第23話 連絡先を交換して
迎えた放課後。俺達はいつものように四人で作業をしていた。担任が生徒会の顧問というのもあって、どうやらそのしわ寄せというのが俺たちに来ているようだな。なんて資料に目を通しながらそう感じる。
「にしても連って本当に何でもできるんだね。なんというか、そつなくこなしますみたいな雰囲気出して、あの大翔君と本気で張り合ったりするし。すこし騙された気分。ね、夢咲さん?」
「……そう、だね」
どこか曖昧な彼女の返事に、千夏の方が戸惑っていた。俺の方を見て、何かを確かめるように、じーっと見つめると口を開く。
「ごめん、連をちょっと借りるね」
なんて千夏に連れ出される。教室の隅に行く俺達のことを夢咲さんが注意することもない。それにも千夏が驚いたように目を見開いていた。
「これって、どういうこと?二人で話している時に何かあった?」
なんて首を傾げながら聞いてくる。それを肯定するように俺は頷きつつ答える。
「真意はわからない。けど……」
思い当たる出来事を話すとどこか嬉しそうに微笑みつつ、納得したように頷いた。
「……そっか。やっぱり連は優しいね」
なんて嬉しそうに笑みを深める。
「それを言うなら千夏たちの方だと思うよ。俺みたいに言い訳もできない中で、夢咲さんに話しかけた」
「当たり前でしょ!連が踏み込んでいるのに、私たちが傍観するのは違うからね」
なんて言いながら笑う彼女の笑顔が眩しかった。席に戻った千夏は、夢咲さんの方へと前屈みになりながら尋ねる。いつもなら距離が近いって言われるのに今日はそれがなかった。
「そういえば、夢咲さんってシンシアとかやってないの?」
「……シンシア?」
「そこからか……連は?」
「あぁ、画像とかの投稿はしてないけど、連絡用には使ってるよ」
「だよね!なら、夢咲さんもこの機会にやろうよ。夢咲さんかわいいから、投稿したら万バズ確定だよ!!」
「そういうのは興味ないからやらない」
と首を振って否定する。その姿にはいつものような鬱陶しさはなくて、流行に流されている千夏に対してどこか呆れてるようだった。
「じゃあ、MAINとかは?」
「そっちは連絡で使ってるけど」
「なら、交換しようよ!」
千夏の言葉に対して視線を彷徨させつつ逡巡する。
「……まぁ、それくらいなら」
と呟くと千夏がぱぁ~っと顔を明るく指せながら勢いよく立ち上がった。
「ほんと、やったーー!!」
なんて告げる彼女は、自分の鞄を探ってスマホを取り出す。それに少し呆れたように口元を緩める夢咲さんもまたスマホを取り出した。千夏が夢咲さんのQRコードを読み取り交換する。
「ほら、雫も連も交換するっ」
「……はいっ、します」
「えっ……あぁ」
なんて流れに乗って彼女と連絡先を交換した。クラスのグループにも入っていない彼女の連絡を俺たちは手に入れる。それに少しだけど、特別感みたいなものを感じて嬉しくなってしまう。千夏なんかは露骨に嬉しそうにしていて
「めっちゃ連絡するね」
「そしたら無視する」
なんて、夢咲さんから拒絶を喰らっている。それでも、
「なら、毎日少しは連絡する」
「……まぁ、それくらいなら」
なんて譲歩を引き出していた。
「ねぇ、連絡先を交換したんだし、そろそろ下の名前で呼んでもいいよね。桜」
「要求が多すぎるからダメ」
「え~、いいじゃん」
なんて千夏が絡んでいて、いつものように鬱陶しそうにしつつ。それでもすぐに引きはがすことなかった。そんな彼女と千夏の様子を見ていた雫もまた彼女にえいっと抱き着く。
それに夢咲さん自身が驚いたように見つめて、雫が
「……ごめんなさい」
と言って離れると、どこか言いずらそうに視線を彷徨わせながら。
「時々なら、いいよ」
「えっ!本当!!」
「違う!中野さんの方」
「え~、いいじゃん」
「ダメ」
なんて抱き着いている彼女を鬱陶し気に少し押す。そんな光景をどこか微笑まし気に俺は見つめるのだった。
***
その日の夜。早速千夏がグループを作って、そこで夢咲さんに質問をし出す。
『そういえば桜の誕生日っていつなの?』
『その呼び方定着するのはやめて』
『誕生日は4月8日だけど』
『えーー、もう過ぎてんじゃん!お祝いしないと』
『いらない。そういうあなたはどうなの?』
『私は7月18日だよ!!私らしく夏って明るいイメージでしょ?』
『そうね。少し暑苦しさもあるし』
『ひどい!』
『それで、連と雫はいつなの?』
『俺は4月2日だな』
『私は10月8日です』
『……えっ、連も4月なの聞いてないんだけど!!』
『いや、過ぎているから言いずらいじゃん。こういうの』
『お祝いしようよ。この4人で』
『嫌』『なら、千夏の誕生日にまとめてって感じでいいんじゃない?』
『連の方を採用!!』
『おめでとうくらいなら言う』
どこか素っ気なくも、きちんと返してくれる彼女のやり取りを俺は見つめる。机に置いたスマホから眺め、ふっと笑みを零しながら、俺はやるべきことに戻るのだった。




