思ったから。その日を境に、彼への返事を書くのをやめた。


それに対して罪悪感をあったけど、久しぶりに出した手紙には彼の嬉しそうな返事だった。


(相変わらず君は優しい人だね)


中学3年生という受験に集中しないといけない時期だからこそ休止という形を考えていたけれど、父が本社に戻ると知って私はアイドルを辞めることを決意した。だって、私を応援してくれた人は転校先にいないから。


もっと後悔するのかなって思ったけれど、後悔はなかった。自分の納得いくところまで、ちゃんとやりきったと思ってるから。だから、手紙を出したわけだけど。返信が返ってくるとは思っていなかったな……ふふっ、ふへへ。なんて、自分でも分かるほど気持ち悪い笑みを浮かべていた。


彼はモテるからきっともう恋人はいると思う。それでも引っ込み思案な私を変えてくれた彼に感謝を伝えたかった。それと、また仲良くできたら嬉しいなって思って一つ質問を書き添えた。


「どこ受験するの?」

「桜花麗清学園かな」


そう返信してくれて嬉しくて、胸の奥が熱くなった。私もそこを絶対に合格するって舞い上がっていた。そこからが地獄だったんだけどね...勉強だって疎かにはしていなかったけれど、偏差値が5も足りなかった。今も結構頑張って維持をしていたからこそ、半年間全部を勉強に捧げた。


両親から心配されることもあったけれど、それでも私は必死だった。学校の写真を送ってほしいと言ったら、送ってくれた。2枚写真があって、一つは友人と説明会に行った時の写真なんだろう。肩を組んで笑っている彼の姿があった。その姿が以前よりもずっとカッコよくなっていてドキドキした。


写真を複製して、お守りみたいに手帳に挟んだ。学校に持って行った時は誰かにバレるんだじゃないかって心臓の音が煩かったな。でも、勇気を貰えた。自分も頑張ろうって。だから、合格した時はものすごく嬉しかった。


今でもはっきり覚えている。泣きながら笑ったあの日のことを。


「やっと、彼にまた会えるんだね」


父の引継ぎの都合で遅くなった五月下旬に私は学校の門の前に立つ。今日が、私にとっての“本当の始まりの日”となることを知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。