疑問
【23】
ネグロヴィオーラの魔法から逃れた俺たちは近くにあるという村に向かっていた。
「線路が寸断されてしまった以上、列車で首都に向かうことは難しそうですね」
セフィアが今の状況を冷静に分析する。
先ほどの魔法で列車はもちろん、大部分の大地の表面が無残に吹き飛ばされていた。それは地表に敷かれていた鉄道レールも例外ではない。新しい列車が来たところでここを列車が通過するのはまず不可能だ。
「やはり復旧には時間がかかるのか?」
「それもありますが、今までは敵国が列車を狙ってくることはありませんでした。けれど今回で列車も狙われることがわかっりました。たとえ線路が復旧したとしてもそう簡単に列車を走らせることはできないでしょう」
言われてみればそうだ。今まで列車が普通に走っていたのは被害がないということ以上に列車が狙われたことがないという既成事実があったからだろう。その前提が覆された今、そう簡単に列車を走らせることはできないはずだ。
「‥‥‥つまり首都へ列車で行くのは諦めたほうがいいってことだな」
「はい‥‥‥」
しかし列車が走らなくなるということはこの国は大きな輸送手段を一つ失うということだ。いよいよこの国の終わりが見えてきてしまう。
──急がなければ‥‥‥
それにしても列車が使えなくなってしまった今、どうやって首都まで行ったらいいのやら‥‥‥
「それにしたって偶然魔法に狙われた列車に乗り合わせちまうなんて、ついてないな」
セフィアが口に手を当て、何かを考え始めた。
「どうした?」
「いくつか腑に落ちない点がありまして‥‥‥」
「というと?」
「まず一つ。なぜ首都へと向かう列車を狙ったのか、ということです。敵の魔法が殺戮を予定したものならば客の少ない首都行きの列車を狙うより、首都から大量の避難民を乗せてくる列車を狙ったほうがいいはずなのに‥‥‥
この列車は旅客列車で別に大量の武器を輸送しているわけでもない。敵国にとってこの列車を狙うメリットがあまり感じられないんです」
「言われてみれば‥‥‥本来の目的は線路の破壊で別に列車が目的ではなかったとか?」
「かもしれません。ですがもう一つ、使われた魔法の威力が大きすぎます」
「どういうことだ?」
「ここはまだ首都からは数百キロも離れた地域です。今まで見てきた通りこの辺りの地域では家一軒を破壊する程度の遠距離魔法が何発か飛んできている程度でした。あれは敵国にとっていわば威嚇みたいなものです。
そんな威嚇しかされなかった地域にいきなり強大な敵意を持った大量殺戮魔法が飛んできたんです。おかしいと思いませんか?」
「たしかに‥‥‥」
──魔法の規模からいって、街に落とせば想像もできないくらいの被害を与えられるだろう。かといって列車一編成を吹き飛ばすだけならもっと小規模な魔法でもその役目を十分に果たすはずだ。
ここは荒野のど真ん中で魔法は明らかにこの列車を狙って放たれたものだった。
何かどうしてもこの列車を潰しておきたい理由があったのか。それとも‥‥‥
「今後の行動はかなり気をつけたほうがいいでしょう。あれだけの魔法が飛んできたからには敵国が被害状況を観察している可能性があります。もしかしたら私たちの存在にも気づいているかも‥‥‥」
──俺たちの存在が敵にバレたとしたら、厄介だな‥‥‥
まず俺が成し遂げたいこととしては、この国の王、アヤナとの接触だ。できれば敵国との関わりはできるだけ避けたかった。
もし今回の一件で敵国に目をつけられてしまったら、今後の展開がかなり変わってきてしまう。
──とりあえず今後関わる者には細心の注意を払わなければ──
「次に行く村は大丈夫なのか? もしかしたらもう敵国に制圧されているなんてことはないか?」
そう問いかけてきたのは俺たちについてきた生き残り兵士だった。敵国に目をつけられているかもしれないという恐怖心から疑り深くなってしまっているようだ。
たしかに気持ちはわかる。この状況で平常心でいろと言うほうが無理な話だ。
「セフィア。どうなんだ?」
「これから行く村は‥‥‥まぁ大丈夫だと思いますよ」
そう言い切ったセフィアの表情からは不安というものは感じられなかった。
その表情に俺は少し疑問を覚える。
「見えてきました。あの村です」
セフィアが指差した先には十軒ほどの家が立ち並ぶ小さな集落のようなものが現れた。
「あそこはまだ敵国からの被害はないようだな」
「まぁ、あそこは特別な場所ですから。爽真さんはびっくりするかもしれません」
「びっくり?」
セフィアの意味深な発言に俺は首をかしげた。
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