↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
50/59

閑話:桜と千夏、雫とのおでかけ

桜が徐々にクラスメイトと話し出してから3日間が経った。最初はぎこちない部分もあるし、クラスメイトの何名かは気まずそうにしている者もいる。


以前、桜が俺たちから離れると表明した時に気まずそうにしていた子達だった。どこか、罪悪感を感じる人たちがいる中で、桜はもう一度謝る。今度は全体に向けて。だから


「まぁ、この話はここで一区切りでいいんじゃないかな。最初なんて当然衝突する事があって当然で、最後にこのクラスで良かったと想えればいい。球技祭の時みたいに、バカ騒ぎすればいいでしょ」

「そうだな、なら次も優勝目指すしかねぇな」

「そうですね」


なんてあけすけない大翔の笑顔に、同意した有明の姿にどこか肩を軽く下げていた。もちろん、完全に警戒心が無くなったわけじゃないのもわかる。それでも、安心しているのはきっと、クラスメイト自身、このテストを通じて少しは知り合う機会が増えたからだろう。


そんなわけで、仲良くなった者同士、当然出かけることもある俺達四人のように、カフェにお出かけしていた。


「わぁ~、ここ凄いおしゃれだね!」


なんて雛壇状の四階建てになっている大きな建物を見ながら千夏が感心したように目を見開いて見上げる。中が見えやすいように、ほぼ全面ガラス張りになっているものの、建物の外枠に関しては殆どが木製で出来ている。


木材を一定間隔で平行に並べた、木製ルーバーという印象に近い模様になっており、異なる点があるとすれば、木材間の隙間が全くないという点だろう。茶色とベージュで交互に色づいており、どこか目を惹く。


地下1階に下りるとその印象は先進的な物から、ホテルラウンジのようなスタイリッシュな空間へと変貌した。階段の上の階が吹き抜けになっているおかげだろう、明るい光が差し込み驚くほど明るい。


観葉植物が飾られており、席の感覚も5m以上は開いているので周囲が気にならないのもポイントが高かった。


俺たちはその一席、白い円形のテーブルを囲むように4人用の所に座る。右隣に桜、左隣に雫。そして正面に千夏が座った。


「それじゃあ、頼むとしようか、どれにする……」


中央にメニューを提示する千夏は、桜に見えやすいように広げる。その自然な気遣いに、感心しつつ俺もメニューに視線を落とした。


「う~んとね……」

「えっと……」


悩まし気に千夏と雫が見つめる中で、桜だけは並べれたケーキを見て固まっていた。その視線を追って行った先にあるのは値札だった。


「六百……七百…………」


なんて値札を見ながら固まっていた。動揺しているのだろうか瞳がぷるぷると震えており、一点に視線が固定されている。初めてこういったお店に来たのだろうな……なんて初々しい反応についつい、くすりと笑ってしまう。


「好きに頼んでいいよ。食べられる範囲ならね」

「さすが余裕あるねー。というか、高いケーキだと千六百円くらいするんだ」


千夏も値札を見ながら感心したように言った。


「千六百……」


なんて驚いたように見つめてまた固まってしまう。それに千夏と雫と三人でどこか微笑まし気に笑ってしまう。


「ここならソルベショコラとか、ミルフィーユがおすすめかな。ドリンクも美味しいから、一緒に頼むといいよ」


ドリンクの値段もまた六百円くらいはする。だからこそ頭の中で値段を計算して申し訳なくなったのだろう。桜は少し視線を下げる。だから先に釘を刺しておく。


「ドリンクとケーキは最低一つずつ頼んでね。遠慮されると、逆に申し訳なくなるから」

「うっ……」


なんて、分かりやすく言葉に詰まる桜に思わず苦笑してしまう。だからこそ、千夏がこの空気を壊すように注文してくれる。


「じゃあ私はこれとこれとこれ!」


そう言って、ケーキを三つにドリンクを一つを選択した。


「それじゃあ、私はこれにします」


なんて雫も習うように、ドリンク一つとケーキ二つを選び始めた。桜の方は、どれにするのか悩んでいるのだろう、視線を彷徨わせながら、残り2つで迷っているようだ。そうやって最後まで悩んだ末にドリンク一つとケーキ一つを選ぶ。


(ほんと、遠慮しなくていいんだけどね……)


「それじゃあ、注文しようか」


そう告げて注文をしていく。俺もまたケーキを三つに、ドリンクを一つ注文していた。一人なら絶対に食べきれない量である。それでも一つ多くケーキを選んだのものは、さっき桜が最後まで迷っていたケーキだった。


食べれなくなったからみんなで分けようと言えば、きっと不自然にはならないだろう。そんなことを考えながら、注文を終える。


「待ち遠しいね」

「ね~、写真を見ただけでもおいしそうだったもん」


なんてどこか浮足立った空気が流れる中で、店員さんがケーキを運んでくる。計9個のケーキと、4つのドリンクが机いっぱいに並べられる。それに感心しつつ俺たちは「いただきます」と手を合わせて食べ始めた。


「美味しい!」


最初に声を上げたのは千夏だった。頬を緩めながらケーキを頬張る姿に、思わず笑ってしまう。それにつられるように桜と雫も一口。


「ほんと、美味しいです」


桜もまた、口に入れると目を大きく見開き、ケーキに視線を落とし、「……美味しい」という言葉が零れ落ちる。


その姿に三人してどこか微笑まし気に見つめていた。俺もまた、フォークをケーキに入れる。柔らかなスポンジの弾力。口の中でほどけていく生地。重なり合うチョコレートの甘さ。


「確かに美味しいな」


なんて、思わず感心してしまう。市販のものとは違う、本格的な味に思わず深く頷いていてしまう。


そんな風に食べ進めていく中で、


「これ美味しいよ、はい、桜、あ~ん」


そんな声とともに、千夏が自分のケーキを差し出した。


「えっ?」

「いいからいいから」


なんて、言葉に目を瞬かせつつもぱくりと口に入れる。途端に目を丸くした。


「美味しい……」


その反応に千夏が満足そうに笑っていた。どこか遠慮する彼女が受け入れやすいように、俺の意図を察したのだろう。それは俺が手を付けないように少し話していた、苺タルトを見てそう思ったのかもしれない。


それからしばらくして。一皿しか頼んでいない桜の皿も空になる。皆の様子を窺いながら食べているので、もう少しで雫の方も無くなりそうだった。


俺も既に二皿目の終わりに差し掛かなか、自分の皿を彼女の前へ差し出す。


「ごめん、桜」

「……ん?」


どこか戸惑った様にする彼女に対して申し訳なさそうに告げる。


「想像以上に甘すぎて、食べきれそうにない。よかったら手伝ってくれない?」


桜はそう告げられて見た先にあるのは例のいちごタルトだった。察しの良い彼女はきっと気付いてしまうだろう。


「食べきれない分を押し付けるのってどうなの?」

「意外と食べられると思ったんだけどな。久しぶりだと結構重くて」

「へー?」


わざとらしい視線。だが、もちろん止める気はないらしい。


「私は結構頼んじゃったからお腹いっぱい」


雫も続く。


「私もです」


二人とも察してくれているのだろう。自然な流れを作ってくれる。桜は少しだけ困ったように笑った。それから俺とケーキを見比べて。


「……ありがとうね」


小さな声でそう言った。どうやら気づいているらしい。全部ではなくても。少なくとも、このケーキが偶然じゃないことくらいは。


そのケーキを一口食べた瞬間嬉しそうに頬を緩ませる。……そういえば、いちごが好きって言ってたもんな。なんてふと以前千夏たちと話した時の事を思い出す。


そんな彼女の姿に、


「かわいい」

「かわいいですね」


なんて雫たちが小さく呟く。そんな声が気にならない程に、嬉しそうに幸せそうに食べる。だからだろうか。その笑顔が、やけに綺麗に見えて。思わず見惚れてしまったのは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。